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なぜ木造一戸建てに住むのか?

水害や土砂災害のニュースを見るたびに、ずっと疑問に思っていたことがあります。

木造の一戸建てって、危険ではないでしょうか。

被災地の映像を見ると、山の斜面に近いところや川の付近など、素人目にもあきらかにリスクの高い場所にまで住宅地が広がっていて、しかも密集しているにもかかわらず、その多くが一戸建てで、中には平屋まであります。こうした民家は押し寄せてくる水や土砂にあっけなく流されていますが、鉄筋コンクリートのビルはとりあえず持ちこたえています。

一戸建ては集合住宅に比べて面積当たりに住める人数が少なく効率の悪い土地の使い方しかできないので、結果的に土地が足りなくなり、本来人が住むには適さない場所まで宅地開発されることになりかねません。災害で自宅が全壊したらもう一軒買えばいいや、という大金持ちならともかく、持ち家に住めなくなるとただちに生活に困るような経済力の人までローンを組んで家を買わせる住宅政策は正しいのでしょうか。

庭付きの一戸建てでのびのび子育てしたい、という事情もあるでしょうが、むしろ一軒家は賃貸にして、子育て世帯が優先的に入居できるようにしたほうが合理的です。持ち家だと最終的に4LDKの家におばあちゃんが一人で住む、といったことになってしまうからです。

にもかかわらず多くの人が一戸建てを買うのは、単に一戸建てが好きな人が多いのかもしれませんが、そうせざるを得なくする現状があることも事実です。
ひとつはそもそも安全で快適な集合住宅の供給が充分でないこと、もうひとつは高齢になると賃貸住宅を借りるのが難しくなるのではないか、という不安があることです。

一方で高層のタワーマンションも危険です。地上何十階もの部屋に住んでいて、もし災害でエレベーターを含むインフラが止まったら大変なことになるのは誰でも考えつくことです。にもかかわらずこうしたものを買うのは、単なる憧れだけではなく、これも「利用可能な土地に対して住みたい人が多すぎる」という要因も無視できません。

と、思っていたら、こういった疑問も含めて住宅建築の専門家が論じてくれている本を見つけたのでご紹介します。

おもに「外部不経済」という観点から、日本の住宅政策や都市計画の問題点についてQ&A形式で書かれています。タイムリーにオリンピックの話題もあります。いままで漠然と感じていたことを、データで裏打ちしてもらったかたちです。

3階建てくらいで鉄筋コンクリートの公営賃貸集合住宅が充実していて、高齢になっても入居できることが保証されている。
日本がそういう社会だったら、助かる命も多いのではないかと思うのです。

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