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創作の詩をまとめています。
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記事一覧

呼吸

呼吸

どうしようもなく孤独なのだ!
孤独が確かに魂にへばりついている
わたしは
それを切り離そうと魂をつまむ
赤く熟れすぎた魂は脆い
ハサミで切り離したそれから
どろり、
溢れだす
へばりついていた孤独は
転移していて
魂のなかにまで入り込んでいる
赤い魂は酸素に触れ、黒に変化してゆく

どうしようもなく孤独なのだ!
救いようのないそれを
満たされないとわかっていながら待つ時間を
黒い魂を抱きしめながら

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ほんとうに?

ほんとうに?

ねえ、
あたしがわるかったのかな
あたしがわるかったのかな
お天気だったあおぞらが雨に切り替わったのも
あまくてふわふわのカステラがしぼんでしまったのも
あたしがわるかったのかな

あたしがわるかったからないているの?
あたしがわるかったから睨んでいるの?
あたしがわるいの?
あたしがわるくて、わるかったから、
だからなにも話さないの?
あたしがわるかったの?
あたしがわるかったのかな
本当に?

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選択

選択

青にひかる信号機はすぐに赤へとかわる
渡りきれなかった僕と渡り終わった誰か
さめざめと降る雨粒は
ひとつとして僕を写しはしない
冷えた手は
信号のようにぼんやりと赤を灯し
するりと雨粒が手首をつたった

カバンに入れるか迷う折りたたみ傘は
頼りなくて
そうして
雨が降ると
いつも
いつも
折りたたみ傘をおもう

ねえ、カバンに入れられなかった
折りたたみ傘と忘れられたビニール傘
どっちがかなしいの

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寝床

寝床

空が白むと
少し寒くて
身をよじる
「もうすこしそっちに行ってよ」
「落っこちちゃうからいやだ」
無理やりに
布団を引っ張る

昨日の夜は
お月さまのしたで
妖精たちが
ワルツをおどってたのに

手をからませて
暖を取る
まだ夜だよ
きみがそういうなら
もう朝だ

詩会クレプスカ発刊『クレプスカ第7号』掲載

かの人

かの人







富士の山に雪がつもり
驚いたあなたは
なみだをながしたそうですね

いとしい人が
鬼にさらわれ
逃げゆく道中で
何を思いましたか

かきつばた
むらさきの花弁に
願いをこめて
夢であなたと
逢わないように







現を
生きる
ことの難しさ

詩会クレプスカ発行『クレプスカ第7号』掲載

https://krepuska.booth.pm/items/3449

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ゲーサイヌ

ゲーサイヌ

今から江古田へむかいます
ほんとうは新江古田です
ごめんなさい
近くのバス停で
まっていてください
黄色い長い
鼻を垂らして
封印されたのは
いつ頃だったでしょうか
たくさんの
お別れもあったでしょうに
封印されたところは
どんなところでしたか
くらくて
さみしい
ところでしたか
だからいま
あなたはファンを
募っているの?
きいろいお耳が見えました
こんにちは
なかなか会えないですけれど

火葬

火葬

完全燃焼のいろは
青色らしい
死にゆくとき
燃やされる炎は
まだ赤い
だからまだ
行かない
いけない
肉が焼けて
骨が灰になる
燃えゆく炎の
熱気におされて
まだやわらかい魂は
宙へかえる
灰を海へまく
海は青色
青いままで
かえってゆく

詩会クレプスカ発刊『クレプスカ第7号』掲載

こども

こども

自我ってさ
他人によって
つくられるんだよ
そう言って
きみはおとなになった
こどもの自我は
おとなによって
つくられて
それじゃあだいたいのものって
罪だよねなんて
わらって
こどもにもどる
きみと僕はそれを繰り返して
いつか
戻れなくなるんだね
いまは
まだ
しらないふりを
していたいね
白い歯をみせて笑う

深夜3時

深夜3時

深夜3時は静寂
深夜2時は寝息
深夜1時はひそひそ声
みんなが
静かになるじかん
深夜3時のキャラメルは
あまえたくなる味がする
深夜3時はあたらしい雪
だれの足あともついていない
深夜3時にだきしめられて
きょうも静かに目をとじる
深夜3時はきみのもの
深夜3時はぼくのもの
いいえ、誰のものでもない
妖精がまどべで
タップダンスする
きらきら、きらきら
深夜3時の静寂
深夜2時の寝息
深夜1時の

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縁

ぶつり
歩くたびに
切れる
ちぎれる
ぶつり
切れるたびに
軽くなって
痛みが増す
みんな、わたしを置いて
遠くへ、とおくへいってしまう
わたしだけを置いて
上手、上手
切るのが上手
痛い、いたい、痛い、いたい
さみしい、くるしい、つめたい
伸ばされた腕がほどける
光はこめつぶのように小さく
きえる
どうか、どうか
きみだけは

メンソール

メンソール

あの夏の日は私のものでした
うるさい蝉の声もやけに他人行儀な赤々と燃える夕焼けも
校舎裏でたださめざめと泣く私のその横で
ただ、メンソールの煙草を咥えているその姿も、ただ私のものでした
鬱陶しいほどに煙たい空気を
副流煙など気にせずに私はあなたから出た空気を吸っていたいとおもったものでした
私の背中をさするその手が暖かくて
メンソールの煙草の匂いが染み付いていて
私の眼から出る冷たい水などもう忘れ

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たとえば

たとえば

たとえばもし
肉体を捨てて
ただ
やわらかい
ひかりになったのだとしたら
わたしは
わたしを
許せるのでしょうか

おとこだとか
おんなだとか
そういったものを
意識して
肉体と別れられなくなったとき
わたしはもう
とっくに終わっていて
許せないままで

だんだんと
だんだんと

手の指の皮がふやけて
先のほうがしろくなってゆくのを
わたしは
とてもよく知っています

詩会クレプスカ発刊『クレプス

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