シェア
河津ゆき
2022年6月20日 17:34
どうしようもなく孤独なのだ!孤独が確かに魂にへばりついているわたしはそれを切り離そうと魂をつまむ赤く熟れすぎた魂は脆いハサミで切り離したそれからどろり、溢れだすへばりついていた孤独は転移していて魂のなかにまで入り込んでいる赤い魂は酸素に触れ、黒に変化してゆくどうしようもなく孤独なのだ!救いようのないそれを満たされないとわかっていながら待つ時間を黒い魂を抱きしめながら
2022年3月20日 00:17
ねえ、あたしがわるかったのかなあたしがわるかったのかなお天気だったあおぞらが雨に切り替わったのもあまくてふわふわのカステラがしぼんでしまったのもあたしがわるかったのかなあたしがわるかったからないているの?あたしがわるかったから睨んでいるの?あたしがわるいの?あたしがわるくて、わるかったから、だからなにも話さないの?あたしがわるかったの?あたしがわるかったのかな本当に?
2022年3月20日 00:13
青にひかる信号機はすぐに赤へとかわる渡りきれなかった僕と渡り終わった誰かさめざめと降る雨粒はひとつとして僕を写しはしない冷えた手は信号のようにぼんやりと赤を灯しするりと雨粒が手首をつたったカバンに入れるか迷う折りたたみ傘は頼りなくてそうして雨が降るといつもいつも折りたたみ傘をおもうねえ、カバンに入れられなかった折りたたみ傘と忘れられたビニール傘どっちがかなしいの
2022年3月20日 00:09
空が白むと少し寒くて身をよじる「もうすこしそっちに行ってよ」「落っこちちゃうからいやだ」無理やりに布団を引っ張る昨日の夜はお月さまのしたで妖精たちがワルツをおどってたのに手をからませて暖を取るまだ夜だよきみがそういうならもう朝だ詩会クレプスカ発刊『クレプスカ第7号』掲載
2022年3月19日 23:53
かきつばた富士の山に雪がつもり驚いたあなたはなみだをながしたそうですねいとしい人が鬼にさらわれ逃げゆく道中で何を思いましたかかきつばたむらさきの花弁に願いをこめて夢であなたと逢わないようにかきつばた現を生きることの難しさ詩会クレプスカ発行『クレプスカ第7号』掲載https://krepuska.booth.pm/items/3449
2022年3月19日 23:47
今から江古田へむかいますほんとうは新江古田ですごめんなさい近くのバス停でまっていてください黄色い長い鼻を垂らして封印されたのはいつ頃だったでしょうかたくさんのお別れもあったでしょうに封印されたところはどんなところでしたかくらくてさみしいところでしたかだからいまあなたはファンを募っているの?きいろいお耳が見えましたこんにちはなかなか会えないですけれど
2022年3月19日 23:43
完全燃焼のいろは青色らしい死にゆくとき燃やされる炎はまだ赤いだからまだ行かないいけない肉が焼けて骨が灰になる燃えゆく炎の熱気におされてまだやわらかい魂は宙へかえる灰を海へまく海は青色青いままでかえってゆく詩会クレプスカ発刊『クレプスカ第7号』掲載
2022年3月19日 23:08
自我ってさ他人によってつくられるんだよそう言ってきみはおとなになったこどもの自我はおとなによってつくられてそれじゃあだいたいのものって罪だよねなんてわらってこどもにもどるきみと僕はそれを繰り返していつか戻れなくなるんだねいまはまだしらないふりをしていたいね白い歯をみせて笑う
2022年3月19日 23:07
深夜3時は静寂深夜2時は寝息深夜1時はひそひそ声みんなが静かになるじかん深夜3時のキャラメルはあまえたくなる味がする深夜3時はあたらしい雪だれの足あともついていない深夜3時にだきしめられてきょうも静かに目をとじる深夜3時はきみのもの深夜3時はぼくのものいいえ、誰のものでもない妖精がまどべでタップダンスするきらきら、きらきら深夜3時の静寂深夜2時の寝息深夜1時の
2022年3月19日 22:58
ぶつり歩くたびに切れるちぎれるぶつり切れるたびに軽くなって痛みが増すみんな、わたしを置いて遠くへ、とおくへいってしまうわたしだけを置いて上手、上手切るのが上手痛い、いたい、痛い、いたいさみしい、くるしい、つめたい伸ばされた腕がほどける光はこめつぶのように小さくきえるどうか、どうかきみだけは
2022年3月19日 22:56
あの夏の日は私のものでしたうるさい蝉の声もやけに他人行儀な赤々と燃える夕焼けも校舎裏でたださめざめと泣く私のその横でただ、メンソールの煙草を咥えているその姿も、ただ私のものでした鬱陶しいほどに煙たい空気を副流煙など気にせずに私はあなたから出た空気を吸っていたいとおもったものでした私の背中をさするその手が暖かくてメンソールの煙草の匂いが染み付いていて私の眼から出る冷たい水などもう忘れ
2022年3月19日 22:54
たとえばもし肉体を捨ててただやわらかいひかりになったのだとしたらわたしはわたしを許せるのでしょうかおとこだとかおんなだとかそういったものを意識して肉体と別れられなくなったときわたしはもうとっくに終わっていて許せないままでだんだんとだんだんと手の指の皮がふやけて先のほうがしろくなってゆくのをわたしはとてもよく知っています詩会クレプスカ発刊『クレプス