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10の短詩、 画像付き5つの短詩、そのほか
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記事一覧

秋と本

秋と本

秋と本はどこか似ている
それぞれの
色合い模様を見せて
はらりはらり散る枯葉は
秋の絵本をめくるよう

そっと見つめていたら
光りながら織りあがる
空中のテーブルクロス
蜘蛛の巣
秋風になびく

とうもろこしを
ハモニカのように食べる子ら
かじられて
一粒ずつが
音符に変わる

行く先は?
あなたの主は?
わたしの心配をよそに
軽快なステップをふむ
車内の空カン

清流を行く
魚の
軌跡のような

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金色に・ヘルパーの詩

金色に・ヘルパーの詩

金色に光る指輪の手
手すりを掴むたび
ふるえて
カタカタと鳴る
Tさんの手に私の手を重ねる

ヘルパー?知りませんよ
勝手に家に入り込んで
訴えますよ!
元教師Mさんに叱られるたび
こわい でもなつかしい

きつく閉じた瞼の裏に
満開の花を
見て欲しい
Nさんのおむつ替えのときは
いつも花の話題

もう立つことのない
Aさんの足を
そっとさする
優しい動物を
寝かしつけるように

♪伊豆の山々月淡

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緑色の部屋・秋の短詩

緑色の部屋・秋の短詩

駅までの道
夕焼けが美しかったと話がはずむ
引っ越して出来た友は
九階に住む
笑顔の柔らかな人

マスカット
透かせて見れば
それぞれに種ふたつ
明るい緑色の部屋
住み心地良さそうね

傾いた秋の陽を受けて
街行く人の影は
細く長い鉛筆
舗道にスイと
斜線をスケッチ

ゆらゆら揺れる
花かんざしから
恥じらいが
こぼれるような


茹で卵が鍋の中で揺れる
秘密を語り合うように
コトリコトコト

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秋かな(写真と短詩)

秋かな(写真と短詩)

友達が秋の写真を送ってくれました
わたしの詩も添えて・・・秋の気分をどうぞ!

横浜駅の上はニュウマンというビルになりました
その屋上に咲いた彼岸花、ああ都会の秋!

鶴見川周辺の黄コスモス、もう満開ですね

ご覧下さりありがとうございます(*^^*)   おわり

レモンから【短詩】

レモンから【短詩】

レモンから
滴るしずく
ソーダ水のグラスに落ちて
踊るように
溶けて広がる

君の指で絞られた
果汁を抱いた
レモンサワー
コクリと飲めば
心も身体もほんのりと酔う

見あげれば
櫛切りにした
レモンのような月
雲を染めて
ぽっかりと浮かぶ

           
            おわり

小牧さんの企画に参加させてください。
小牧さんお手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。

風鈴と・短詩五首

風鈴と・短詩五首

風鈴と蝉の合唱
うらやんで
歌いたいのか
蚊やりの豚の
大きな口

買ったばかりの羽なし扇風機
ドーナツをグイ~ンと引き伸ばしたような
わっかだけ
ムンクの口にも見えてきて
見つめていたら眠れない

入道雲は
巨大白熊の
手のひら
はーい!と
夏のご挨拶

さて
冷やしうどんでも
作ろうかと
父の幻が
立ち上がる夏の昼

ソーダ水の
コップ
揺らせば
カランカランと
氷の風鈴

        

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百人一首恋の巻【冬の部】

百人一首恋の巻【冬の部】

三羽烏さんが冬の恋の短歌募集中です。
皆さんも一首詠んで参加してみませんか。詳しくは👇

裏切りごと背中から君を抱きしめる
          窓から覗く白い寒月

恋の終わりは切ないもの、もう離れてしまった君の心は分かっているのに
それでも、背中からギュッと抱きしめれば温もりが伝わって来る。今夜のこと、思い出すたびに泣くだろうな。でも、時がたてば、懐かしさにすり替わるかもしれない・・・・背中ご

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白ワンピの女の子

白ワンピの女の子

白ワンピの女の子
とことこ走って振り返る
白ワンピの裾ふわり
嬉しくて
フフフ 笑顔が揺れる

白ワンピの女の子
赤いランドセル
背負って走る
白ワンピの裾ふわり
楽しくて
タタタ ステップしてる

白ワンピの女の子
大好きな人の名前
幸せの呪文のように
書いたり呟いたり
白ワンピの裾ふわり
ワクワク
はずんでる

白ワンピの女の子
去って行った人
追いかけたけれど
届かない
白ワンピの裾ふわり

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風の電話ボックス

あの
海を臨む
小高い丘の
風の電話ボックス
今も想い届けているだろうか

ちょっと待って
いま
感動している
動いたら
こぼれそう

本のページを
めくるように
日ざしが
カーテンに乗って
私の膝にとまる

ときどき
記憶は
嘘をつく
騙されたままのほうが
いいこともあるけれど

何もしない
私たちが
失うものは何か
手か足か
平和か

-----------------

引っ越しが決まり忙殺

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春にそわそわ

春にそわそわ

目を凝らすと
緑の点々つけた
やなぎの枝
いつの間にか
ひらいた春の扉

空に吸われたように
雪にとけたように
蝋梅の黄色は
清しく透明に
咲き匂っている

匍匐前進
前方警戒
春の蛙は
眩しさに
おそるおそる

夕空に
置き雲
みっつほど
金魚を放した
子はだあれ

大切なものを
手の中に包むように
ふくらんでいく
白木蓮の
つかの間の春

差し込む
一条の光受けて
谷間のねこやなぎは
銀の鈴

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春よ来い

春よ来い

からんと晴れた冬空
小石を投げたら
凛と鳴りそう

北風の櫛にすかれ
土手の草は
南へなびく
ひゅーという笛に
踊らされているように

小枝の先で
かすかにふくらみ始めた
木々の芽
むずがゆいのか
もじもじ

お日様に向かって
手を伸ばし
早く早くと
春の衣を
せがんでいる

陽が当たると
ふくらんで見える
枯野は
もう春を
つかんでいるのか

もうじき
小さな空のかけらが
舞い落ちたような
イヌ

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冬の色 #シロクマ文芸部

冬の色 #シロクマ文芸部

冬の色した
夕暮れの落ち葉
カラカラと
音と色を
走らせ舞いあがる

落日を
背に
木々はみな黒
同じ生を
生きたはずはないのに

通りの
電柱は
寒そう
何も着ていないし
雀もいない

街では
老舗が消えてゆく
そんな哀しみごと
寝かしつけるような
優しい闇がくる

遠くに見え始めた
星たちは
私を育ててくれた
人たちの
まなざし

かすかに残る
明るさの
しっぽを
たぐったら
会いに行けるでし

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詩と暮らす #シロクマ文芸部

詩と暮らす #シロクマ文芸部

詩と暮らす日々は、心の中にちいさな星を抱いている日々だ。普段は目立たない星が、なにかを感じてキラリと光る瞬間、詩が生まれる。

詩の会に入ってもう二十年になる。それぞれが詩を持ち寄って感想を話し合う会なのだが、詩には心模様を詠んだものも多く、心を開いて話すためたちまち親しくなる。新鮮な感覚に刺激され心が洗われるような感動をしたり、胸が痛くなるほどの共感に涙ぐむことも一度や二度ではない。

この会で

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水の歌

水の歌

止むことのない
滝の
水音を
吸いつくして
岩は閑か

小島と小島の
間の波は
寄せ合って
やわらかな
模様になる

荒波だったかも
渦巻いていたかも

やわらかく
入り江に寄せる

荒ぶる滝と
岩をなぞる
やさしい流れ
水は分かれて
迷いをみせない

意志ある
水であったら
浮かべたいもの
流したいもの
沈めたいものがある

小さな泡と砂粒を
揺らして
水が湧き出る
豊かなことは
静かに起こる

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