緑色の部屋・秋の短詩
駅までの道
夕焼けが美しかったと話がはずむ
引っ越して出来た友は
九階に住む
笑顔の柔らかな人
マスカット
透かせて見れば
それぞれに種ふたつ
明るい緑色の部屋
住み心地良さそうね
傾いた秋の陽を受けて
街行く人の影は
細く長い鉛筆
舗道にスイと
斜線をスケッチ
ゆらゆら揺れる
花かんざしから
恥じらいが
こぼれるような
萩
茹で卵が鍋の中で揺れる
秘密を語り合うように
コトリコトコト
秋の夜
台所のものたちがじっと聞き耳たてている
影を受けとめ
闇に堪え
輝きを増しながら満ちてゆく
月のようになれたら
私の心
おわり
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