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2024年12月に読んだ本まとめ(part2)【読書感想文】


 前回に引き続き、2024年12月に読んだ本をご紹介致します。


↓いつもの

 ※あらかじめ断っておくと、これから述べる感想には容赦ないネタバレを含むどころか、あらすじや内容を説明するのが面倒臭いという筆者の怠慢によりこれを読んでいる貴方がその本を通読しているという前提で話が進む可能性もあるので、これからその本を読みたいと思っている方々は速やかにブラウザバックしてください。まあ最低限説明しなきゃいけない部分は極力するようにしますが。



12月の読書記録(ログ)(part2)

岸本 佐知子/著『ひみつのしつもん』(ちくま文庫)

 私はこの方が書かれる文章が面白いとされる世界線にしか存在したくありません。ナチュラルボーンユーモア。斜め上からの角度をつけた視点で日常を面白おかしく綴ることが出来るというのは、紛れもなくエッセイの巧者であることの証です。
 何も考えたくない、ぼーっとしたい時でもストレスなく読めるのがありがたい。



石田 夏穂/著『我が友、スミス』(集英社文庫)

 個人的『2024年読んだ中で一番シビれた小説大賞』受賞作品。刊行されたのは去年より前だが。

 筋トレをテーマにした作品なので、日頃気まぐれに身体を鍛えたり鍛えなかったりしている身としてはめちゃくちゃ面白かったですね。

 女性が筋トレをすること、そしてそれを取り巻く環境に対しての洞察や、ジェンダー的な問題なども鋭い観察眼を通して描写されており、逐一挟まれるギャグっぽい表現も小粋なユーモアセンスが光っていて面白い。

 作中で描かれる筋トレの大会に挑むという行為はチャレンジングなものとして捉えられるけれど、この小説自体もそれと同じくチャレンジングな作風でとても好印象ですね。なんだかクールでアツい小説だった。オヌヌメです。



伊坂 幸太郎/著『777 トリプルセブン』(KADOKAWA)

 『AX』を読んでから結構時間が経ってしまった。相変わらず殺し屋シリーズらしい"THE エンタメ小説"。

 今回も話が良く出来てるなぁ~と感心してしまった。乾と蓬に対する第一印象が読み進めていくうちにどんどん反転していって、対照的な存在として描かれていたんだなってところとか、ソーダとコーラの伏線とか、やっぱり構造を細部まで掘っていくと緻密に練られているのだなということがわかる。

 あと毎回悪役の描写が上手いというか、登場人物における善悪の対比が絶妙だからこそ七尾に肩入れしてしまう。 

 個人的に印象に残ったシーンは紙野結花が七尾のことを有能だと評するところですね。以前ネットか何かで見たんですが、とある研究によればポジティブよりネガティブ寄りな思考をしがちな人の方が最悪な事態を予想することに長けているからか生存確率が高いらしい。

 だからこのシーンはネガティブだからこそ万全な予防策を張ることが出来るっていうのを凄い説得力で描いてくれていてなんか嬉しかった。


  また原作とは別モノ映画として、ブラッド・ピットが暴れまくるアクションムービーを観てみたい気持ちもありますね。



戸部田 誠/著『タモリ学』(文庫ぎんが堂)

 新年が明けても全くやる気なんかない。何もかもが面倒臭い。友達がいない。恋慕の情を抱く者もいない。家族仲が悪い。奥歯が痛み始めている。年末ジャンボ宝くじの当選を確認しようとするが、そもそも購入すらしていなかった。

 そんな感じで生きている意味ってあるのだろうかと自問自答する毎日。

 でもある日ふと気付いた。彼は言った、「やる気のある奴は去れ」と。

 そう、この生きづらさを解消するために必要なのはHSPのための指南書でもマインドフルネスでもなく、タモリの哲学を脳にインストールすることだったのだ。なんという天啓。

 そしてこの『タモリ学』は別に生きづらさを解消する必要はないんだということをその生き様を以て教えてくれる。

 タモリの過去や未来に囚われず、現在を究極に楽しもうとする姿勢、すなわちこのジャズ的な生き方はpart1で挙げたセネカの考え方に通じるものがある。

 タモリはある番組で、「恋愛しなきゃいけないっていうのもおかしいよね。しなくたっていい。恋愛に夢をかけすぎ」と語った。
 また同番組では、漢字の「幸」の起源についても触れている。かつて手に枷をはめる刑罰があり、それが転じて「幸」という字になった。なぜそれが「幸せ」なのかといえば、本当は死刑になるところを、命を落とさずにすんだからだという。

 「だから『幸せ』というのは前の上を見るんじゃなくて、後ろの下を見ること。望むものじゃなくて感じるもの」

 つまり「幸せ」とは、今ここにない「理想」の状態を追い求めることではなく、今ここにある現状に満足することであると言うのだ。

『タモリ学』(タモリにとって「希望」とは何か)p253より引用



金原 ひとみ/著『蛇にピアス』(集英社文庫)(※再読)

 筆者は2024年に熱狂的な金原ひとみ信者になりましたんで、この年の最後はこの本を再読して終えようと思ってね。

 『蛇にピアス』を初めて読んだのはたしか中学生ぐらいの時で、その時は図書館で単行本を借りて読んだんだけど、アンダーグラウンド感溢れる雰囲気と過激な描写に圧倒されて内容を上手く自分の中に落とし込めなかった。まあそりゃそうだ、13~14歳ぐらいの少年がこの本の内容を完全に理解出来るのだとしたらソイツが20歳で書いた小説はきっと芥川賞を受賞することだろう。

 といっても、28歳の私が読んだからといってやはりこの小説の内容を理解出来たわけではない。というか多分この『蛇にピアス』という小説側も理解されることを求めていないのだろう。この小説に限らず、金原ひとみ氏の作品にあるひとつのメッセージ性を見出すのは難しい。そこにはただ鮮烈な「生」があるだけだ。我々はその「生」に触れて何らかの情念を感じ取るしかないのだ。

 最後の方に主人公のルイが、アマを犯したかもしれないシバに対して真っ向から反抗的な態度を取らなかったのはきっとシバに殺されることがルイにとっての身体改造の完成だったからだろう。神から授かった肉体を改造することは冒涜のように思えるが、だからこそ性を通して身体の関係を持ったシバ自身によって殺されるまでがルイにとっての本当の身体改造だったのではないか。私がそう思うのは、「性」という字がりっしんべんに生きる、つまり心と生きるという文字から成っているからである。
 そして読者諸賢がこの感想をよく理解出来ていなくても構わない、何故なら書いている私にもよくわかっていないから(急に開き直るなよ)。




 はい、ということで2024年12月に読んだ本を2partに分けてお送りしたわけですが如何だったでしょうか。

 面白い本をよく読めているという現状にはそれなりに満足しつつも、ちょっと実生活の方があまりにも満足からかけ離れている状態なので、2025年からは読む冊数が減っていくかもしれません。
 とりあえず喫緊の課題として、ひとり暮らしに関するガイド本を読むところから始めていきたいと思います。その辺の話はまた追々。


おわり

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