②今世ではもう、誰も傷つけたくない。
前回の続きです。
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ジャックが希望した兵の募集は勉学を伴うもので、10歳からの招集であった。
(勉学を伴わない募集もある。)
定期的に試験もあり、同期80人程が3グループに分けられ学んでいった。
(感覚的に、1グループには家柄の良い者が集められている印象。)
それから…4年後。
ジャックは毎日を忙しく過ごしていた。
勉学もそこそこながら、訓練が厳しく、あっという間に日々が過ぎていった。
規律は厳しかったものの、仲間意識は非常に強かった。
同期の結束だけでなく、
上級の者が下の者の面倒を見た。
入隊当時は幼さもありホームシックになる子も多かった。
それを知っている上級者達は下の子達を気にかけ、寂しくないように寒くて広い広間で皆で寝たり、食事の時は一人になる者がいないように皆声をかけ合ったりしていた。
自分の生活の仕方すら分からない者が多いので、一つ一つ上級者が関わって教えてくれていた。
きっと気持ちが分かるからだろう。誰もが優しく教えてくれた。
しかし、訓練での甘えは一切無く正直辛すぎた。
キツイ。
入隊当時は80人ほどいた仲間も半分程になった。
日々の生活の中でも家柄や階級などを振りかざし横柄な態度をしていまう者、
意見の食い違いなどでのトラブルも少なくなった。
そんな時は上級者やチームリーダーが仲介に入り、気の済むまでとことんやり合った。
徹底的にやり合うので、後腐れは無かったように思う。
陰湿ないじめも無かった。
年一回、運動会のような行事もあった。
チーム戦である。
色々な種目があった。賞金もあった。
中でも最終日に執り行う、総当たり戦というドームくらいの広場での乱闘。
最後まで立っていた者が優勝になる。
それには、上級者だけでなく一般兵も観覧に入り大いに盛り上がった。
訓練では痣だらけになり、鼻血を出したり気を失うのも日常茶飯事。
壁際に引きずられ、転がされている回数が多いと家族に連絡がいく罰則はあった。
恥ずかしい。
それは不名誉なので避けるのに必死だった。
勉学では宿題などはなく(というより、夜には復習や宿題をしている体力は1ミリも無い。)、限られた時間の中で学んでいくものだった。
厳しい中でも、皆仲が良かった。
戦争が起きていた背景もあり、
厳しい訓練は死なない為。
勉学を学ぶのは自分達を守る為。
その中で徴兵では無いので挫折して去っていく者も多かった。
ジャックは恵まれた事に気の合う友達もでき、家に帰るチャンスがあっても帰る選択をせずに過ごしていた。
家族とはこまめに手紙のやり取りをしていた。
17歳の年に、役割を貰った。
王子付き(王子の側近)に遣える役目。
王子付きの人を支える雑用である。
王子付きは5人いて、その5人の下で雑務をこなす役目に引き上げられた。
元々王子付きの下には10人程いたが、ジャックと合わせて5人追加された。(合計15人)
ジャックは一番若く、家の後ろ盾がある訳でもなかった。異例であったが断る事も出来ない話だった。
ジャックの引き上げを羨む者も少なくなかった。
しかし、徐々にやつれていくジャックを見て、誰もがジャックを励ます側になっていった。
王子付きの雑務は主に書類整理。
日々の民の暮らしの把握、農作物の把握、城内に関する交易などをまとめる仕事であった。
雑務と共に、受けるはずであった普段の勉学や訓練。
正直仕事量がおかしい。
忙しすぎた。
しばらくそんな日々が続く…。