「天才か反逆者か」バンクシー展に行ってみた。
こんにちは、フォレスト出版編集部の杉浦です。
先週、VOGUE JAPANのLINE@から、「再開したバンクシー展をリポート!」という記事が流れてきました。「再開? そもそもバンクシー展なんかやってたんだ」と思い、記事に目を通すと、冒頭に、「バンクシーは白人警官が黒人男性を拘束し命を奪った事件に対し、いつものように皮肉に満ちたコメントではなく、正論ともいえるダイレクトなメッセージを自身のインスタに投稿した」と書かれていました。
バンクシーは、世界各地の路上にゲリラ的に社会を風刺した作品を残す正体不明の覆面アーティストで、人を食ったような作風で知られています。「シュレッダー事件」はみなさんの記憶にもまだ鮮明なのではないでしょうか。オークションで自身の絵が落札された直後、絵の内部に密かに設置したシュレッダーを遠隔で起動させ、絵を自らズタズタにしたあのニュースです。その後、港区の防潮扉にバンクシーらしき作品が見つかったとか、千葉の九十九里の防波護岸にバンクシーが現れたといったニュースがちらほら聞かれました。
そうしたニュースが記憶に新しかったのと、バンクシーがジョージ・フロイド氏の事件について表明した「これは白人の問題だ。そしてもし白人たちがこの問題を解決しようとしないなら、誰かが上の階に出向いて、ドアを蹴破るほかない」(VOGUE JAPAN LINE@より)というコメントになんだか感じるものがあり、すぐさまチケットを予約しました。
ソーシャルディスタンスを意識してか、入場者数は時間ごとに制限され、一作品一作品をかなりじっくり鑑賞できました。感想をひと言で表すならなら、「面白い!!!」。語彙力の乏しさに恐縮です。でも、本当に美味しいものって「美味しい」としか言えないですし(私だけでしょうか)、面白いものは面白い。正直、私は美術館とかに行っても、足を止めてじっくり作品と向き合うというよりは、さーっと流し見タイプなのですが、バンクシーの作品は、鑑賞者を強制的に作品と向き合わせるというか、自分の頭で作品の意図を考えさせるんだな、と思いました。
展覧会は撮影OKだったので、気になる作品を撮りつつ、作品解説もじっくり読みます。(会場では音声解説が推奨されていて、アプリをダウンロードして解説を聴くことができますが、私はイヤホンを忘れたので、自力で読みました)解説文も飽きることなく読み進め、実際の作品を間近で観、関連する動画までくまなく堪能しました。テキスト・音声・動画と、コンテンツの充実ぶりもさることながら、作品点数の多いこと! ひととおり会場を巡れば、にわかバンクシーファンのできあがりです。
会場を出ると、展覧会お決まりのお土産コーナーが。普段はこういうところも素通りなのですが(もしくは一筆箋を切らしていたら買う、とか)、今回は図録とエコバックを迷いなく買ってしまっていました。いつもサブバックを持ち歩いてるのと、レジ袋有料化が目前でもあったので、ちょうどよかったです。
しかし、キャピタリズム(資本主義)に否定的なバンクシーなのに、お土産物屋さんでは思いっきりグッズを展開していて(TシャツとかiPhoneケースとか割とありがちなグッズ)、私のような展示を見て高揚したファンたちがグッズに人だかりになっており、すごく資本主義の縮図に見えました。それもバンクシー的皮肉なのかな……などと勘繰ったのですが、この展覧会自体が、バンクシー自身の許可を取っていない、ゲリラ的な催しなのだとか。なんだかいろいろバンクシーっぽい?
そして、ひとつ思ったのは、港区の防潮扉の作品も、千葉の九十九里の作品も、バンクシーのものではないんじゃないかな……ということ。バンクシー本人だったら、意味もなくネズミや少女の絵は描かないような……。もっとその土地の何かと関連させる気がします。(いきなり物申しだすのも、にわかファンの特徴でしょうか)
なお、「天才か反逆者か」という展覧会のタイトルにちなんで、鑑賞を終えた来場者たちに、「バンクシーは天才か?反逆者か?」というアンケートを取っており、その結果をホームページで公開しているのですが、今のところ、天才と答える声が多いようです。ただ、天才の対義語が反逆者なわけでもないし、反逆者って悪い意味ではないですよね? 私は、バンクシーは反逆者であり天才なんじゃないかなと思いました。にわかなのに、すっかりファンぽい答えです。
とはいえ、バンクシーにいろいろ共感するところがあったのはまぎれもない事実。同僚に、“パラサイト”と“うつせみ”と“息もできない”が好きで(どれも韓国社会の闇を感じる映画です)、バンクシーに共感する女性ってどうなんでしょうか?と聞いたところ、ひと言、「ヤバみ」と言われました。
(Photo by Eric Ward on Unsplash)
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