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【連載】#6 人生の可能性は、身近なご縁から始まる|唯一無二の「出張料理人」が説く「競わない生き方」

職業「店を持たない、出張料理人」、料理は出張先の素材を最大限に生かしたオンリーワンのレシピを考案して提供する――。本連載は、そんな唯一無二の出張料理人・小暮剛さんが、今までの人生で培ってきた経験や知恵から導き出した「競わない生き方」の思考法&実践法を提示。人生を歩むなかで、比べず、競わず、自由かつ創造的に生きていくためのヒントが得られる内容になっています。

※本連載は、毎週日曜日更新となります。
※当面の間、無料公開ですが、予告なしで有料記事になる場合がありますのでご了承ください。

私は、30数年間、一度も人を雇うこともなく、たった1人で出張料理の仕事をしてきました。1人仕事は、本当に何でも自分でやらなくてはなりません。1日は24時間、手は2本しかありません。仕事が集中すると、限界を超えて八方塞がりになり、どうにもならないときがあります。まさに、猫の手でも借りたいという状況です。

普通は1+1=2ですが、仕事の面では、2人でやるとものすごく効率的になり、1+1=3にも4にも10にもなることがあります。

ならば、人を雇えばいいじゃないかという話になるわけですが、これが難しいところで……。いつもコンスタントに仕事があるわけではなく、ましてや、地方出張や海外出張になると、交通費や海外渡航費用はお客様持ちの場合が多いため、お客様にご負担をかけないためにも、私一人で行くことになります。その間、スタッフを遊ばせておくわけにもいかず、今のパターンで出張料理人をやっている限り、結局、1人のほうが経済的なリスクが少ないという結論になってしまいます。

最近で言えば4年間ずっとステイホームで、仕事が全くできないという、どん底のコロナ禍も経験しました。出張料理人としてはかなり厳しい状況でした。紆余曲折はあっても、30年以上も出張料理を続けてこれたのは、固定費用をかけずに歯を食いしばって、1人でやってきたからだと思っています。

ただ、そうは言っても、今までたくさんの方々のお世話になりながら、生きてきました。まずは、私を産み育て、大学やフランスまで行かせてくれた両親には感謝しかありませんし、いつも、励まし、温かく見守ってくれた親戚、近所の方々、お世話になった学校の先生方、先輩、同級生、後輩のみなさん。その他にも、本当にたくさんの方々のお世話になり、ここまでやってこられました。

30歳から始めた出張料理ですが、最初のうちは営業の仕方もわからずに、最初の3、4年は、空振り続きの毎日でした。そんなときに親身になって相談に乗ってくださったのが、親戚や近所の方々、学校の先生方、同級生でした。

親戚の叔父さんからは勤め先の会社の懇親会での出張料理のオファーをいただいたり、従姉妹の結納のお料理、母の実家では法事のお料理もつくらせていただきました。大学の先輩からは、帝国ホテルの社長を紹介していただき、ホームパーティの料理を数回つくらせていただいて、それをきっかけに、素晴らしいご縁が広がりました。高校でお世話になった先生からは、当時まだ珍しかった結婚相談会社を紹介していただき、婚活パーティのお料理の仕事、同級生からは京都や東京日本橋の呉服問屋さんを紹介していただき、呉服や宝飾の展示会場で、おもてなしのお料理をつくらせていただきました。

辻調理師専門学校(辻調)の先生方には、今でも大変にお世話になっています。辻調で出版している本でも、何回も私の仕事を紹介していただきました。船上ウエディングのお仕事、食品会社のメニュー開発のお仕事などもいただきました。

辻調の偉大さ、辻調OB、OGの絆の有り難みは、卒業してからのほうがよくわかります。先日も辻調の同窓会に参加させていただき、卒業して40年近く経っても、いつも温かく迎え入れてくださり、感謝しかありません。これからも、後輩たちのお役に立てることがありましたら、喜んでやらせていただきたいと思っています。

ここで、あなたにお伝えしたいことがあります。

あなたは今、仕事や人間関係がとても充実していて、何の悩みや壁にぶち当たることもなく、毎日を楽しく幸せに過ごせていますか?

おそらくほとんどの人は「NO」だと答えるでしょう。私もかつては、壁にぶち当たり続け、悩みの塊みたいな感じでしたから、あなたの心境はよくわかります。そんな私の経験から、いくつかアドバイスさせてください。

とにかく、自分の身近な人たちを大切に、親切にしてみることから始めてみてください。

まずは、お墓参りするなどしてご先祖様を大切にしてください。私は、別にスピリチュアルの世界に詳しいとか、予知能力があるとか思っていませんが、60年以上生きているなかで「地球(自然)の法則」は確かに存在すると、さまざまな経験を通して感じています。ご先祖様が命をつないできた、現世を一生懸命生きているあなたを応援しないはずがありません。自分がご先祖様の立場になって考えてみたら、子孫に不幸になってほしいなんて思わないのではないでしょうか。

次に、奥様(旦那様)、お子さん、ご家族を大切にしてください。私のまわりを見ていても、仕事で成功し、心も豊かな人は共通してご家族を大切にしています。

そして、身近でお世話になっている方々へ心を配り、感謝の気持ちを持って親切にしてください。すると、私の場合のように、身近な方々が親身になって応援してくれるようになります。なによりも、自分の身近な方々がいつも笑顔で幸せならば、自分もうれしいものです。

そこに共通するのは、ご縁に対する感謝の気持ちです。調子がいいときの驕り、悪いときの他責は禁物です。その驕りや他責は、あなたの運気や成長を妨げます。いざというときに応援してもらえたり、助けてもらえる人は、身近なご縁に感謝し、大切にしている人です。そのスタートに遅いことはありません。今日からぜひ意識してみてください。あなたの人生は、きっとより良いものに輝き始めるはずです。

【著者プロフィール】
小暮 剛(こぐれ・つよし)
出張料理人。料理研究家。オリーブオイルソムリエ。1961年、千葉県船橋市生まれ。明治学院大学経済学部卒業後、辻調理師専門学校を首席で卒業。渡仏し、リヨンの有名店「メール・ブラジエ」で修業。帰国後、「南部亭」「KIHACHI」「SELAN」にて研鑽を積み、1991年よりフリーの料理人として活動開始。以後、日本全国、海外95カ国以上で腕をふるう「出張料理人」として注目される。その土地の食材を豊富に使い、和洋テイストを融合させて、シンプルに素材の持ち味を生かす「小暮流料理マジック」に、国内のみならず世界中から注目が集めている。近年は、出張料理人として活躍しながら、地域食材を最大限に生かしたレシピ開発を通じた地方再生や、子どもたちの食育講座などを積極的に行なっている。また、日本におけるオリーブオイルの第一人者としても知られ、2005年には、オリーブオイルの本場・イタリア・シシリアで日本人初の「オリーブオイルソムリエ」の称号を授与している。その唯一無二の活躍ぶりは各メディアでも多く取り上げられており、TBS系「情熱大陸」「クレイジージャーニー」への出演歴も持つ。最終的な夢は、「食を通して世界平和を!」。

▼本連載「唯一無二の『出張料理人』が説く『競わない生き方』」は、下記のサイトで過去回から最新話まですべて読めます。



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