飲食業界のリアルすぎる採用市況
株式会社Food Innovation
代表取締役の菊地悠真です。
今回は、2023年4月以降、各飲食企業で発生している人材獲得の苦境について書いていきます。
結論から言うと中途採用、新卒採用が順調で
人手不足ではない飲食企業は一切いません。
今日は具体的に
・どのような採用手法で
・どのように採用活動をしている企業が
・どのような罠に陥っているのか
・解決するためには何をすべきか
実際のご支援事例をもとに説明していきます。
私が普段、お打合せをする企業は
・年商:20~80億
・店舗展開:20店舗~100店舗
・従業員数:600~2000名(社員数80~400名)
この規模の人事や経営層の方とお話をさせていただいております。
飲食企業の採用について、かなり解像度が高い自分がリアルな採用市況と
人手不足を解消する内容を解説いたします。
ぜひ、リツイートにて
ご感想を伺えますと幸いです。
最後まで読んでいただければ
多くの飲食企業で起こりがちな
”どんなに頑張っても人手不足が解消できない”
失敗を防げます。
①採用費(採用単価)が上がり続けている
採用単価の例1
2021~2022年の社員採用単価が10~15万で低コストで採用できていた企業も現状は採用単価が2倍以上になっており、採用費が高騰しています。
過去の成功経験が足かせとなり、会社から必要予算を捻出できず、追い込まれている人事担当が多いのではないでしょうか?
採用単価の例2
以前は面接2回やっていた企業も
採用難から今は面接1回のみで採用している傾向がとても強いです。
ただし、もともと面接2回やっていた企業は求める人材が高い傾向にあるため、求人広告では採用できず、人材紹介を多用するケースがかなり増えたと見受けられます。
※人材紹介から毎月紹介を一定数もらうためにも一工夫が必要
採用単価の例3
板前などの料理人採用は40~50代も採用するため、意外と採用単価が上がっていない状況です。もしここが、20~30代の和食若手料理人しか採用できないという企業がいましたら、中途採用ではなく新卒採用に注力しましょう。専門学校から集めるのが一番です。(専門学校も厳しくなってますが・・)
全体で言えることとしては
2024年は現状の中途採用活動だけをしていると
・今よりもさらに採用単価が上がり、人材獲得ができなくなる
・人材の質がさらに低下、サーヴィスや料理のクオリティが下がってしまう
この2点は確実に発生します。
飲食業界のメジャーな求人広告も解説します。
(ご存知かと思いますので概要は割愛します)
・求人@飲食店ドットコム
・グルメキャリー
・クックビズ
上記3つが中途採用でよく使われるメディアです。
飲食専門の求人メディア
一言で媒体説明すると上記となります。
チェーン店を100店舗くらい展開している企業はマッチしづらいです。
逆にチェーン店要素が強い企業におススメは
上記のような総合媒体の方が応募が入り、採用が出ています。
次に求人数の推移について
飲食店ドットコムの求人数の推移で見ると
これだけ人手不足の飲食店が増えています。
今まで新卒採用メインだった企業も今年4月以降、中途採用市場に続々と参入しています。
例えば、
・Plan Do See
・HUGE
学生からも大人気の企業です。
新卒採用体制が整っている企業はブランド力や採用競争力が高いため、求職者が流れやすいです。
さらに洋菓子メーカーやブライダル企業も続々と飲食店ドットコムの中途採用市場に参入しています。
例えば、
・ヨックモック
・ディアーズブレイン
飲食業以外の業種でも現場スタッフの確保に苦戦をしているのです。
一方で飲食業を希望している求職者の数は
2023年の数値は出ていないのですが
街場の飲食店離れは確実に進んでいると言えます。
”まさに少なすぎるパイを奪い合っている状況です”
参考に
ある飲食企業の応募数と採用費の推移です。
このくらい応募獲得コストが増えています。
そんな少ない求職者の奪い合戦ですが
どの企業も人材獲得をするために
給与ベース上げ、休日数上げ、労働時間の短縮を行っています。
〇給与・休日面
飲食店ドットコム 都心エリアでコンスタントに応募獲得をするためには
これくらいの水準が必要です。
反対に現段階で
上記の水準で募集している場合は良い人材の獲得どころか
いくら求人費を出しても採用ができない、採用しても直ぐに抜けてしまう
50代以降しか採用できないという負の連鎖に陥ってしまいます。
給与ベース上げができない企業は未経験層を狙う手法として
総合媒体の方が採用できる可能性があります。
(個人店の場合は専門要素を上手く打ち出せれば、飲食専門媒体で採用できます)
ちなみにですが
新卒採用の給与相場もかなり上がっています。
25卒採用から給与ベースを2万~最大6万上げる企業が増えています。
学生から大人気のあるホテルブライダル企業が今年給与改正を行い、大卒の初任給を32万(固定残業含む)まで上げました。月給32万と言えば、飲食業界の店長や料理長クラスの給与です。
〇休日数について
現段階で月8日未満だったり、年間100日未満の休日数を記載している企業は求職者から見て大きなデメリットに感じてしまいます。
求職者視点で休日数を見た時に
ここ1年間、年間休日数上げや月間労働時間を210~220h未満にしようという動きが活発化しました。月間労働時間を抑える=1店舗当たりの人数を増やさなければいけないため、各社で1年くらいかけて時代に合わせた体制作りをしています。
給与ベース上げ、休日数UPを図ってもそれでもなお
東京都心エリアの採用は苦戦が続いています。
そこで各社タイミーなどのノマドワーカー活用や外国人人材の採用にシフトしています。
Indeed等の求人でも外国籍の方から応募が入りますが
ほとんどが技人国VISAのため、雇用できません。
※VISA切り替えまで行う外国籍の方は体感5%未満
外国人人材の採用を進めた結果
・店舗に日本人スタッフが誰もいない
・サービスの質が落ちてしまった など
店舗運営の問題も発生しています。
短期的には人手不足の解消策として外国人採用は良いのですが
長期的に見ると、外国人人材だけでは担保できない事態が発生します。
その他、外国人採用以外の人手不足解消策として
・採用する年齢層を幅広くする
いままでは20~30代まで採用していた企業→20~40代まで広げる
・面接1回で採用する
いままで面接2回設けてた企業→役員面接1回で合否
※応募からおおよそ1週間で採用するオペレーション
・スカウト採用に着手する
応募が獲得できない企業がスカウト活用する機会が増えました。
ただし、応募が入らない=求人内容や入社魅力に問題があるため
スカウトでも人手不足は解消できていません。
※スカウト採用を成功するには、対象者のターゲティングやスカウト文章の見直し、A/Bテストなどを行う必要があるため、プロにお願いしても軌道に乗るまで3か月くらいは掛かります。
・中途の人材紹介会社を活用する
求人広告経由での採用難、採用単価の高騰により人材紹介会社を活用する
企業が今年急増しました。人材紹介会社は手数料が固定90万もしくは、年収30%を設けてるため、求人採用費が高騰し、求人募集しても採用できるか不安定な企業にとって、成功報酬型の人材紹介を活用した方が良いという結論になります。
※各社が人材紹介に依存している状況です。
飲食専門の人材紹介会社は10社もありません。抱えている求職者数にも限界があるため、今後間違いなく1社あたりへの紹介数は減少します。
②他社からの引き抜きで中堅の活躍人材が抜けている
月10社程度の飲食企業人事の方とお話をしていますが
入社して3~5年くらいで一人前になった人材が他社に引き抜かれたという話を今年はよく耳にします。企業としては時間を掛けて育て上げた戦力を失う訳ですからかなりの痛手です。この話ですが、1~2名引き抜かれたという話しではなく、5~6名くらいを今年失った企業、中には2ケタの人材が流出してしまった企業などかなり深刻な問題です。
引き抜きがあった企業の特徴としては募集水準が昔のままという点です。
例えば、この採用戦国時代でも
月給21~23万で中途採用を行ってる企業がちらほらいます。
特に老舗の高級店業態を展開している企業が多いです。
(固定残業という制度がないため、このような記載かと思います)
未経験でも月給30万スタートの競合飲食企業がわんさかいる時代で
・給与が低い企業
・高級店展開でスキルのある人材が在籍している企業
このような人材は競合から見ると格好のターゲットとして狙われます。
いままではブランド力や身に付くスキル、入社魅力、老舗安定感で人材を担保できていた企業でも、この給与ベース上げ合戦が続く時代では求職者が圧倒的に有利な立場なのです。
中途採用では給与、待遇、休日数が注目されるので
いくら入社魅力が高くても給与が低ければ、求職者に相手にされません。
流行に敏感な企業では2021~2023年に掛けて予算2000万くらいを掛けて
人事評価制度と給与改定をセットで行った企業が多い印象です。
人事評価制度といっても構築~運用まで1年くらいは掛かってしまいます。
いずれにせよ、
時代の動き、求職者の志向性に企業側が歩み寄り、採用競争力を高めることで求職者から選ばれる企業になる必要があります。時代の逆行は自分の首を絞めることになるので辞めましょう。
➂24新卒採用が失敗
いままでは新卒採用が上手く行ってたのに
24卒採用は失敗したという話をよく聞きます。
各社の24新卒採用進捗
失敗の背景
・ホテル業界に学生を取られた
・専門学校からの紹介が今年は全くなかった、減った
・リクナビが反響不良すぎた
上記3つが挙げられます。
もう少し詳しくみていくと
・ホテル業界に学生を取られた
→説明会には来るが選考へ進んでくれなかった/内定辞退となった
・専門学校からの紹介が今年は全くなかった、減った
→ホテル業界に学生が流れ、街場の飲食企業へ紹介が来なかった
専門学校へ挨拶訪問しても相手にされなかった
・リクナビが反響不良すぎた
→過去と比較しエントリー数が半分以下になってしまった
この失敗を受けて、各社どういう25卒採用の動きをしているか
新卒採用の優先度は高くなく、上記くらいの取組みとなります。
どちらかというと冒頭で申した通り、中途採用へ注力する方針です。
リクナビ勢がマイナビへ一斉移行している影響もあり
マイナビ24と比較するとマイナビ25のエントリー数も2/3~半分程度まで
落ちている状況です。
なのでマイナビなら25卒採用ができると考えている企業は、ここにも罠があります。
私ならばマイナビとリクナビ(安価プランでも良いので)
どちらにも掲載します。
※逆にリクナビは掲載企業が減ったので、チャンスと考えます。
また飲食業界では大卒採用の経験があまり無いのが実態です。
いままでは専門学校や短期大学から直接学生の紹介を貰えていました。
大卒採用を本格的に行う必要がなかったのです。
飲食企業のこれまでの新卒採用経路
いままでは
・学校からの直接紹介
・エフラボ
・飲食向け合説
上記3つメインで新卒学生の母集団形成をしていた企業が大半です。
学生層は大卒ではなく、調理製菓の専門学生や高校生です。
24卒採用の各採用経路の問題
という具合で、今まで飲食企業は大卒採用をほとんどしていなかったので
今までの採用経路が行き詰ってしまい、一気に新卒採用失敗に陥りました。
採用ハードル
ここが大きな違いです。
説明会に来ても、その説明会の内容や採用フローが適切に設定されていないと大学生は選考に進んでくれないのです。
そして多くの飲食企業が
「説明会」→「1次面接」→「2次面接」→「内定授与」という選考フローを組んでいます。
他業種と比べると、内定授与まで非常に短く、選考過程で現場社員に会える機会も少ないです。
その結果
・学生が企業に興味を持ち切れない
・説明会には来てくれたが、1次面接を受けてくれない
・内定授与したが、受諾されなかった
という事態に発展してしまいます。
ちなみにですが
新卒採用が上手く行っている飲食企業は
人事担当の負荷が増えてしまいますが
これくらいやらないと大学生の採用はできません。
参考に
24新卒ホール採用が上手く行った飲食企業では
これくらい母集団形成ができ、新卒採用に力を割くと
大手ホテル、ブライダル、リゾート企業と競合しても内定受諾され、一切妥協なしの大学生採用ができます。
※25卒市況としてエントリーシートは無くても良い
新卒採用を成功させるためには片手間ではできず、人事、現場社員、役員層へも協力を仰ぎながら、大きなマンパワーを投下する必要があるのです。
採用苦境の中での飲食企業の活路とは?
これまで
➀採用単価の高騰
➁中堅人材の引き抜き
➂24新卒採用の大失敗
上記について解説してきました。
結論として、人手不足を解消するには
経営層に採用市況を理解してもらい
採用予算を捻出し、採用領域でやれることを全部やる
です。
予算捻出するのも一苦労なのは重々承知の上ですが
人事部だけではどうやっても解決できないのです。
経営層の理解を得るには、他社の採用進捗や現在の採用市況をしつこく発信し続けること。
そして予算捻出に成功したならば
中途採用領域
新卒採用領域
年間予算シミュレーションの例
いままでの採用予算と比較し、3倍以上になっているかと思います。
まずは予算を捻出することが必要人材を必要人数、スケジュール通りに採用する土台に繋がります。
ちなみにですが
飲食現場から人気の体育会学生を採用すると考えた場合
各段に採用ハードルが上がります。
上手く行っても一人当たりの採用単価100万以上掛かると考えたほうが良いです。体育会学生の採用は誰もが知っている大企業と競合します。
その中で採用するには相当な自社魅力が不可欠でしょう。
社内にある魅力を言語化するのではなく、新たに入社魅力を作っていくことになります。
体育会の学生の採用に上手く行っている飲食企業は1社あり、その企業は体育会向けの合同説明会で社長登壇しています。
※業界ではかなり著名な方です。
(私も飲食企業で体育会採用に携わりましたが相当難しかったです。)
そして、また一つ罠があります。
いくら予算を捻出しても採用が上手くいかない場合があります。求職者視点で自社を客観的に見れてない企業です。
具体的には給与、休日の部分です。
もちろん福利厚生を整備するのも大事なのですが、やはり給与と休日面がものを言います。
採用予算を捻出するのと同時に給与や休日面も整備していく必要があるのです。整備するためにはやはり経営層との折衝が不可欠です。
採用市況や競合他社の動きを正しく、しつこく経営層に伝え、必要性を理解してもらわなければなりません。
ここまで解説してきましたが
人手不足解消のために、この4点を行っていく必要があります。
飲食企業で人手不足を根本から解消するためには会社全体を動かしていかなければなりません。
そして市況の変化は皆さまが考えている以上に早いです。
ゆっくりと着実に変革する=ゲームオーバーを意味します。
応急処置ではなく、最短最速で本質に突き進まないといけません。
今回、飲食企業の採用においては
テクニックやノウハウではなく”根本課題の解決法”について解説する形に
なってしまいましたが全て実体験を踏まえた内容となっております。
私はこれまで30社以上の飲食企業の採用支援してきた中で
あらゆるケースを見てきて、採用課題の解決に向けて人事の方や経営者の方と伴走させていただいてます。
1社でも多くの企業が
採用の舵取りを誤ることなく、事業成長に繋げることを祈っております。
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