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濁流のやうな, Finale (短歌)

(その日の午後は息子と遊びながらも
半刻ごとに彼の生死を確かめていた)

銃口をむけて飛ばせるしゃぼん玉
国の終はりも近き夏の日

(神経が高ぶっていたのだろうか
久方ぶりに悪夢をみた
ウクライナのような夢)

難民となりて逐はるる夢をみる
この世の終はり近づきし夜に

絶へ間なく爆撃さるる夢に覚め
見へざる方にすがる手のばす

濁流のやうな悪しきになにもかも
呑まれゆく世に、どうぞわが主よ!

Finaleにむかひ急げるこの世には
汝のほかに希望なかりき



福音とは良き知らせだと言う。「いかに美しいことか、山々を行き巡り、良い知らせを伝える者の足は」。

暗闇が濃くなればなりゆくほどに、ちいさなかそけき灯火の明かりが、引き立っていく。

そのようにして逆説的に、ちいさな頃から聞いているこのイエスキリストの福音が、混沌と暗闇のなかで、いまただひとつ輝いている。他の鍍金メッキはもう剥がれてしまった。

もう偽物に目を奪われていられるような時代では、なくなってしまった。それはわたしが大人になったからかもしれないし、時があまりにも遅いせいかもしれない。

“霊”と花嫁とが言う。
「来てください。」
これを聞く者も言うがよい、
「来てください」と。
渇いている者は来るがよい。
命の水が欲しい者は、
価なしに飲むがよい。

                黙示録 22:17


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