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若月房恵
2023年12月30日 20:29
山を下りてゆくと、ちいさな菜園がみえた。竹のはやしに囲まれて、瓦葺きの農家がたった一軒、谷戸の奥に建っている。湿った風が斜面をふいてゆく。きれいに立てられた畝に、太った白菜が育っているのを、わたしは階段のうえからぼんやりと眺めた。 畑には、頑丈な身体に、粗末な服を着たひとがいた。鍬から手を離すと、彼はわたしに呼びかけた。やさしくて、なにかを思い出すような声だった。名まえを呼ばれて、畑にあ