春の甘くて美味しい小説祭り
子どもの頃から食べ物の本が大好きで、何ならピザ屋のチラシが大好きでよく集めていたほど食いしん坊な私🤤🤤
春の○○祭りのCMが流れ始めたので、私もその流れに便乗して(?)今回は食べ物の中でも、甘くて美味しい小説をピックアップしてご紹介したいと思います♪(できるだけネタバレにならないようにお伝えしますね!)
『ショートケーキ。』 坂木司 (文藝春秋)
まずは、こちら。ふわふわと軽やかな味わいを楽しめる連作短編集。普段、本を読み慣れてない方でも、ぱくぱく読めちゃう一冊!
(タイトルはショートケーキだけど、私的にはプチシュークリームって感じかな🤔)
満腹になるには少々物足りなさを感じる方もいるかもしれませんが、おやつには持ってこい!な、ちょうどいい分量だと思います。
坂木さんと言えば『和菓子のアン』シリーズも人気ですよね。甘いものは別腹な方はこちらもオススメいたします!
(こちらはミステリ要素があって、毎回出てくる和菓子をつい検索してしまうほど! だから巻末に和菓子の写真載せてくれないかな~とこっそり思っている。)(でもたまにあるブラック坂木作品も実は好きなんだな~)
今回紹介する作品はそこまでミステリ要素はないのですが、身近な存在すぎて、ないがしろにされがちなショートケーキと登場人物たちを不思議と応援したくなる物語です。
特に「ままならない」ママたちの互助会が印象的でした。三大欲求もままならない新米ママたちが叶えた願いには、やっぱり○○が必要みたいです。さて、それは何だろう?
読み終わった後には、タイトルの『。』さえも、愛おしく思えてくる作品です。
『坂木司リクエスト! 和菓子のアンソロジー』 小川一水、木地雅映子、北村薫、近藤史恵、柴田よしき、日明恩、恒川光太郎、畠中恵、牧野修 (光文社)
先ほどご紹介した坂木司さんセレクトの和菓子にまつわるアンソロジー。
すごい……読み始めて、そう感じました。
さすが坂木さんが作家さんにお願いしただけのことはあるなあ、と。
和菓子というテーマだけでこんなにいろんな世界が広がるなんて……
大きな大福に噛り付くようなお話もあれば、上品な上生菓子をそっと味わうようなお話もあってお腹も心も満たされます。
洋菓子はちょっと苦手……という方には、こちらをオススメいたします!
(そして、アンソロジーに関しては違うテイストでオススメしたい作品が山ほどあるのでまた別の機会に!)
『バニラな毎日』 賀十つばさ(幻冬舎)
タイトルからもういい香りが漂ってきそうな一冊!
こだわりの洋菓子店を経営していた白井さんという女性がお店を閉めるところから始まります。
その後、元常連客であり、実は元料理研究家でもある佐渡谷さんというおばさまと再会し、買い手が見つかるまで厨房を貸してくれと頼まれ、引き受けたのはいいものの……なぜかやってくるのは、佐渡谷さんの姪のカウンセリングを受けているクライエントばかり。
そこで開かれるのはお菓子のリハビリ教室。
完全に悩みが解決されるわけではないけれど、お菓子を通して悩める人々の心がほんの少し軽くなっていく姿に心が温まります。
個人的には、最初は佐渡谷さんに振り回されることをあまり快く感じてなかった白井さんが徐々に変化していくところが好きです。
バニラというと、なんとなく白いイメージが思い浮かびますが、実際には枝のようなさやから取り出したバニラビーンズという小さな粒々で香り付けされてるだけで、バニラそのものが白いわけではないんですよね。(お花は白いみたいだけども。)
だから、白井さんがお菓子のリハビリ教室で出会った人達からのバニラビーンズが織り交ぜられてバニラな毎日が幕開けしたのかな、と私は感じました。
さてさて、この本を読んだ方のバニラの香りの感じ方はどう変化するのでしょうか?
(こすったらいい香りがするページがあったらいいのに~と、今さらながらちょこっと妄想しちゃいました😋(笑))
『スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫』 友井羊 (集英社文庫)
こちらは、吃音に悩む少女、菓奈が真雪のチョコ事件を解決したことから少しずつ交遊関係を広め、学校内外で起こるちょっとした(?)謎をスイーツを絡ませながら紐解く青春ミステリです。
スイーツにまつわるうんちくや、化学的なこと、吃音についての詳細が興味深かったです。
菓奈の家族が全然出てこないな? 保健の先生不在なこと多すぎない? といった疑問は徐々に明らかになっていく仕組みとなっています。
実は加藤ちゃんにも、とある秘密があったり……(加藤=加糖からきてるのかな🤔?)
ちなみに友井さんも『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』がシリーズ化されてますね。(漫画まであるのは知らなかった!)
こちらはこちらで、多種多様な美味しそうなスープが堪能できます。
スイーツレシピの謎もビター風味だったり、スープの謎もちょっと大人向けな味わいだったりします。
でも、友井さんのデビュー作はかなり攻めた作品だったので、そこからこんなに美味しそうなミステリも描けるのか!と、その振り幅に感心しました。
『秘密のスイーツ』 林真理子 (ポプラ社)
名前は存じ上げているけれど、実はそれほど読んだことのない林真理子さんによる大人も子どもも楽しめる一冊です。
実際に会うわけじゃなく、携帯電話を通しての時空を越えたやりとりというのが今風かつリアリティがあって面白かったです。
戦時中で、甘いお菓子を食べることすらできない同じ年頃の子がいると知って、自分の考えを改めていく理沙が素敵なんですよね。
基本的には食べ物を残さない私ですが、それでも、いつでも自由に食べたいものを食べられることに対して、もっと感謝の気持ちを持とう!と思った作品です。
『アイスクリン強し』 畠中恵 (講談社)
私はあまり時代小説は読まないのですが(歴史が苦手なもので……)畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズは好きでいくつか読んだこともあったため、手に取ってみた一冊です。(『しゃばけ』シリーズが映像化されてたのは知ってましたが、こちらも漫画化されているようですね。)
明治になって23年。変わりゆく時代に戸惑いながらも生きていく若者たちの物語。
居留地育ちの真次郎が作る西洋菓子がどれも本当に美味しそうで!
「チヨコレイト甘し」で真次郎がパーティーに向けて準備していた料理やお菓子が……になったときは私まで泣きそうになりました。それでもめげずに工夫を凝らした真次郎の姿に感動します。
そして「アイスクリン強し」のラストの真次郎の言葉に思わずニヤリ😏✨
果たして、真次郎はどんな言葉を告げたのでしょう?(これは読んだタイミングにもよるかも。)
『西洋菓子店プティ・フール』千早茜(文藝春秋)
食べ物に限らず、細やかな描写がとにかく上手で、新作に出逢う度に毎回舌を巻く、千早茜さんによる物語。
甘い香りに誘われるかのように一気読みして気づいたのは、お菓子は甘いだけじゃないということでした。
ほろ苦かったり、酸味があったり、濃厚だったり、優しい味だったり……いろんな風味があるからこそ、また味わいたくなるんだなあ、としみじみ。
この物語も、甘いだけじゃなくて刺激的で、だからこそ思うところ、感じるところがたくさんありました。
登場人物たちの不器用さが歯がゆくもあり、がむしゃらなところが素敵だな、と感じ、続編が読みたい!と思った一冊でもあります。
(千早さんの作品に関しては、また個別に紹介したいなと思っています。それくらい魅力的な作品がたくさんあるので!)
『最高のアフタヌーンティーの作り方』 古内一絵 (中央公論新社)
もうタイトルから最高な一冊!
ついに紅茶派の時代が来たな!と歓喜せずにはいられないほど。(だって仕事の合間に紅茶を味わう人って『相棒』の右京さんくらいしか思い浮かばないんだもん……)
私もソロアフタヌーンティーを嗜んだことが二回ほどあるのですが、小さな宝石のような夢の詰まったプティ・フールは、何度見ても感激します。
だからこそ、四季を感じられるような新メニューを考案する人、実際に作る人、それを味わう人たち、それぞれに思いを馳せずにはいられませんでした。(しかも、アフタヌーンティーを食べる順序があるなんて!)
念願のアフタヌーンティーチームに配属された涼音の奮闘。
才能はあるのに、ある特性のせいで嫉妬混じりの偏見を経験し、海外修行を諦めてしまったシェフ・パティシエ達也の苦悩。
アフタヌーンティーの起源や、戦後の浮浪児時代を経験した涼音の祖父だからこその「人が生きていくのは苦いもんだ。だからこそ、甘いもんが必要なんだ」という言葉。
そして、意外な過去を持つシェフの秀夫など甘いだけではない背景が味わい深く、じっくり楽しめる作品でした。
と、まあいくつか美味しい作品を紹介してみたのですが、いかがでしたか?(本当はまだまだ紹介しきれてないんですが……)
最初に“甘くて美味しい”と謳っておきながら、甘いだけではない作品もありましたね…
今回紹介した作品の感想は、読書メーターにも書いています。(読み終わって数年経った本はこちらに書いた感想から引用しています。)
ネタバレになるような感想もあるので、読み終わってから見ると、また楽しめるのではないかな?と思います♪
ちなみに個人的に食べ物の描写が魅力的で好きな作家さんは、近藤史恵さん、野中柊さん、千早茜さんです。東海林さだおさんの『丸かじりシリーズ』や椎名誠さんや池波正太郎さんのエッセイも好きです。北大路魯山人の作品(Kindleの青空文庫で読めるよ!)もいくつか読んだ覚えがあります。(魯山人曰く、鰻が本当に美味しい時期はクリスマス頃なんだって!)
もしこれ以外にも、みなさんのオススメの甘くて美味しい小説があればぜひ教えていただきたいです(*˘︶˘*).。*♡
今後も気が向いたら○○小説祭りを開催したいと思うので、お楽しみに~!(次は、アレでいこうかな~🤔と思っています。まだ秘密だけど🤭)
《つづく》