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『草食系男子に教えられたこと』 #毎週ショートショートnote【花屋編】

 夜八時になると、俺は花屋を開く。

呼び込みをせずとも、仕事終わりに夜の街に向かう人や嫁のご機嫌取り、または誕生日やプロポーズの花束、自宅に飾る花を買い求めに来る。

だが、夜中以降に訪れる客はだいたい訳ありだ。

「ここが噂の?」
「ええ」
「今の彼女と別れたくて…」
「理由は?」
「他に好きな人が出来たんだ」
「ではチョコレートコスモスはいかがでしょう?花言葉は恋の終わりです」
「それで頼むよ」
「承知しました」


「…あの」

ある夜、着古した服に疲れ果てた顔の女性が店に飛び込んできた。

「どうなさいました?」
「私もう耐えられなくて」
「どういったお悩みで?」
「義父の介護で気が狂いそうで…」
「ではスノードロップはどうでしょう?花言葉はあなたの死を望みます
「…それでお願いします」
「では夜明けにお届け致しますね」

俺の言葉に女性は人心地つくような、それでいて不安げな顔をした。


うちは知る人ぞ知る
届けたその日に花言葉を実現させる
花屋兼縁切り屋だ。


 草食系からは若干ズレてる感じもなきにしもあらずですが、草花を売って食費を賄っている男性=草食系、とも受け取れなくもないかな~という作品です。(読み終わった後になるほど~と繋がるようにしたいから、あえてお題のワードは入れてないです。)

小説や歌詞に花が出てくると、つい花言葉を調べてしまう私。場合によってはそれが隠喩だったりもするから、調べるタイミングが難しくもあるけれど……今回もいろんな花言葉を調べた中から二つを取り入れてみました。
(花言葉からの逆引き検索が便利でした!)

 チョコレートコスモスは季節的に微妙かなと思い、白いチューリップなどと悩んだのですが、一番わかりやすい花言葉でいこうかな、と。色や本数によっても意味が変わる花言葉の難しさをこの作品を通して、まさに教えられたな、と感じましたとさ。

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