『錬成は電卓の親族』 #毎週ショートショートnote【現代B面】
これは一体なんだろう?
祖父の遺品を整理していると、不思議な形のウッドビーズが二段に分かれてついた細長い板を見つけた。
試しに振ってみるとシャカシャカと音が鳴る。何かの楽器だろうか?
昔はザルに小豆を入れて振り海の音を感じていたようだが、この世のあらゆるものが電子化した今。こんなものを使わなくてもいくらでも音を生成できる。
それに祖父が楽器を嗜んでいたという話は見聞きしたことがない。
「父さん、こんな物を見つけたんだけど…」
「お、算盤じゃないか」
「算盤?」
「あぁ、うちのおふくろが洗濯に熱心だったことは知ってるだろ?」
「うん」
そのおかげで父さんを授かったことも。
「その代わりに親父は算盤に力を入れていたんだ」
「そもそも算盤って何?」
「親父の口癖は錬成は電卓の親族といってな」
おしどり夫婦と言われた祖父母は金婚式の今年、連れ立つようにして亡くなった。
「これを電卓にして働くことで毎日洗濯板でがんばるおふくろを応援していたんだよ」
久しぶりの両面にしてみました。どちらから読んでも楽しめるリンク作品です🤗
A面もよかったらどうぞ~🙋
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