現代にも通ずる啓蒙書!渋沢栄一『論語と算盤』
最近の渋沢栄一ブームに乗っかって『論語と算盤』を読みました。
これは彼の講演を書物にまとめたものになります。
渋沢は新一万円札の肖像になったり、今年の大河ドラマの主人公になったりとなにかと話題ですよね。
いくつかの出版社から出ているようですが、僕が今回読んだのは、ちくま新書の『現代語訳 論語と算盤』(守屋淳・訳)です。
渋沢は明治の人ですが、この本は、現代に生きる私たちにも多分にヒントをもたらしてくれます。
僕が印象に残った一節を二つほど紹介したいと思います。
一つ目がこちら。
"何かをするときに極端に走らず、頑固でもなく、善悪を見分け、プラス面とマイナス面に敏感で、言葉や行動がすべて中庸にかなうものこそ、常識なのだ。これは学術的に解釈すれば、「智、情、意(知恵、情愛、意志)」の三つがそれぞれバランスを保って、均等に成長したものが完全な常識であろうと考える。"(p.65)
これはプラトンの主張した魂の三分説にもとづいた教えであろうと思います。
プラトンは、人間の魂を、理性、意志、欲望の三つの機能に分けました。
明治の日本にはすでに西洋哲学が輸入されており、知識人の常識になっていたのだということに改めて気づかされました。
そしてもう一つがこちら。
"むやみに詰め込む知識教育でよしとしているから、似たりよったりの人材ばかり生まれるようになったのだ。しかも精神を磨くことをなおざりにした結果、人に頭を下げることを学ぶ機会がない、という大きな問題が生じてしまった。つまり、いたずらに気位ばかり高くなってしまったのだ。"(p.202)
昨今は何かと○○ハラスメントと言われる時代です。
市民に知識がついて権利意識が高まることは良いことですし、年長者が不当に若輩を搾取するのは糾弾されるべきですが、人に頭を下げて教えを請うという姿勢が忘れ去られてはなりませんよね。