
『桃色の園』
『桃色の園』
私は桃色の園にいた。
若草が生い繁り、硝子の花が盛る園にいた。
潤沢なラクトンの香りに包まれた園に、
白き乙女が2人。
白き指先をしならせ、
乙女らは私を揶揄(からか)う。
悪戯な痴れ笑いを浮かべながら、
私を弄ぶかのように。
桃色の園は麗しき園。
決して汚せぬ禁断の園。
ああラクトンの香りに、
強烈な麝香の匂いが混じり合う。
乙女よ、私を弄ぶか。
白き指で唇をなぞり
罪悪の汚濁と快楽の余白との
狭間に私を立たせ
その苦悶を楽しむか。
この園の真下は深き洞窟である。
砕け散った硝子と蛇蝎の散漫する
暗く、深き洞窟である。
乙女よ、美白の香りを漂わせながら
桃色の園で永遠(とわ)に遊ぶのだ。
お前達の純白は、
太陽をやがて砕いてしまうであろう。
残酷に潤う肉体を以て
やがて私を喰らい尽くし
桃色の園で微笑むであろう。