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膨大な微生物が健康を助ける
今回は、アランナ・コリン氏の著書「あなたの体は9割が細菌」
という本の内容を紹介します。
私たちの体は、自分のものである以上に微生物のものであると
著者は言っていて、腸管内だけでも100兆個の微生物が
生態系を作って存在しているのだそうです。
人間は生まれた日から死ぬ時まで、その膨大な微生物の宿主として
生きていきますが、それは微生物が人間に対して多くのメリットを与えて
くれていて、微生物抜きに健康は維持できないからです。
今回の内容を通して、私たちがより健康で幸せになるために、
微生物との付き合い方を学んでいきましょう。
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栄養摂取と大腸
皆さんは、食べ物の栄養摂取における大腸の役割をご存じでしょうか?
・・・・・・
医学の世界でも、栄養摂取は小腸の役割だと思われていたので、
小腸に続く大腸は過小評価されていて、排水管のようなものとしか
思われていませんでした。
学校の理科や生物の授業でも、「小腸で栄養を吸収し、大腸は水分を
吸収して残りカスを固形にするところだよ」と教わってきた人も
いるでしょう。
しかし近年の研究によって、大腸は微生物の力を借りて、人間に必須の
ビタミンを合成、吸収していたことや、大腸に微生物がいなければ
私たちの健康は維持できないなど、排泄のためだけの
消化器官ではないと分かりつつあります。
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ここで面白い例として、ジャイアントパンダを
取り上げてみたいと思います。
ジャイアントパンダは、食肉目クマ科に属する動物で、
クマ科にはグリズリーやホッキョクグマなどの仲間がいて、
食肉目にはライオンや狼などの獰猛な動物が加わります。
このような分類とされているジャイアントパンダですが、
肉食ではありません。
ジャイアントパンダは進化の過去に背くように、竹を食べることで
他の生き物との競争を避ける道を選択しました。
竹は一年中生えているので、冬眠することのないパンダは
一日に10~20kgの竹を食べているのですが、草食動物にあるような
複雑で長い消化管はありません。
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しかし、パンダのゲノム(DNA)は食肉目のゲノムであり、
タンパク質を分解する酵素を作るための遺伝子は備わっているのですが、
竹のような頑丈な植物を分解する酵素を作る遺伝子は持っていません。
つまり、本来は消化できないはずの竹を、なぜジャイアントパンダが
食べられるのでしょうか?
・・・・・
実は、草食動物にある長い消化管の代わりに、大腸とそこに棲む微生物が
いろいろな働きをしてくれていました。
ジャイアントパンダの腸内細菌を遺伝子解析すると、
セルロース(植物細胞壁や繊維)を分解する遺伝子が見つかります。
これは、本来なら草食動物の腸内細菌に見られる遺伝子で、
この遺伝子を持つ微生物を体内に棲まわせているので、
ジャイアントパンダは肉食なのに竹をエネルギーとして
吸収できるということです。
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さて、ここで一つ考えてほしいことがあります。
それは、栄養摂取は微生物抜きに語ることが出来ないということです。
昨今評判の遺伝子に基づくダイエット法の理念はどれも、
「人は本来どう食べるべきなのか?」という考え方に立脚し、
何を食べるべきか判断しています。
狩猟採取民の食事がどうとか、人間のDNAに合った食事が
どうとかの話ですが、それでは食事の半分しか考えられていません。
ヒトのDNAと同様に、ヒトの腸内に棲んでいる微生物の種類も、
栄養摂取を考える上で欠かせないポイントです。
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食事によって腸内細菌は変化する
もちろん人間のDNAに合った食事を考えることは大切で、
現代のジャンクフードだらけの食事が正しいとは思いませんが、
祖先の食事が単純に現代でも最適だと考えるのは、それもまた違います。
本書では、私たちの食事を考えるときに、農耕を始める前の縄文時代に
人類が食べていたものにまで遡って考える必要はないと書かれています。
私たちが考えるべき食事は、曾祖父母まで(3代前の祖先)で十分です。
なぜならば、曾祖父母が生きていた頃には、
私たちが現在苦しんでいるような肥満やアレルギー、心の病気など、
いわゆる現代病と呼ばれるような病気はなかったからです。
ほんの100年前にはパッケージ商品だらけのスーパーも、
ファストフード店もなかった頃の食生活は、現在の食生活とは
全く違います。
そもそも狩猟採取民の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と、
現代人の腸内細菌叢に違いがあるのは明らかです。
なぜならば、腸内細菌叢は数日で変化してしまうものだからです。
人類における一生と細菌における一生の長さは全く違うため、
細菌の栄枯盛衰は速やかに起きていきます。
ジャイアントパンダのDNAが適合していない、竹の消化吸収を
腸内細菌が補助してくれているように、ヒトに適合しない食べ物が
腸内細菌の変化によって適合し、重要な栄養源に
なっていることもあるのです。
これはアメリカで行われた実験ですが、肉や卵、チーズなどの
動物性食品を食べるグループと、穀類や豆類、果物、野菜などの
植物性食品を食べるグループに分かれて、腸内微生物の変化を
観察した研究がありました。
結果は研究者の予想通りで、被験者の腸内細菌の組成バランスに
変化が見られました。
植物性食品を食べたグループは、植物を分解できる細菌を急速に増やし、
動物性食品を食べたグループは、タンパク質を分解してビタミンを合成し、
酸化した肉に含まれる発がん物質を解毒する細菌を増やして、
植物好きの細菌を失いました。
この実験に参加した一人の男性は、物心がついた時からずっと
ベジタリアンでしたが、動物食を食べるグループに割り当てられました。
その男性が肉食を始めると、実験前は彼の腸内に多くいた
「プレボテラ菌」が急減していました。
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プレボテラ菌は植物性のエサがなければ生きていけない細菌なので、
4日もしないうちに動物性タンパク質を好む細菌に
追い越されていたことが明らかになりました。
このように、たった4日で腸内細菌は大きく変わってしまうのです。
人間のDNAは変えられなくても、腸内細菌が変化することによって、
私たちは様々な栄養を摂取することが可能になります。
私たちの祖先は、その時々に腸内細菌と協力して、
収穫期には食物繊維で出来たごちそうを食べる細菌が多くなり、
狩りが成功すれば肉の塊を好む細菌を増やして栄養吸収してきたのです。
脂肪と体重の増減
今の私たちが抱えている食事の問題点は何でしょう?
・糖質の摂りすぎ・・・
・脂質の摂りすぎ・・・
・ジャンクフードの食べ過ぎ・・・
様々なことが考えられると思いますが、脂肪と炭水化物を
単純に悪いものだと決めつけるのは栄養素の本質が
正しく伝わらないことになってしまいます。
たとえば、脂肪が悪いものだと思っている人は多くいると思いますが、
脂肪は私たちの生存に不可欠な栄養素であることに間違いありません。
脂肪と一口に言っても種類は様々で、これらをどんなバランスで
摂るのが良いのかは専門家の間でも意見が分かれていて、
実は誰にも答えが分かっていないのです。
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脂質も炭水化物も、健康のための正確な分量は研究中なのですが、
適切に摂取することで健康に生きることに繋がります。
イギリスでは、政府主導の全国食糧調査が1940年から2000年まで行われ、
国民が何を食べていたか世帯ごとに調べていました。
この調査によると、イギリス人の食生活における平均的な脂肪摂取量は、
1945年に1日1人当たり92gでした。
肥満の人が少なかった1960年には1日115gでしたが、
2000年には1日74gに減っています。
それなのに肥満人口はどんどん増す一方で、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の
2種類に分けて再計算しても、納得できる説明は見つかりませんでした。
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