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春まくどうぶつヨーチ
静岡県の一部では、節分にこれをまく風習があると知った。
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どうぶつをかたどった乾パンに、ピンクや黄色などパステルカラーの糖衣を施した、素朴でかわいらしいお菓子、ヨーチ。
東の豆まき、西の恵方巻。
東日本か西日本か、たまに扱いが分かれがちな静岡は、独自路線でヨーチをまいているのだろうか。
自身が勤める会社では、静岡市は東日本、浜松市は西日本で管轄している。間の掛川市に拠点ができたら、どうするのだろう。
余談はさておき、ヨーチをまいたらバキバキに割れて、飛び散って、豆よりも回収に困難をきわめそうだ。
鬼は外、蟻は内、犬は拾い食い。
そもそもヨーチ加工とはなんなのか。アイシングとどう違うのか。
アイシングとは、一般的に砂糖や卵白を着色してクッキーやビスケットなどをデコレーションすることを言います。ヨーチ加工とよく似ていますね。ただ、アイシングは基本的に細かなデザインをすることが目的であり、手作業も多く、コストを抑えて量産することに向きません。
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ヨーチ加工もアイシングと同じく砂糖を着色し、ビスケットに加工をします(卵白は使用しませんが)。ただヨーチ加工の場合、一色のクリーム状にした砂糖にビスケットをドボンと漬けてしまうため、そもそもアイシングと違い砂糖でのデザインが出来ません。
ヨーチ、という名前の由来は諸説あれど、どうも日本語の「幼稚」が関係しているらしい。
イギリスに、ヨーチによく似たイースタービスケットというものがあり、これを日本の幼稚園で食べていたことから、幼稚園ビスケット ⇒ ヨーチビスケット ⇒ ヨーチにたどりついたとか。
たしかに、パステルカラーの春らしい色合いはイースターエッグのそれに似ている。
イースターは、十字架にかけられたキリストがその3日目に復活したことを祝う、キリスト教圏では重要なお祭りだ。
「春分の日のあとの最初の満月の次の日曜日」に祝われ、年によって日が変わる移動祝祭日。だいたい3月下旬から4月中旬にあたる。
宮沢賢治『雨ニモ負ケズ』の一節、「野原ノ松ノ林ノ蔭ノ小サナ萓ブキノ小屋」を彷彿とさせる、「の」が連続する言い回し。Wordならきっと波下線を引かれてしまう。
国内ではなじみが薄いが、ディズニーランドがイベントを仕掛けだしてからは、その知名度がなんとなく上がったように感じる。
カラフルなイースターエッグや、豊穣・繁栄のシンボルであるうさぎなど、モチーフがかわいらしいため、映えが重要な今とは相性もいいのだろうか。
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おだやかな色合いがとてもかわいい。すべて天然着色料だ。
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トゥルンとしたヨーチ加工で、すべて未知の生物と化している。下から上に上がるにつれて、進化の過程をみているかのようだ。
いま気づいたが、最上段右から3番目は手が生えてきている。ひとつだけ、おとなの階段を昇っていた。
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ひっくり返しても、なんだかよくわからない。
ピカソのキュビズム的ななにかを感じる。この中に『泣く女』が混ざっていても違和感がなさそうだ。
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哺乳類と思しき、ずんぐりとしたなにか。
みんなうつむいている。きっと性格はおとなしくて、慾ハナク、決シテ瞋ラズ、イツモシヅカニ草をついばんでいる。
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あらためてパッケージを見てみたら、どこにも「どうぶつ」とは書いていなかった。なつかしい想いがいっぱい詰まった、概念のビスケット。
ところで、イースターはゲルマン神話の春の女神エオストレ、春の月名エオストレモナトに由来しているともいわれ(※諸説あり)、海外では春のお祭りとしても盛大に祝われている。
くしくも、静岡県の一部でヨーチがまかれるという節分は、立春の前日を指すことが多い。
二十四節気で春のはじまりを告げる日に、春のお祭りイースターのビスケットによく似たヨーチをまく風習があるのは、単なる偶然とは思えなくなってきた。
ホメラレモセズ、クニモサレない発見。
なぜ静岡の一部限定なのかはわからないし、真偽のほどは定かではない。
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確実なのは、ヨーチ加工のノスタルジックな甘みと、乾パンの香ばしさがおいしいということだ。まくのは、ちょっと惜しい。