モンブランクライマー
モンブランのハイシーズンがやってきた。
8月の山の日に食べるモンブランも粋だが、やはりモンブランの見頃とベストシーズンは秋だと思う。
百貨店に催事出店していた《小布施堂》のモンブラン。モンブラン界の富士山。
《小布施堂》は、長野県小布施町が有する栗菓子の有名店。
名物の栗の点心・朱雀は、伝説の生き物のような神々しさを放っている。一言であらわすなら「ファッサァ・・・」。
朱雀は本店でしか味わえないが、モンブランや朱雀モンブランは最寄りの百貨店にも来てくれることがある。
モンブランという名は、フランスとイタリアの国境に位置するモンブラン山の形状に由来する。
ちかごろ、いちごのモンブランや、紫芋のモンブランなど、栗要素ゼロのカラフルなモンブランをよく見かける。
形状由来の名前だから、素材はなんでもいいらしい。そもそもモンブラン(白い山)なのに、栗のモンブランすら白くない。
モンブランの代名詞ともいえる細いひも状のクリームは、崩れたマロングラッセをペースト状にして再利用したことから生まれたという。
渦巻タイプのモンブランも見ごたえがあるが、横掛タイプに見られるこの「ぶらん」としたループ部分も、かくれた絶景ポイントである。
店頭ポップは生クリーム多めの断面図だったが、意外とマロンクリームの比率が多くてうれしい。ほぼ半分栗。
あんこに通ずるようなマロンクリームの濃厚な甘みが、あっさりめの生クリームとよく合う。土台のスポンジも、あるのかないのか分からないくらい、ふんわりなめらかに溶けてゆく。
ところで栗は、沖縄を除く46都道府県で収穫されているという。
収穫量は茨城県が国内トップで、年間およそ5000トン。
対して《小布施堂》を有する長野県はおよそ500トン。
桁が違う。
収穫量と知名度の高低差、エベレストまではいかないが、モンブラン級(4,809m)。
茨城県は広いから作付面積も広いのだ、と仮説を立てたが、長野県の面積は茨城県の約2倍だった。あえなく滑落。
日本で5番目に小さい県に住んでいるため、大体の県は大きく見えると申し開いておく。
問いへの自力登頂はあきらめ、「小布施 栗 なぜ」とgoogleに問う。
小布施町が全国的に栗の町として知られるようになった理由はこうだ。
小布施の栗は、由緒が正しいのだ。
しかも水戸のご老公・黄門様はこの小布施の栗がたいそう気に入って、地元の水戸にも植えてしまったのだとか。
なんと、茨城につながった。
茨城が栗の収穫量トップなのは、この史実が影響しているのだろうか。
今度はまあまあ根拠のある仮説を立て、「茨城 栗 なぜ」で検索してみた。
「気候が適していた」「万農王国いばらき」「日本有数の栗の産地」「生産量日本一」「笠間の栗」という、茨城県の強い強いアピールがたくさん出てきた。
水戸黄門との関係は見つけられず、またもや登頂断念。
あと、東日本民として茨城県を応援しなければと思った。
今度は笠間栗をつかったモンブランを食べてみたい。