【書評】 ドリルを売るには穴を売れ 佐藤義典 営業こそマーケティングを学ぼう
今回、ご紹介する本はこちら!!
誰でも売れる人になる、マーケティング入門がテーマの1冊です。
会社の新規事業コンテストの参考図書として紹介があったので手を撮ってみました!!
マーケティングの知識って、マーケティングをやっている人の為のものなんじゃないの!?
と思っていましたが、
営業職の自分にとっても、大いに仕事に役立つ理論であることを実感しました。
営業成績をもっと上げたい方や、なかなか成績が上がらず困っている方に新たな気づきと成果に近づくための気づきを与えてくれるかと思います!!
■著者 佐藤義典さんについて
マーケティングコンサルティング会社、ストラテジー&タクティクス株式会社(東京・千代田区)代表取締役社長。経営者を主な対象にしたマーケティング戦略~実行のコンサルティングを行う。中小企業診断士、米国トップスクールMBA(ペンシルバニア大ウォートン校、2009年英FT紙MBAランキング全世界で1位)を保持。
通信会社、外資系メーカー、外資系エージェンシーを経て現職。マーケティング・営業の幅広い経験を持つ。著書にベストセラー「図解 実戦マーケティング戦略」(日本能率協会マネジメントセンター)、「新人OL、つぶれかけの会社をまかされる」(青春出版社)、「経営戦略立案シナリオ」など10冊を越える。
実戦的なマーケティング戦略の日本における第一人者。豊富な経験に基づく実戦的なマーケティングのコンサルティングは経営者の評価が高い。また、企業研修もわかりやすいと評判。読者約2万人の人気メルマガ、売れたま!の発行者としても知られる。
■本の構成と読みやすさ
■序章 “マーケティング脳”を鍛える
■第1章 あなたは何を売っているのか?―ベネフィット
■第2章 誰があなたの商品を買ってくれるのか?―セグメンテーションとターゲット
■第3章 あなたの商品でなければならない理由をつくる―差別化
■第4章 どのように価値を届けるか?―4P
■第5章 強い戦略は美しい
こちらの本のテーマは
『最低限の理論を、最小限のカタカナで、体系的にわかりやすく』
いわゆるマーケティング教本のように理論ガチガチの仕様ではない為、非常に読みやすい内容となっています。
また理論の実践・応用例を、ストーリー形式で表現されており、マーケティング初心者でもイメージしやすく、楽しく読み進めることが出来るかと思います。
2時間程度あれば読み切れるボリューム感かと思います!!
それでは本書の内容をご紹介!!
■序章 マーケティング脳を鍛える
・買い手の反対には必ず売り手がいる
何かものを買うときにあなたは、どのように思考を巡らせているか考えたことはありますでしょうか。
あなたが「買う」ときに、その逆には「売る人」がいる。
あなたが何かを買うときには、売り手にとってのマーケティングが起きていると本書は言います。
だからこそ、あなたが「買う」ことが誰かのマーケティングにとっての重要な要素になるのです。
「なぜ、このようなメニューになっているのか」
「なぜ、この店員がこのようなセールストークにしたのか」等
普段の私たちの購買行動の中で、商品やサービスに対して、少し注意を向けることによって、【マーケティング脳】が鍛えられ、いざ、自分がビジネスに使うときのネタやヒントが増えていくと言います。
何かを買ったとき、買わなかったとき、
「なぜ、この商品を買ったのか」
「なぜ、このお店で買ったのか」
と考えていくだけで、その裏にいるマーケティングを考えている人たちの
思考を紐解くヒントに気づけるのです。
あなたが営業マンである場合、なぜそのサービスや、商品を顧客が買うのでしょうか。
自分自身が「買う側」の立場にたって考えてみるだけで、営業成績UPに繋がるヒントが見えてくるかもしれません。
■第1章 あなたは何を売っているのか?―ベネフィット
マーケティングの基本4理論の、ひとつめは「ベネフィット」です。
ベネフィットとは「顧客にとっての価値」
あなたがドリルを売っているとすれば、顧客にとっては、ドリル自体ではなく、「穴を開ける道具」が価値となります。
これは買い手にとっては至極当たり前のことなのですが、売り手になった途端に多くの人が見落としてしまう観点だと本書は言います。
それでは腕時計の場合はどうでしょう。
腕時計の場合の「顧客にとっての価値」を考えるには、顧客が腕時計を買った理由を考えることが重要だと言います。
・安かったから・軽いから・電池交換の手間が省けるソーラー充電だったから・文字盤が大きくて見やすかったから・常に正確な電波時計が欲しかったから・結納返しに高級時計をもらった・私服にもスーツにも合うデザインだったから・あこがれだったブランドを自分へのごほうびに
これがすなわち、「顧客にとっての価値」でありベネフィットなのです。
腕時計を買った理由こそがベネフィットであり、何かを買うには理由がある。その理由を探求すればベネフィトにたどり着くと言うのです。
時計の基本的な価値は、もちろん「時間がわかる」ということです。
ただ、それ以外にも、これだけの「価値」を時計は提供しているのです。
■第2章 誰があなたの商品を買ってくれるのか?―セグメンテーションとターゲット
第2章では「セグメンテーション」と「ターゲット」の理論についての説明が進んでいきます。
「安い物が良い」「頑丈で壊れにくい物が良い」「おしゃれな物が良い」等
どんな製品であろうと、人によって求める価値がそれぞれ違う為、顧客を分けて対応をする必要があります。
顧客を分けることを「セグメンテーション」
分けられた顧客のグループを「セグメント」と呼びます。
セグメンテーションの方法にはいくつか方法がありますが
代表的なのは「性別」「年齢」「居住地域」などの人口統計的な基準で個人顧客を分類する、「人口統計的なセグメンテーション」です。
「20代女性を狙った商品」等はこのセグメンテーションを活用しています。
人口統計的なセグメンテーションに対して、心理や行動、ライフスタイルの違いなどをベースにした「心理的セグメンテーション」と呼ばれる方法もあります。
そのうちのひとつが以下のような、商品普及家庭において、早く買うか、遅れて買うか、買わないかということを基準にしたセグメンテーションです。
・革新者 一番最初に見つけて、使い始める人
・初期採用者 一般に広く普及する前に、使い始める人
・前期マジョリティ 普及し始めるころに、使い始める人
・後期マジョリティ ほぼ普及したのを確認してから、使い始める人
・遅滞者 一番遅れて、使い始める人。または使わない人
新しいiPhoneが出た瞬間に、Appleショップに一番乗りで買いに行く人たちもいれば、しっかり見極めてから手にいれる人もいますよね。
心理的セグメンテーションの例はこれだけの例に留まらず
先述の腕時計の例で言えば、以下のようなベネフィットとそれに対応したセグメンテーションが考えられます。
・そこそこ正確で低価格層
・正確で手間いらず層
・デザイン重視層
・ブランド重視層
このようにベネフィットを軸にしたセグメンテーションを「ベネフィットセグメンテーション」と呼びます。
理想的なのは、人口統計的なセグメンテーションと心理学セグメンテーションの両方をうまく活用することだと本書は言います。
例えば、
・20代男性、都心住み、独身の為可処分所得が高い。アクティブな性格で新しい製品は積極的に試す傾向にあるが、デザインには厳しい。
といった形でターゲットを絞りこみ、訴求すべき情報を考えるベースを作ることが大切だというのです。
■第3章 あなたの商品でなければならない理由をつくる―差別化
いざ、ターゲットを絞りこみ、商品を売ろうとしても
簡単には商品は売れません。
なぜなら、市場には競合がひしめき合っているからです。
マーケティングとは、顧客にとって価値を提供して対価を頂くことですが
市場には競合が存在する為、商品を選んでもらうには、競合ではなく自分たちの商品を選んでもらう必要があります。
その為に必要となってくるのが差別化です。
差別化戦略には以下の3つの方法があると言います。
・「手軽軸」
・「商品軸」
・「密着軸」
「手軽軸」とは、その名の通り、「手軽にすませたい」というベネフィットを求めている顧客に向けた差別化戦略です。
夕食を決める気分で言えば、「早く、安く、近いところで手軽に」といったシチューエーションが想像出来るでしょう。
「安くて早くてそこそこうまい」ファストフード店は、まさにこのベネフィットを提供しています。
「商品軸」とは「良い商品やサービス」で差別化するもので、
「とにかく良い物」を求めている顧客を狙った差別化戦略です。
夕食を決める気分で言えば、「ゴージャスに、美味しい物を」、「サービスの行き届いている、雰囲気の良いところで」といったシチュエーション等です。
高級フレンチレストラン等がこの差別化戦略をとっています。
「密着軸」とは、「顧客に密着」することで差別化するものです。
夕食を決める気分で言えば、まさに「いつもの店」という時でしょう。
自分の好みをよく知っていて、味付けを調整してくれるような飲み屋や
黙っていても自分の好み通りに握ってくれる寿司屋等がこの例です。
ノートPC市場では以下のように差別化が計られていると言います。
「手軽軸」
安くて品質がしっかりしたものを、宅配で提供する【デル】
「商品軸」
薄型ノートなど、最新技術を惜しみなく投入する【ソニー】
「密着軸」
『れっつらー』とも言われる熱狂的なファンを抱え、ユーザーのニーズに応える密着軸の製品を作る【パナソニック】
この3つの差別化戦略のうち、どの戦略をとるかというのは非常に大きな決断となり、この軸に沿って経営の多くの要素が決まると本書は言います。
自分の選ぶ差別化軸によって、絞るべきターゲットも決まっていきます。
差別化戦略を選ぶ時には、顧客の求める価値を考えて選ぶ必要があるのです。
■第4章 どのように価値を届けるか?―4P
顧客に価値を提供し、その対価としてお金をもらう為の具体的な手段。
価値を現実化するものが「4P」です。
【4P】
product(製品・サービス)
Promotion(広告・販促)
Place(流通・チャネル)
Price(価格)
例えば、野菜ジュースを買った時のことを思い出してください。
多くの製品が市場に溢れていますが、この時にどのようなことを考えるか、ということが4Pだと筆者は言います。
■製品・サービス
野菜ジュースを買う時、具体的にどのメーカーのどの野菜ジュースを買うか
■流通・チャネル
同じメーカーの野菜ジュースでも、コンビニ、スーパー、自動販売機等
色々な所で売っています。どこで買うか、というのが買い手の選択肢であり、どこで売るかというのが売り手の選択肢です。
■広告・販促
私たちは、その野菜ジュースをどうやって知ったのでしょうか。
CM、スーパーの店頭POP、インターネット広告等、色々な媒体を通して商品を知ることになります。
■価格
その名の通り価格をいくらに設定するかという概念です。
こちらもマーケティングにおいて非常に重要な要素となります。
何を売るか、どこで売るか、どんな情報で顧客に存在を知らせるか、どんな価格で売るか、これを具体的に決めていくのが4P戦略ということです。
また、4Pは一貫性が重要であると筆者は言います。
例えば「吉野家の牛丼」は製品が悪いか良いかはそれだけでは決められなく
あの価格で、駅前で、あのスピードで提供されるから素晴らしいのです。
吉野家の牛丼が高級デパートで3千円で売っていたとしても人気は出ないでしょう。
4P戦略と差別化戦略の一貫性も重要であると筆者は言います。
例えば、商品軸で展開する「Apple」のiPodで言えば
ターゲットはデザイン重視の先端層
パッケージも他社が無骨な工業製品というテイストであるのに対して高級時計のような仕様
広告も商品説明よりは、メッセージ性の強いもので、他社には真似できない割り切り方を実現しています。
販路はAppleストアと量販店がメインですが、定価で売られていることが多いです。
なんとなく、私たちは日々、購買行動をしていますが
裏にはかなり戦略的に設計されたマーケティングが存在することがイメージ出来たでしょう。
マーケティングに売れる、売れないはあっても
良い、悪いはあまりないと、筆者は言います。
しかし、ベネフィット(顧客にとっての価値)、ターゲット顧客、差別化戦略、4Pに一貫性があることは、良いマーケティングの必要条件なのです。
■第5章 強い戦略は美しい
第5章では、強い戦略は美しいというテーマのもと
東京ディズニーランドのマーケティング戦略の解説が具体的に進んでいきます。
マーケティング理論を、夢の国がどのように形にしていったのか
テーマ通り、非常に美しい戦略で私たちを熱狂させているんだなと、感動を覚えました。
内容が気になるは、是非本書で確かめてみてはいかがでしょうか。
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