映画『シカゴ』(2002)
こんばんわ、唐崎夜雨です。
日曜の夕べは映画のご紹介。
今宵ご紹介する映画は『シカゴ(原題:Chicago)』(2002)です。
殺人事件の法廷がエンタテイメントなミュージカルになる。謹厳実直な人が見たら卒倒するかもしれません。
映画『シカゴ』は、伝説的な振付師ボブ・フォッシー演出・振付による同名ミュージカル舞台の映画化です。映画の監督をつとめたロブ・マーシャルも振付師で映画での振付も担当しています。彼はボブ・フォッシーを尊敬しているとか。
あらすじ
1,920年代のシカゴのナイトクラブ。ヴェルマとヴェロニカのケリー姉妹のステージの時間ぎりぎりにヴェルマ・ケリーだけがやってきた。その日、ヴェルマは夫と妹のケリーを銃で撃ち殺して舞台に立っていた。
この日の舞台をみていたロキシー・ハートはヴェルマに憧れ、自らもダンサーとしてステージに立つことを夢見ていた。
フレッドというセールスマンが劇場主にコネがあるというので、いつの日か紹介されることを待ちながら、夫エイモスに隠れてはフレッドと浮気を重ねていた。
しかしフレッドはロキシーと寝るためにウソをついていたこと知り、ロキシーはフレッドを撃ち殺す。
刑務所でロキシーは、あこがれていたヴェルマと出会う。ヴェルマはロキシーが舞台を見ていたその日に逮捕されていた。しかしまだ人気スター気取りの彼女にロキシーは嫌悪感を抱く。
死刑になりたくはないロキシーは辣腕弁護士ビリー・フリンを雇い、正当防衛を主張する。弁護士によるメディア操作も奏功してロキシーは一躍世間の人気者となる。
これで無罪となり社会に戻れば、華やかなステージも夢ではないとおもっていたが。。。
なんだか文字だけ書き起こすとシリアスな作品に思われそうですが、コメディです。腐敗している司法とメディアと銃社会と、それらに載せられている大衆がここにある。これは1920年代に限ったことではないので、この年のアカデミー賞でも作品賞を取れた背景があると思う。
アカデミー賞作品
映画『シカゴ』は第75回アカデミー賞で13部門にノミネートされ、
作品賞
助演女優賞(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)
編集賞
美術賞
衣裳デザイン賞
録音賞
でオスカーを獲得したミュージカル映画です。
ちなみに、ノミネートで終わったのが監督賞、主演女優賞(レニー・ゼルウィガー)、助演男優賞(ジョン・C・ライリー)、助演女優賞(クィーン・ラティファ)、脚色賞、撮影賞、歌曲賞です。助演女優賞は二名がノミネートされていて、一人がオスカー獲得。
こうしてみると、この年の賞レースは『シカゴ』旋風といってもいいようです。
ちなみにちなみに、この年の長編アニメーション映画でオスカーを受賞したのは、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』でした。
素敵なナンバーの数々
映画の振付はロブ・マーシャルとなっていますが、基本的にはボブ・フォッシーのスタイルを崩してなくて、映画とステージによる見せ方の違いではないかと思います。
冒頭のナイトクラブで、ヴェルマが歌う『All that jazz』や、刑務所で殺人を犯した女たちが歌う『Cell Block Tango』などは、女性の性的魅力が力強く逞しく、そして美しく表現されている。
刑務所の女性殺人棟の監長ママ・モートンが歌う『When You're Good to Mama』も黒人のパンチのある体から突き上げてくるような迫力が満点です。
弁護士ビリー・フリンが中心となるシーンではコミカルな要素が強い。コミカルといってもブラック。メディアの情報操作を揶揄するような『We Both Reached for the Gun』、法廷がまるでサーカスのようなエンタテイメントに思えてくる『Razzle Dazzle』など。
一般的なミュージカルだとドラマ場面でそのままセリフの延長で歌や踊りがはじまる。
映画『シカゴ』ではこれらミュージカル部分は、ドラマ部分とは別にステージでのヴォードヴィルのように撮られているのがユニークなところ。
たとえば、ママ・モートンが刑務所の制服でロキシーたちに刑務所での心得を話している現実のショットに、ステージ衣装のママ・モートンがクラブで心得を歌にして歌っているショットが挿入される。
実在の事件がベースにある
映画『シカゴ』は、ボブ・フォッシーの演出・振付によるミュージカルの映画化と申しましたが、このミュージカル『シカゴ』は、モーリン・ダラス・ワトキンスという記者が書いた演劇『シカゴ』を原作としています。
モーリン・ダラス・ワトキンスの『シカゴ』は1920年代の実在の事件がもとになっています。やはり二人の女性がそれぞれに男を殺した事件です。
主人公のロキシー・ハートは、世論に訴える為もあって、かわい子ちゃん路線を歩いてますが、ほかの女性殺人犯たちはアダルト路線でカッコいい。まあでもちょっと下品な感じもあるところがいいね。
本作では女にとって男とは、踏み台にするか、役に立たないなら抹殺する対象でしかないかもしれない。