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【2024年最新トレンド】 メタボリックヘルスとは/メタボリックヘルススタートアップ

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💡「メタボリックヘルス」とは?

 2024/9/15号のニュースで登場したHello Insideはメタボリックヘルスサービス企業、ŌURAもメタボリックヘルス分野へとサービスを拡大するためにメタボリックヘルス企業Veriを買収しました。まだまだ耳慣れない「メタボリックヘルス」ですが、「メタボリックヘルス」とは一体どのようなものなのでしょうか?

 メタボリックヘルス (metabolic health) とは、代謝機能に関連する健康状態のことを指します。metabolicは「代謝の」という意味の単語で、メタボリックヘルスは代謝(metabolism; 身体が食べ物をエネルギーに変換するプロセス)と深く関わっています。メタボリックヘルスが良好であるときの身体は、エネルギーを効率的に使い、バランスの取れた代謝の状態を保つことができます。

 医学的な定義において、メタボリックヘルスが良好であるとは、①内臓脂肪(腹囲)、②血圧、③空腹時血糖値、④HDLコレステロール(善玉コレステロール)値、⑤中性脂肪(トリグリセリド)値が一定範囲内にあることです。

 高血圧や高血糖などは、心臓病や2型糖尿病、脳卒中などの発症リスク要因とされます。そのため、メタボリックヘルスを良好に保つことは、これらの疾患のリスクを減らし、生活の質向上や健康寿命の延伸に寄与します。

「メタボリックシンドローム」とメタボリックヘルス

 「メタボリックヘルス」でGoogle検索すると、「メタボリックシンドローム(メタボ)」に関連するwebサイトが上位に表示されます。耳馴染みのあるこの単語は、メタボリックヘルスに関連する疾病概念です。

「メタボリックヘルス」のGoogle検索結果

 メタボリックヘルスが良好な状態とは、内臓脂肪、血糖値、血圧、脂質などの指標が正常範囲内にあることを指します。一方で、メタボリックヘルスが悪化し、これらの指標が基準値を超えて健康を損なうリスクが高まっている状態を「メタボリックシンドローム」と呼びます。メタボリックシンドロームは心臓病や脳卒中のリスクを高める深刻な健康課題であり、アメリカ人の3人に1人がメタボリックシンドロームであるというデータもあります。

  医学的には、ウエスト周囲径、空腹時血糖値、血圧、トリグリセリド、HDLコレステロールの5項目について以下のような基準値が定められ、3項目以上においてその基準値を外れるとメタボリックシンドロームと診断されます。

<選択項目(5項目中3項目以上)>
・ウエスト周囲径 ≥102 cm(男性)、88 cm(女性)
・空腹時血糖値 ≥100 mg/dL
・収縮期血圧 >130 mmHg、拡張期血圧 >85 mmHg(年齢により変動)
・トリグリセリド >150 mg/dL
・HDLコレステロール <40mg/dL(男性)、50mg/dL(女性)

アメリカで広く使用されるメタボリックシンドロームの診断基準

 ちなみに、日本国内においては、日本内科学会などが異なるメタボリックシンドロームの診断基準を作成しています。こちらはウエスト周囲径に重点が置かれているほか、基準となる数値も異なります。

<必須項目>
・ウエスト周囲径≥ 85cm(男性)、90cm(女性)
<選択項目(3項目中2項目以上)>
・トリグリセリド ≥150 mg/dL または HDLコレステロール <40mg/dL
・収縮期血圧 ≥130 mmHg、拡張期血圧 ≥85 mmHg
・空腹時血糖値 ≥110 mg/dL

日本内科学会などによるメタボリックシンドロームの診断基準

 俗に「メタボ」などと呼んで単に体重の多いことや腹囲が大きいことを指すことがありますが、メタボリックシンドロームは本来、腹囲だけでなく血圧や血糖値などを含めた危険因子が重なっている状態を指します。特に日本では、腹囲(内臓脂肪の面積)が基準値以上であることをメタボリックシンドローム診断の前提条件としますが、ただ太っているだけでは「メタボリックシンドローム」にはなりません

 メタボリックヘルスは、「健康・正常」と「病気・異常」に二分されない、グラデーションのようなものであることが指摘されています。言い換えると、メタボリックシンドロームの診断基準に当てはまらなかったとしても、完全に健康であるとは限りません(代謝面で完全に健康なのはアメリカ人の12%にすぎないというデータもあります)。医学的には内臓脂肪、血糖値、血圧、脂質などの指標について基準値が定められていますが、これはあくまで目安にすぎません。また、メタボリックシンドロームの診断基準に当てはまっていることは心臓病や脳卒中のリスクを増大させる危険因子である一方、メタボリックシンドロームと診断されることそれ自体が直ちに深刻な健康への影響を引き起こす病気であるわけではありません。

メタボリックヘルスを改善させる生活習慣

 メタボリックヘルスを改善させるためには、食生活や睡眠、運動量などの生活習慣に気を配る必要があります。

・食習慣
バランスのとれた食生活がメタボリックヘルス改善の鍵になります。野菜類を多く摂る、コレステロールや飽和脂肪酸の多い食品に気を付ける、腹八分目を目指すなどがよく挙げられますが、現在の食生活と自身の健康状態を踏まえて、バランスのよい食事をとることが重要です。

・運動習慣
定期的に運動することが重要です。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動、日常生活の中で身体活動量を高めること(例:エレベーターの代わりに階段を使う)などが効果的です。

・喫煙習慣
喫煙は善玉コレステロール値の低下や高血圧を引き起こします。喫煙を減らすことや禁煙をすることによってメタボリックヘルスが改善される可能性があります。

・ストレス
慢性的なストレスはメタボリックヘルスを悪化させ、肥満の原因にもなります。よって、ストレスマネジメントはメタボリックヘルスの改善に重要な役割を果たします。

・睡眠
規則正しい十分な睡眠も、メタボリックヘルス改善に効果的です。睡眠不足は代謝を悪化させる原因となります。

メタボリックヘルスと女性の健康

 フェムテックが女性特有の健康課題や症状の現れ方などに見られる性差へのアプローチを試みていることについては、以前の記事で述べました。メタボリックヘルスに関しても、男性と女性で異なる影響が見られます。

 例えば、ホルモンバランスの変化は代謝に影響を与えることが知られています。女性ホルモンであるエストロゲンは、代謝を促進する役割を持ちます。そのため、更年期にこのエストロゲンが減少すると、脂肪が蓄積しやすくなる傾向があります。結果として、更年期以降には、女性のメタボリックシンドロームのリスクは高まります。

🏢メタボリックヘルス関連スタートアップ

 CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続血糖測定器。身体に装着することで、24時間グルコース値を測定できる小型デバイス)を活用したサービスを提供する企業を中心に、メタボリックヘルスに関連するスタートアップをいくつか紹介します。
 ちなみに、メタボリックヘルスで現在新しく注目を集めているのはCGMを活用したサービスですが、その他のウェアラブル端末、個別化された栄養指導、ダイエット指導などを提供する企業も増えていることが報告されています。

Levels (アメリカ🇺🇸)

 Levelsは、生活習慣と血糖値に注目したメタボリックヘルスプラットフォームを提供しています。血糖値を計測できるデバイスに加え、アプリ上で血液検査の結果や食生活、運動習慣を記録することができます。
 2024年8月には、シリーズAのエクステンションラウンドとして1,000万米ドルの資金調達を実施しました。

Signos(アメリカ🇺🇸)

 Signosは、健康的な体重管理に焦点を当てたメタボリックヘルスプラットフォームです。血糖値をリアルタイムでトラッキングできるデバイスと、AIを用いたアプリを組み合わせて、個別化された食生活のアドバイスを提供しています。
 2023年にはシリーズBで2,000万米ドルの資金調達を行い、勢いに乗っています。

DiaMonTech (ドイツ🇩🇪)

 DiaMonTechは、従来のCGMより侵襲性の低い血糖値測定デバイスを開発しています。従来のCGMも痛みを最小限に抑える工夫はなされていましたが、マイクロニードルのパッチ型であったため、装着する際に多少の痛みを伴いました。一方、DiaMonTechのデバイスは、レーザーを使用して血糖値を測定するため、痛みを感じずにデバイスを装着することができるのが特徴です。

Veri (フィンランド🇫🇮)

 Veriは、血糖値と食習慣に注目したメタボリックヘルスプラットフォームを提供しています。CGMを活用してより健康的な食生活や生活習慣をユーザーに促し、アプリを通して個別化されたアドバイスを受けることも可能になっています。
 2024年9月、スマートリング「Oura Ring」を提供するŌURAによって買収されました。

Ease Healthcare (シンガポール🇸🇬)

 シンガポールで女性ヘルスケアオンラインプラットフォームを運営するフェムテック企業Ease Healthcareは、メタボリックヘルスと体重管理に特化したサービスElevateを始めました。CGMを活用したコーチングプログラムや、体重管理を目的とした薬の処方を受けられるプログラムなどが展開されています。

🗝️まとめ:メタボリックヘルスの現在と未来

 メタボリックヘルスの改善は、健康的な生活を送るために不可欠です。メタボリックヘルスとは、代謝機能に関連する健康状態のことで、適切な食生活、定期的な運動、十分な睡眠によって改善が期待できます。また、メタボリックヘルス改善の取り組みには、性差の視点も重要です。
 ここ数年で、メタボリックヘルス分野のスタートアップ企業は増加しています。スタートアップ企業が開発する新しいテクノロジーやサービスは、より個別化されたメタボリックヘルス改善のためのアドバイスを提供し、より多くの人々のメタボリックヘルスの維持・改善が期待できそうです。

📎おわりに

 本記事をお読みいただきありがとうございました。

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🧩おまけ:日本の若年女性の「やせ」とメタボリックヘルスに関する考察

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