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マスクと身体〜制限を楽しむ〜

人にはいくつか穴がある。
目、耳、鼻、口、生殖器、肛門。
エネルギーを取り込んだり、
不必要なものを出したり、
遠隔受容器であったり、
どの穴も生命活動を営む上で大切な役割を果たしいる。

ニューノーマル。新しい生活様式。ポストコロナ社会。
これまで通りの活動ができない世の中で、
身につけるものとして推奨され、義務となりつつあるマスク。

けれど、長い人類の歴史の中で、
下の穴を隠す衣類や下着のように、
マスクはまだ、顔の穴には馴染んではいない。

マスクは、口を覆う。
自分の中から出ていく、
汚いとされてしまうエアロゾルを飛ばさぬように。
そして、「からだ」から発する言葉も届きにくくなる。

マスクは、鼻に被さっている。
得体の知れぬ大きな飛沫を吸わないように。
まとわりつくフィルター内の空気は、生暖かくどんよりとし鬱陶しいと感じることがある。
まだ、マスクの内側は鼻腔の拡張とまではなっていない。

マスクは、耳を圧迫する。
口と鼻に充てがわれた布が落ちていかないように。
ひっかけられたゴムの張力は、
顔や顎もこわばらせ、まばたきや唾液も減らす。

そして、マスクは、表情を隠す。
口角や顔の筋肉を包み込み、
直感的に相手の気持ちを汲み取るのが難しくなる。
そして自分の素性も分からなくしてしまう。
けど、視覚的に訴えるマスクは、実際に出かけ、人と会い、繋がるための免罪符のようにも機能する。

1枚の布地と「からだ」との関係性。
まだまだマスクは完璧ではないし、長い目でみれば人体とマスクの付き合いは始まったばかり。

制限された中で、生活を楽しむことのきっかけを、フェルデンクライス の学び通して「からだ」から探っていきたい。

生命体として「ひと」は生きている。

今こそ神経系の声に耳をすまし、「からだ」の調整力を引き出して、

大切な暮らしをみつけていこう。


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