前田華郎著(2019)『痛み、副作用、後遺症のない治療 「がん活性消滅療法」という選択』PHP研究所
薦められて読んでみた
わたし自身が癌患者であることから、知人に薦められたのでkindleで購入し読むことにした書籍です。
わたし自身は今のところ多くの病院で行われている標準治療と呼ばれているものを実施しており、現在は分子標的薬を服用し続けることで、癌の成長は現状維持の状態にあります。
本書では「副作用も後遺症もない」という謳い文句があり、確かにわたしも自分が癌になった後には沢山の「がん」と名のつく本や資料、ネット記事までくまなく読んだ。そして、それらの薬や処置が癌の何に作用して症状が改善するのかというところまで自主的に勉強しながら、自分なりの判断をしてきている状態です。
本書を読むと、基本的に以下のような対処法による治療だと感じる。
一つは癌の特定。これはいわゆる癌の遺伝子や標本を収めたプレパラートを癌患者に近づけると、患者の体内のがん細胞と共鳴して筋力の遅緩が発生し、それを指でつくったOリングの感触で把握するというものらしい。金属棒を利用するらしいが、その指し示す箇所でどの箇所に癌があるのかを発見できるそうである。本書ではMRIやPET以上の発見感度であるかのような記述が目立つが、このへんの原理がわからない以上、評価のしようがない。
もう一つは、癌がある患部に対してそれを挟むようにマイクロ波を当てるというもの。確かにマイクロ波を当てると熱に変化することになる。これを患部の前後から照射すると、マイクロ波に共振すれば大きなエネルギーになり熱に変わるだろうし、マイクロ波が干渉しあえば必然的にエネルギーは低下する。また、照射するマイクロ波の位置を多少変化させると前後の波の位相差が合成され、その波形は複雑な形になり、いずれにしても熱の強弱ということになる。
詳細な仕組みは知らないが、少なくともマイクロ波の照射装置が2つあるとすると、同一周波数でない場合は、合成された波が複雑に変化するので、ある意味マッサージのような効果を表すだろう。その意味では、これらの作用の詳細と原理についてザクッとした内容しか記されていないので、今のところは温感と照射量、照射周波数の違いによる効果としか言えないのではないだろうか。
俗に癌は熱に弱いなどという他の主張もあり、42度をこえるお風呂にじっくりつかるなど様々な説があるが、これも賛否ありそうである。この温かい処置ということで、著者も温熱療法の効果について有効性を感じ取ったらしい。
個人的には電磁気学を職業としていたので、マイクロ波含め電波のプロであるので、本書の中の肝だと思うが、癌に対して特定の周波数が関係するのか、それともその周波数帯であればある程度特定のピンポイントな周波数で無くても良いのか、患部を挟む前後2つのマイクロ波は、同一周波数でその位相はどう管理しているのか、それとも違う周波数で干渉させ複雑な波形を患者の体内に合成させるのか、照射する電界強度はどのくらいか、などなど全く語られていないので、判断のしようがない。
効果が目覚ましくあって、驚くくらいに回復するのであれば、医師もひとりの研究者であるわけだから、大学などの研究機関と共同で、治癒するためのメカニズムの研究やその原理を解明することがなされるべきであり、そのへんの働きかけまでは示されていないため、微妙な理解にとどまっている。
もちろん、本書の後半に癌が改善された事例が多数掲載されているが、それらが確かに改善されるというのであれば、やはり改善する原理の解明がまずは大事かと考える。
その意味で、微妙な読後感がした次第である。
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