【FIRE卒業】こんなセミリタイアは確実に失敗する 原因と対策
はじめに:薄れつつあるFIREブーム
一時期のブーム(2020~2021年ごろ)ほどじゃないですが、FIREを目指してる人は相変わらず少なくないと思います。
人々が憧れる人生の成功者像の新しいカタチの1つって感じですよね。
2024年に始まった新NISAがそのブーム再燃のキッカケになるかもしれません。
【FIREとは?(念のため)】
Financial Independent Retire Early の略。
「経済的な自立」による「早期リタイア」の意。
大々々多数派の人が好きでもない仕事を嫌々してるはずで、そんな退屈でストレスフルな労働からの解放は非常に魅力的なんじゃないでしょうか?
いつしかのNewsPicksの広告が炎上したアレからも明らかですね。
(まだ言います)
そんな輝かしく見える憧れのFIREですが、その実態は夢に見たような素晴らしいものでもない可能性があります。
これはFIREそのものの魅力の問題って言うよりも、達成した人の方の問題です。
つまりやり方によって成功にも失敗にもなりうるリスキーなものってこと。
そこでこのノートではFIREを失敗させてしまう原因を、大きく2つの要素に分けて解説します。
うっすらとでもFIREを意識してる人は今後の参考にしてください。
【このノートでわかること】
①FIREを失敗させる要因2つ
②FIREを目指す前にするべき準備
FIRE失敗の要因1 計算ミス
1つめの失敗パターンが資金不足によるFIRE生活からの脱落です。
完全に脱落しないまでも、ギリギリの運用になっちゃって気が気じゃないような状態もこれに含まれます。
悠々自適で将来に何の心配もないレベルのリタイア生活じゃなきゃ、仕事してるストレスの方がマシですからね。
必要資産の計算方法
こんな状態に陥ってしまう要因は必要資産額の計算ミスです。
いくら必要なのかを慎重に試算しないと、生活費が超ギリギリまたはショートしてしまいます。
一般的には4%ルールに基づいて資産額を計算します。
生活費が資産総額の4%以内になるように資産額を準備する必要があるってことです。
逆に毎年の生活費の25倍の資産が必要とも言い換えられる。
このルールに基づくと、年間の生活費を0.04で割った数字(=25倍)が必要な資産額になります。
仮に年の支出が300万円の場合、必要な資産は7500万円です。
因みに何故4%かって言うと、代表的なインデックスファンドへの投資であれば、税引き後で年平均4%くらいは投資リターンを期待できるからです。
また実際にそのペースの取り崩しなら高確率で資産は枯渇しないって研究もあります。
なので、この程度を確保すれば(少なくともこれまでは)安心です。
計算が狂うベタな要因
ただこの計算には大きな大きな穴があります。
「今この時点での支出額」がベースであり、今後の生活費の変化を織り込んでないからです。
最もわかりやすいのが物価の高騰・インフレです。
同じ生活のままでも、その単価がインフレによってジリジリと上がっていきます。
デフレの時期もあることを考慮して、控えめに平均1%の物価上昇としても、20年後には支出が約22%も増加するんだからバカにできないね。
また医療費や介護費などコンディションの変化によって、今まではかかってなかった支出が追加される可能性もあります。
これは親兄弟なども含み、自分自身に限りません。
FIREそのものもリスク要因
そして何よりも大きな変化がFIREそのものです。
灯台もと暗しですが、実に巨大な盲点になってます。
フルFIRE(完全なリタイア)となれば、これまで仕事で失ってた平日の日中約4~50時間が丸々フリーになります。
そのポッカリと空いた穴(暇)を埋めるのに、FIRE前には無かった新たな使い道が発生する可能性は大です。
もう1つFIREに関連した変化があって、それはリバウンドです。
このワナにハマるパターンもかなり多いと思います。
FIREを最速最短で達成する方法は生活レベルのダウンサイジング。
収入アップで資産の増加スピードを上げるのも重要ですが、必要資産は支出額ベースなので、浪費しててはなかなか達成には近付けません。
「FIRE達成のために何をすべきか?」って聞かれたら「節約しかない」って答えます。
低コストライフが当たり前になってれば問題ないですが、FIRE達成のための一時的な頑張りの場合はキケンです。
永久に息を止め続けるのはムリなので、反動で支出が増加してしまえば計算は一気に狂います。
まさにダイエットのリバウンドとおんなじことっすね。
FIRE失敗の要因2 理想と現実のギャップ
もう1つが精神的な問題によるFIREからの脱落です。
お金の面で問題なくても、心の面でFIRE生活に耐えられなくなるパターンってのもあります。
FIREブームの後半になって、FIRE卒業ってワードをSNSなどでチラホラ見掛けるようになりました。
このパターンこそがまさに理想と現実のギャップによるFIREからの脱落です。
「せっかく達成したのに自ら辞めちゃうなんて勿体ない」って思うかもしれませんが、本人にとっては辞める方が合理的なんよ。
なぜあんなにも頑張って到達した夢のFIREを卒業してしまうのか?
その理由は人により様々でしょうが、ザックリまとめるなら自由な生活に退屈するからです。
好きな時間に起きて一日中ゲームやYouTube、マンガなど好き放題やって過ごす。
こう聞くと何とも魅力的で羨ましい生活に見えるでしょう。
毎日がぼくなつ!って感じ。
ただそれが本当にサイコーなのは最初だけです。
毎日のように夢のような生活を繰り返してると、いずれ飽きてしまって何も感じなくなります。
(しかもこの倦怠期がけっこう早いうちにやってくる)
夏休みが輝いて見えるのは、仕事や学業に忙殺される灰色の日々があるからこそ。
喜びを実感するためには、何に比べて楽しいのか、その対比・コントラストが不可欠なんです。
とりあえず仕事を辞めること・自由になることを目的にFIREを目指してる人も多いと思います。
冒頭でも言ったとおり、仕事にポジティブな感情を抱いてない人が多いですからね。
日々ネガティブな感情が積み上がってくので、FIREを達成するまでモチベには事欠かないはずです。
無能な上司や仕事しないオジサン、ブルシットジョブなどが常に怒りの炎に油を注いでくれますからね。
ただいったんリタイアしてしまえば、そういった感情はすっかり消え去ってしまいます。
実際に体験していた時ほど鮮明に思い出せないですし、人間は記憶を美化するので、「それほど悪くなかったかもしれない」なんて思うことも。
そうなると「何をあんなに必死に辞めたかったんだろ?」となって今の生活のありがたみはより薄れていくってわけです。
FIREに失敗しないための準備
念願のFIREが失敗に終わらないようにするために、必要な準備について解説します。
計算ミスと退屈の問題は分離してるようで、実は相互に関係しています。
間違いの無い必要資産額の試算
まず資金ショートを起こさないようにするために、将来の生活費の変化を慎重かつ正確に見込んでおく必要があります。
現時点だけで判断するのは非常にキケンです。
とは言え未来のことなんて正確に予想できない。(できたら神になる)
そこで最もシンプルな方法が、算定方法をよりシビアにすることです。
標準的な4%よりさらに厳しく、3%や2%で算定すれば機械的に余裕が生まれます。
試算したより多くのリターンがあれば、その余剰が貯蓄となって不測の事態や将来の生活費アップへの備えとなります。
S&P500への長期投資なら7%は期待できると言われてるので、2~3%で計算しておけばかなり控えめで安心感があるでしょう。
ただ当然のことながら厳しく試算するほど必要資産額は大きくなってFIRE達成は遠退きます。
先ほどの年間支出が300万円の人の場合は、3%にすると9000万円と1500万円も必要額がアップ。
また余剰が不測の支出をカバーしきれるとも限らないので、万全とは言えません。
なので、結婚、子供、教育、病気や介護など支出増になるライフイベントをある程度は見込んで、生涯のトータルコストを試算しておく必要はあるでしょう。
また健康を意識した生活を今から送ることで、そのコスト増を抑えやすくなるはずです。
何のためのFIREかを考える
そしてもう1つFIREしたい目的をハッキリさせることです。
失敗要因で解説したとおり「辛い仕事を辞めたい」はオススメしません。
オススメしないてかフツーにダメ。
FIRE・リタイアそのものは目的じゃなくてあくまで手段でしかない。
達成して手に入れた自由な時間で何をしたいかを考えましょう。
「何かをしたくない」じゃなくて、能動的にしたいこと。
ちなみに先ほども言ったとおり、自堕落に生きるのはすぐ飽きるので、「ダラダラ」とかはしたいことにカウントしちゃダメです。
自分で実際にやってみるまで信じられないと思いますが、ほぼ確実に心が〇にます。
憧れは憧れのままにした方が良い。
ビジネスを始めたり、旅行三昧などライフスタイルに大幅な変化がある場合もリスクに備えた防衛費や出費増など生活コストは大きく変わります。
このゴール(FIREの目的)から逆算して、その後の生活と必要資産を計算してくのがベストです。
まとめ
FIREに失敗する理由についての解説でした。
大きく分けると要因は以下の2つです。
【FIREに失敗する理由】
① 必要資産の計算ミス
② 退屈でメンタルが崩壊
ベーシックなFIRE計画の場合、必要な資産額は今の生活費から計算します。
ただ年齢を重ねるごとに医療費などは増えていきますし、不測の事態は他にも起こるでしょう。
そもそもFIRE自体がかなり大きな生活の変化なので、その影響も考慮しなきゃいけません。
その他にも読める範囲は可能な限り正確に見込んで算定しておきましょう。
その一方で完全な予測や完璧な計画なんてものが存在しないことも認識しておくべきです。
お前は神か?(出川)
その前提のもとで読み通りにならなかった場合にリカバリーできるようにバッファを入れておくと安心です。
もう1つ非常に大事なことは、そもそも何のためにFIREするのかを明確にしておくことです。
FIREはあくまでも手段なので、その手段を使って何がしたいのかを考えましょう。
何を「したくないのか」ではありません。
特にやりたいことは無いけど、仕事からはどうしても逃れたい的な強い願望がある人もいるかもしれません。
そういう場合はバイトなり何なりして過ごす、ゆるサイドFIREが最適解かな、と。
退屈し切ることもないですし、フロー収入があることで変化に対応できる安心感があります。
いずれにしろ達成だけにフォーカスするFIREは遅かれ早かれ確実に失敗します。
ずっと働かないでも何とも感じないでいられるのは、ごくごく一部の生物として故障してしまってる人間(かすら怪しい?)だけです。
なのでポジティブな目的があるか、自分はホントにFIREを目指すべきか、長期視点で考えてみてくださいな。
てなとこで。