曼珠沙華来世こそ女に
散々散歩 瓜
散歩途中
最寄りのブックオフ
カートに100冊くらい
妻が私の本
勝手に売ってる
ダッシュでカウンターへ
半径2mで
妻ではない女
私の本ではない本と
分かった
それくらい
よく似ていた
あと少しで声出してた
ホントに危なかった
分かってから
女を見直しても
やはり似ていた
女は女で私を一瞥
そりゃそうだろう
変な男が猛ダッシュで
近寄ってきたら
店員は我関せず
すごすご買取スタート
チャールズ・ブコウスキー
『町でいちばんの美女』
嘉村礒多
『業苦/崖の下』
島尾敏雄
『妻への祈り』
ちょっと見ただけでも
私の好きな3冊が見えた
似たような趣味嗜好
本当に
この女のものなのか?
もしかしたら
あちらの夫のじゃ?
やっぱり黙って
売られているのかも
憶測は広がる
100円小説の棚から
カウンターに注視
さっきの興奮のせいで
嫌な動悸がする
それにしても、、
妻が勝手に
夫の大切な本売るなんて
俄かに信じ難いだけに
総毛立った
でも
なくはない話
普段は無関心装いつつ
やりかねない
捨てるのではなく
二束三文でも売る
だが、、
果たしてうちの妻なら
売るだろうか?
否、即捨てるはずだ
みみっちいところがなく
やる時はバッサリやる女
そう思った瞬間
はたと振り返った
一体全体私は
妻の何を知っているのか
夫の知る妻など
氷山の一角の一点ではないか
妻、、、女とは
そういう生き物ではないか
空恐ろしい心地がした
そこで私は
妻そっくりのあの女を
あらためて眺めた
女は女で
思ってるかもしれない
夫かと思った
半径2mで
夫によく似た男だと分かった
好きに生きて
家庭を全く顧みない男
もううんざり
腹いせに
売ってやる
ざまあみろだ
でも心臓止まるかと思った
勢いブックオフに来たのに
夫に見つかったなんて
泣くに泣けない
死ぬに死ねない
あぁ〜よかった
、、にしても
そっくりだったあの男
なんで近寄ってきたのかしら?
私に話しかけようとした?
まさか
もしかしたら
奥さんかと思ったのかしら
だとしたら
あちらの奥さんも
可哀想な女なんだろうな
読みもしない本に囲まれて
息の詰まる生活
強いられてるに違いない
どうしようもないバカな夫
男って本当にバカ
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