【詩】幽玄の息吹の中で

鏡の海で静かに舞う青い蝶は、
真夜中に語りかける影のように、
忘却の夢を手繰り寄せる。

その羽はガラスの心臓を宿し、
一滴の涙を空に散らすたびに、
時空の裂け目が笑みを浮かべる。

笑う時計は時を忘れ、
森の中で螺旋の階段を駆け上がる。

その先には、
時計仕掛けの鳩が針金の羽を広げ、
星の代わりに破れた頁を舞わせる夜空がある。

無数の影が手を取り合い、
無音の狂騒を踊る広場で、
砂の音が奏でる旋律が聞こえる。

そこには、無数の眼が眠り、
夢の端に漂う記憶が、
赤い糸で縫い合わされた空を駆け巡る。

夢の中の鏡は、無数の反射を生み、
反射は無限の入口を指し示す。

そこで見つけるのは、
音を吸い込む静寂の裂け目であり、
触れると消える言葉の端であり、
時間が溶けていく蜃気楼の影である。

昼の顔を持たぬ街は、
風に押されて流れる波のように、
誰かの瞳に映るたびに形を変える。

誰もいない路地には、
色彩を失った薔薇が咲き誇り、
その香りは甘く、
だが決して触れることのできない微笑みを持つ。

終わりなき階段を登る足音は、
どこからともなく現れ、
やがて消える。

それは耳を傾けると、
静寂の奥底で永遠を囁く。
だが、その言葉を聞く者は誰もいない。

ただ、廃墟となった記憶の中で、
幻影だけが生き続ける。

夜明けの鐘が鳴ると、
影たちは再び眠りにつく。

だが、その眠りの中には、
一度も目覚めたことのない記憶が残る。

それは決して見つかることのない、
光と影が交差する場所に、
幽玄の息吹と共に漂い続ける。

かつてそこには、
色を知らない虹が架かっていたという。

その虹を追いかけた者は、
永遠に彷徨い続け、
目に映るものすべてが反転し、
無限の循環に囚われる。

だが、その虹は決して消えることはない。
ただ、その終わりが存在しないだけである。

いつか、また、
無意識の底から浮かび上がるだろう。
新たな夢の中で、
無限の形を持つ鏡に映る何かを探し求めて。

（画像：DALL-E-3）

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