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食の都市伝説(4) 「白砂糖は体に悪いのよ!」 


 今週は食の都市伝説(4)、「白砂糖は体に悪い!」を妄想します。

「私にグラニュー糖を使えと言うの!」

 それは土曜日の昼前、場所は赤羽駅近くのレトロな喫茶店でした。

「グラニュー糖がどうして白いのか知ってて言ってるの?!」

 ほぼ満員の店内の視線を集めているのは、40代半ばぐらいだろうか、薄いピンクのカットソーにキャメルブラウンのワイドパンツという装いの、妙に場違いな女性だった。

「漂白しているから白いのよ! そんなものを食べろって、私に死ねってこと?!」

 
アルバイト店員は目を見開いてフリーズしている。

「デメララシュガーを持ってきてよ!」
「リザーブ・ロースタリーじゃ、黙ってても持ってくるわ!」

 近くの席でラフなファッションの主婦3人組が、首をすくめてヒソヒソと話している。
「デタラメシュガーってなんなのよ?」
「えっ、デパチカシュガーじゃないの?」
「デパペペシュガーよ。あんたたち知らないの?」
 

有色砂糖絶対至上主義者

 「白砂糖は漂白しているから白い、だから体に悪い」
 これは昔よく聞いた都市伝説です。現在では絶滅危惧種の都市伝説ですが、根強い信者が世界中に生息しています。女性に多いのが特徴で、その多くは精製塩、精白米など、白い食品は体に悪いという、1980年代にアメリカで流行した都市伝説を支持しています。

 彼女たちは、三温糖や黒砂糖、きび砂糖等、有色砂糖を体に良い砂糖、上白糖、グラニュー糖を体に悪い砂糖と分類します。

白砂糖はなぜ白い?

 ご存じでしょうが、白砂糖は漂白などしていません。原料を精製して不純物を取り除いて無色透明の結晶にするので、光が乱反射して私たちの目には白く見えているだけです。雪が白いのと同じ理屈です。

 上白糖の平均的な成分は、ショ糖分97.9%、転化糖1.4%で、グラニュー糖はほぼ100%ショ糖です。

    ショ糖分はブドウ糖と果糖が結合した二糖類です。転化糖はショ糖が酸や酵素によって加水分解された物です。ショ糖が分解されただけですから、成分はショ糖とまったく同じブドウ糖と果糖です。

白砂糖は体に悪いのか?

 上記のように、白砂糖は純粋な糖分です。微量の自然由来成分以外は何も混じっていません。もちろん、体に悪い成分など含んでいません。一部の有色砂糖絶対至上主義者が主張する【塩酸を使って精製する】(これを漂白していると言っています)こともありません。

 【上白糖を食べると血糖値が急上昇して体に悪い】という説がありますが、それは上白糖だけを食べた場合の話です。一日に何回も、スプーンで上白糖をすくって、ムシャムシャと食べている甘党の方はご注意下さい。

 一般的には砂糖は料理や飲み物に加えて摂取します。料理に使う砂糖の量が常識的な量であるのなら、血糖値の上昇については白砂糖か有色砂糖かを重視するよりも、食事全体のバランスに気を配り、魚介類・豆類・野菜・海藻など、GI値が低い食品を組み合わせて食べることを意識した方がはるかに有益です。ただし、血糖値は低すぎても体に悪いのでお気をつけください。

白砂糖は、精製によってミネラルが失われている

 【白砂糖は精製する過程でミネラルが無くなってしまうので体に悪い】という説もあります。

 ミネラルが含まれていないという点においてはその通りです。確かに白砂糖にはミネラルはほとんど含まれていません。一方で、黒糖やキビ砂糖などはミネラルを含有しています。ただ、岩塩の都市伝説でも言及しましたが、「ミネラルは、どうしても塩・砂糖から摂取する必要はない」ということです。

 黒糖やキビ砂糖に含まれるミネラルは微量です。人体に必要な量のミネラルを砂糖から摂取しようとすると大量の砂糖を食べなければなりません。

 砂糖や塩からミネラルを摂取するように心がけるよりも、野菜・魚・肉・果物など、食品からバランスよくミネラルを摂取するように心がける方が健康的だと思うのですがいかがでしょう?

白砂糖かどうかより、他に気をつけなければならない事があるのでは?

 他にも、【白砂糖は骨を溶かす】と言う説がありますが、そんなことはありません。糖質が体内で分解してエネルギーになるときにビタミンB1やカルシウムが大切な働きをしています。そのため、ご飯やパンなど炭水化物を食べると、それを分解してエネルギーにかえるためのビタミンB1やカルシウムも相当量必要だということです。

    これは体の当たり前の仕組みで、決して、砂糖などの糖質が直接ビタミンB1やカルシウムを破壊するということではありません。ましてや、骨を溶かすなんてことはあり得ません。
 
 もし、砂糖を食べてカルシウムを消費し、それを補うために体が骨を溶かすということがあるとすれば、体重と同程度かそれ以上の量の砂糖を一度に摂取した場合でしょう。

    トランス脂肪酸の有害性と同じことで、食品の有害性は摂取量を抜きにして議論できません。それに、食べ過ぎて有害なのは白砂糖だけではななく、黒糖でもキビ砂糖でも同じです。

 何度も同じことを書きますが、「水も塩も砂糖も、取りすぎると体に悪い」のです。だから「砂糖は体に悪い」とは飛躍しすぎです。尚、「コーラは骨を溶かす」という都市伝説は「砂糖は骨を溶かす」から派生したものです。

 他に【白砂糖を食べると虫歯になる】という説(説と言うのもバカらしい)もありますが、黒糖なら虫歯にならないのですか? 何を食べても、ちゃんと歯磨きしましょうよ。

それはDNAに刷り込まれている?

 巷に溢れている「白砂糖は体に悪い」説の大半は、砂糖を取り過ぎた場合の悪影響について言及しています。それは白砂糖だけではなく、黒糖であっても同じことなのです。白砂糖はただ白いというだけで悪者に仕立て上げられています。

   なぜそんなことになるのか、よく考えてみました。どうやら、日本人に限らず、白=人工的で、茶色=自然という刷り込みがあるようです。

    例えば、家電に白い製品が多いのは人工的な産物の良いイメージを利用していると考えられます。自動車もしかりです。機械製品に関しては、白は科学の象徴として安全性のシンボルになります。

   逆に、食品に関しては白は人工(科学)的イメージでマイナスに働きます。一方で、茶色は土を連想させ、食品に関してはプラスに働きます。   

結論

 味が好きだからキビ砂糖・黒糖を使う。それならば何も問題はありません。ただし、キビ砂糖だから食べ過ぎても安全ということではありませんのでご注意を。

    白砂糖・精製塩・白米は体に悪い説は、人類のDNAに刷り込まれた白=人工的、茶色=自然 のイメージによるものです。それは、日本人には白米よりも玄米(茶色)が自然で健康的だというイメージ(実際に栄養価は違います)があり、欧米人には白いパンよりも全粒粉の茶色いパンを良しとする風潮があることで明白です。

  皆さんは、スーパーに白い卵と茶色い卵(赤玉)が同じ値段で並んでいたら、茶色い卵を買いませんか?

青葉台のデメララ女

    目黒区青葉台のスペシャルな外資系コーヒー店では、どこからか現れた意識高い系風女性が「白砂糖は体に悪いのよ」と、微笑みながら耳元で囁くらしいのです。囁かれた人は半狂乱で「デメララシュガーを持ってきて!」と叫ぶらしいですよ。

    信じるか信じないかはあなた次第です。

   勝手にご飯映画祭④は、リオネル・ジョスパン元フランス首相の母の実話から生まれた感動作「92歳のパリジェンヌ」のリオレ(riz au lait)を妄想します。
▶なぜ リオレなのか?
▶老いるとは?
▶自分らしく人生を終えるとは?
▶その時、家族に何ができるのか?

 

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