山下座郎

大阪在住の食文化妄想家。 前職は食関係の公務員。 お仕事のご依頼はletussitdo…

山下座郎

大阪在住の食文化妄想家。 前職は食関係の公務員。 お仕事のご依頼はletussitdown@gmail.comまでお願い致します。

最近の記事

「鬼も十八、番茶も出花」 食のことわざ④

   昔から「暑さ寒さも彼岸まで」と言います。もうそろそろ暑さも峠を越えると信じて耐えるこの頃です。今週は時代遅れのことわざを紐解いて妄想する「食のことわざ」の四回目です。 男子、厨房に入らず  もはや時代遅れも甚だしいことわざです。「男は料理なんてしてはいけない」という意味だと言われていますが、本来の意味は違うようです。 このことわざは「君子、庖厨を遠ざく」という孟子の言葉が基になっています。君子とは高位の人・高官のことです。庖厨は厨房です。  孟子が言った

    • 悶々モンドセレクションと 「からあげグランプリ 」

       世の中には、よく見かけるし、なんとなくは分かる。でも詳しくは知らない。そんなことがよくあります。詳しく知らなくても別に困らないので調べもしないのですが、調べてみると面白い。モンドセレクションはその代表的存在です。 テレビなどのメディアではモンドセレクションを「食のオリンピック」や「食のノーベル賞」と紹介しているようです。なんだかとてもすごい賞らしいのですが、テレビなどマスメディアでは絶対にモンドセレクションについて詳しくは説明しません。いや、できません。  モン

      • 京都と東京の御膳汁粉の関係

         タイトルを見て何の話かピンときた方はなかなかの通でいらっしゃいます。そんなあなたにお尋ねします。なぜ関東では善哉じゃなくて「お汁粉」なのでしょうか? これが説明できる方はそういらっしゃらないはずです。 関東の汁粉  関東では汁気があれば汁粉、汁気が無ければ善哉です。もっと詳しく分類すれば、こし餡で汁気があれば「御膳汁粉」、粒餡で汁気があれば「田舎汁粉」と言います。そして汁気がない物、つまりお餅と餡(こし餡・粒餡は問わないようです)だけだと「善哉」です。 関西の善哉

        • 勝手にご飯映画祭②      「アイ・アム・サム」のパンケーキ      

           はい、またお会いしましたねー。皆さん、映画はお好きですか?  邦画が好き、洋画が好きなんて好みはあっても、映画が嫌いだという人は少ないでしょう。 ところで、SF、ラブストーリー、ホラー、時代劇…いろんなジャンルがありますが、ジャンルにかかわらず多くの映画に登場するシーンがあります。それは食事シーンです。なぜ多くの映画に食事シーンが登場するのかといえば、映画は「人」を画くもので、そのためには食事に触れない訳にはいかないからです。 作品によって重要度はさま

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        「鬼も十八、番茶も出花」 食のことわざ④

          京都の歴史と京ことば

           「大阪弁と京ことば」の続編にリクエストをいただいたので、今回は京ことばを歴史をからめて妄想します。例によって筆者は言語学者でも歴史学者でもありませんので、今から書くことはあくまでも筆者の友人・知人からの受け売りと妄想です。あくまでも私見ですので予めご容赦下さい。  大阪弁が大きく三つに大別されるように、京ことばもいくつかに分けることができます。大きくは、御所ことば(女房ことば)と町方ことばに分けられるのですが、町方ことばはさらに、中京ことば・西陣ことば・花街ことば・農家こ

          京都の歴史と京ことば

          その名前には理由があります②苺煮と従妹煮の巻き

          どんな物にも名前があります。もちろん料理にも。そして料理名には理由があります。今週は「苺煮」と「従姉煮」の名前を紐解きながら妄想してみます。 苺煮 いきなり申し訳ありませんでした。上記は農水省の郷土料理を紹介するページに掲載されている「苺煮」の説明です。あまりにも紹介できる内容が少ないので、懸命に字数を稼いだ外注ライターさんの苦しむ様子が目に浮かびます。 重複しますが、苺煮は青森県八戸市とその周辺の三陸海岸の伝統料理です。料理名は「煮」ですが実際は

          その名前には理由があります②苺煮と従妹煮の巻き

          食の都市伝説(3)「新鮮だー! 生で喰えー」

          今週は、食の都市伝説の三回目、「新鮮な鶏肉は安全だ」と「馬は体温が高いから安全だ」を妄想します。   ハーブチキンささみ寿司    上の食中毒事件は、2016年に東京都江東区青海で開かれたイベントで起こりました。発症したのは49人ですが、同じ寿司が1万3924食も販売されました。発症した人を「運が悪い」という人もいますが、食事のたびに「運」を試されてはたまりません。  問題の寿司には次のような宣伝文句がつけられていました。「鳥取・大山からハーブのみを食べて育ったハー

          食の都市伝説(3)「新鮮だー! 生で喰えー」

          誰も言わないから、日本が捕鯨をやめない本当の理由を言っちゃいます!

             今年の4月初め、山口県下関市で、30年ぶりの新造捕鯨母船「関鯨丸」がお披露目されました。捕鯨母船とはキャッチャーボートが捕獲した鯨を船内に引き上げ、解体から冷凍・保存処理までを行う大型船です。  遠洋捕鯨は、鯨を探す探鯨船、ロープ付きの銛を撃ち出す捕鯨砲を搭載しているキャッチャーボート、捕獲した鯨を母船まで曳航する曳鯨船、鯨を解体する母船からなる船団で行います。昔はさらに、母船が解体した鯨肉を冷凍保存する冷凍工船、鯨油を保存する油槽船なども必要でした。 今

          誰も言わないから、日本が捕鯨をやめない本当の理由を言っちゃいます!

          ワカメやコンブは海草ではありません!

           多くの外国人観光客が日本をエンジョイしています。YouTubeを見ていると、彼らはお寿司とラーメンが大好きなようです。喜んで食べてもらえるのは見ていても嬉しいものですが、欧米系の人達は、ワカメやコンブ、ノリをあまり食べないほうがいいので、そこだけが心配です。 海草は植物です  海草(seagrass)は文字通り「海」に生息している「草」です。草ですから根があり、葉と茎の区別がつきます。もちろん陸上の草のように光合成をし、花を咲かせて種子を作ります。なぜなら植物だからです

          ワカメやコンブは海草ではありません!

          大和ことばとガラパゴスで西の高校生探偵!

           「大阪弁と京ことば」が思いの外好評を賜り、奈良と兵庫の方言も書いて欲しいとリクエストをいただいたので、まず兵庫県の方言について書きました。そして今回は奈良の大和ことばを壮大に妄想してみます。 例によって、筆者は言語学の研究者ではありませんので、ここに書くことはあくまでも筆者の私的考察といつもの妄想です。何も裏付けはありません。正しいとも限りません。筆者の基本スタンスである「面白半分」ですのでご容赦ください。 大和ことばは県北だけ  奈良の言葉は大和ことばと呼ば

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          大和ことばとガラパゴスで西の高校生探偵!

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          阪急神戸線6駅限定「関西風東京弁」~兵庫県の方言~

             梅雨も明けて異常な暑さが続いています。ご機嫌いかがでしょうか? 先週の「大阪弁と京ことば」が思いの外好評を賜り、奈良と兵庫の方言も書いて欲しいとリクエストをいただきました。そこで、今週は兵庫県の方言を妄想してみます。※例によって、筆者は言語学の研究者ではありませんので、ここに書くことはあくまでも筆者の私的考察といつもの妄想です。何も裏付けはありません。正しいとも限りません。筆者の基本スタンスである「面白半分」ですのでご容赦ください。 西日本方言  この方言シリーズ

          阪急神戸線6駅限定「関西風東京弁」~兵庫県の方言~

          大阪弁と京ことば

           東京の人は筆者の話す言葉を「関西弁」だと言います。これがものすごく違和感があるのです。筆者は大阪弁(厳密に言えば摂津弁と河内弁のバイリンガル)話者なので、「関西弁ってどこの方言やねん?」ということです。  今週は大阪弁と京ことばについて妄想してみようと思います。  ※筆者は大阪弁や京ことばの研究者ではありませんので、ここに書くことはあくまでも筆者の私的考察といつもの妄想です。何も裏付けはありません。正しいとも限りませんのでご容赦ください。 関西弁ってなんやねん?  関西

          大阪弁と京ことば

          あなたは培養肉を食べますか?

             第90回アカデミー賞でゲイリー・オールドマンが主演男優賞を受賞した映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」(2018年に日本公開)をご覧になったでしょうか。第2次世界大戦中にイギリスとヨーロッパを救った英国首相チャーチルの決断を描いた映画でした。その優れた先見力は、1931年に発表したエッセー「Fifty Years Hence(50年後)」にも表れています。 同書でチャーチルは1980年代までに世界がどうなっているかを予想していますが、

          あなたは培養肉を食べますか?

          地元民がお伝えしたい「餃子の王将」やらなんやらのお話。

             餃子はお好きですか? 嫌いな人はまずいないでしょう。ラーメン、カレーとならんで外国にルーツを持ちながら国民食になった庶民の味ですからね。その餃子で、全国的にチェーン展開しているのが、京都発祥の「餃子の王将」です。今週は餃子の王将と大阪王将、鹿児島王将、そして色々とアレなお話を妄想します。 餃子の王将  餃子の王将は1967(昭和42)年に京都市の阪急大宮駅の近くで開業しました。1974年に株式会社王将フードサービスを設立し、全国に734店舗を展開しています(FC店

          地元民がお伝えしたい「餃子の王将」やらなんやらのお話。

          勝手にご飯映画祭1グリーンブック

           はい、またお会いしましたねー。料理が登場する映画はたくさんあります。その中で、登場する料理が何でもいいのではなく、その料理でなければならない映画があるんですねー。しかし、たいていの映画では、なぜその料理なのかには触れません。そこで、なぜその料理なのかに注目して映画を妄想するのが「勝手にごはん映画祭」なんですよ。初回は実話を基にしたアメリカ映画「グリーンブック」のフライドチキンを妄想します。 グリーンブック  第二次大戦後、アメリカが黄金期と呼ばれるほど好景気に沸いていた

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          勝手にご飯映画祭1グリーンブック

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          職務中にノンアルコールビールを飲まず 『食のことわざ③』

           各地で大雨が続いているようです。降らなくても困りますが、被害が出るような梅雨も嫌ですね。  今週は時代遅れのことわざを現代風に妄想する「食のことわざ」の三回目です。 家柄より芋茎 色んな意味で最近はあまり聞かなくなったことわざです。 「家柄」とは先祖から受け継いだ家の格式です。現代では死語と言ってもいいと思いますが、上流社交界では暗黙の了解になっています。  芋茎とは文字通り芋の茎なのですが、食品の場合は芋茎と書いて「ずいき」と読みます。芋茎は里芋やハスイ

          職務中にノンアルコールビールを飲まず 『食のことわざ③』