🚻「心理学の大家・キース E スタノヴィッチ著・私たちを分断するバイアス」を読んでの文

◎ この書「私たちを分断するバイアス」は、現代 政治的分断（保守とリベラル）が進む世の中に スタノヴィッチ博士（トロント大学 心理学名誉教授）が、一石を投じる意味で書かれた 書籍です。（政治的 以外でも当て嵌まる場合あり）

・今の政治的分断（対立）は、党派性バイアス（偏見・思い込み）でと いわれていて、自分の信念に基づくもの、そして 自分の帰属しているもの（集団）が正しい（良い）からくるもの であると、書かれています。これが アイデンティティ政治へと、つまり 部族政治と。

・党派性バイアスでの信念（党派でなくとも）では、 マイサイドバイアス（自分の経験から、自分の立場から、その方向に良い様に考える）があると、書かれています。

◎ この書で 私が注目したのは、人の信念 獲得でのことと、その影響（対立になりやすい）あと、マイサイドバイアスに どう対処していけばよいのかの 点です。
・以下 このことを書いていきます。
（※ は 私的意見）

◇ マイサイドバイアスが元である 直感信念（確信）は、認知エリート（専門家）だろうが、非エリート（一般人）だろうが、内省（熟慮）することなく 獲得されることが、殆んどといわれていると。（マイサイドバイアスは 知能レベルとは 関係ないと）
そして、自分の信念は 自分自身で考え選んだものと 皆思っているが、そうではないと。
周りからの影響が大きいと。
それから著者は、今の社会科学のエリート集団に マイサイドバイアスを排除できる思想の多様性はないと、言っておられます。
※ バイアスの盲点になっているです。
（自分では 自分の認知バイアス分からない。これは 他人の欠点はよく分かるが、自分の欠点は分からずと似たり）
・これは 困ったことです。いつまでも対立するだけ。
※ 解決には、時間といろいろな進歩が必要。

◇ アイデンティティ政治に関して、信念を持つ 保守とリベラルの違いは、遺伝子的違い、神経伝達物質の機能での違いもあると いわれています。
（脳科学・遺伝学）
スタノヴィッチ博士は、これからは、これらのこと 洗練されていくだろうと。
※ 学問・科学技術の発展に、期待 大です。
もちろん、そこへの投資も。
・そして、このことは マルクス主義とかでは、ほぼ不可能です。国家資本主義でも 行き詰まる可能性が大きいです。片寄った思想になりやすいので。

◇ マイサイドバイアスでの悪影響は、殆んど他者へ向かう とのこと。
※ 自分の考えと違う者への、押しつけ、非難、嫌がらせ、最悪 暴力へと。

◇ マイサイドバイアスのレベルは、その人の信念の強さ（意見の強さ）と比例すると。


※ サイコパシーとナルシシズムとも関係ありと、考えられます。
やはり、脳科学・遺伝学・生物学の知見、進歩は重要となります。

◇ 本書中、人間の集団信念（共同幻想的）のことが、説明されています。
・集団信念で、その損失（真実でなく 後で問題でる）よりも、集団結束する方が利得が大きいと。
（ベネフィット＞コスト）と。
・個人でも、マイサイドバイアスでの即時行為の方が、あれこれ考えるよりも
即時的に利益よくあるとの、調査結果があると。（あくまで 短期的）

※ なので 人はよく考えずに行為するもあるといえます。（全て ではない）

◇ 政治対立（党派性対立）では、各問題 争点より、集団アイデンティティ（帰属性・それでの存在証明）により分極化する場合が多い との、リリアナ メイソン・ジョンズ ホプキンス大学 准教授の論が、紹介されています。

◇ 本書中、政治対立に関連して バイアスの盲点があります。
そして、このバイアスの盲点は、専門家でもあるとのこと。
（社会学者、心理学者 等）
そして、社会学者・心理学者は、リベラル派が多いと。※（日本でも）
なので、その調査・実験、質問方法では、リベラル派 優位な結果が出てしまうと。
そのことで、質問方法を変えてみると、リベラル派の方が権威主義的と 出てしまうとのこと。
・だが、保守派の方が やはり権威的と相関するという、しっかりとした結果もあると 書かれています。

・IQの方は 一昔と違い、今では 保守もリベラルもそれほど変わらずが、一般的になっています。
（マイサイドバイアスの度合いも、それほど変わらないだろうと）

・それから、今のアメリカの大学は、アイデンティティ政治の支持者（※ 特にリベラル）に、なってしまっていると。
※ 中立的・客観的でないと。
特に、公的機関の大学では これは芳しくないことだと、スタノヴィッチ博士は訴えられています。

・あと、今の大学で リベラル派の意見に反する者には、教職員間で異端審問的ものが待っていると。
スタノヴィッチ博士、この様なことは、カール ポパーの反証可能性に反しており、よくないことだと言われています。
※ その通りだと思います。行き過ぎた 平等全体主義へ。全く違うもの・質のものまで、みな同じと なりかねない。
（差別と区別とは 違うもの）

◇ 政治的 党派性対立では、近年 分極化が進んでいると。
（ 左・右に極端に別れる、netでのフィルターバブル）
・このことでは、金銭的 利益よりも、何に価値を置くかも 大いにあるとのこと。
（例）原発問題→利便性か 危険性か
・環境問題→貧困層増やさずか 自然を守るか
しかし、個々の政策においては、個々人の考えは同じではないとの、調査結果があると。
（同じ党員で、一般人では）

支持政党がそうだから、その政策を支持というのも多いとのこと。
（米国、共和党・民主党 支持者）

◇ 集団アイデンティティは、マイサイドバイアスの源であると。
そして、集団アイデンティティは、論理的というより 感情的部分が多いと。
※ その通りです。集団バイアスで、太古からの人間 脳でのシステムで。
その方が生存していくには都合が良かったから。
そして、論は感情と結びつくと、強化される。（信念へ）

・このようなこと、マイサイドバイアスの考えは、知識量を高めることでは解決は難しいと。（著者）
（これは あくまで、政治的ことで）
・そして、政治党派では 認知エリートが非エリートを引っ張る形が一般的だと。（一般人はエリートの言うこと すぐに受け入れるが多い）
左・右 認知エリート（有識者的）間では、価値観の違いが非常に大きいと。（対立へ）

※ 逆に 価値観が同じ者では、一緒に行動したり、結婚したりに繋がりやすい。（性格・知能の違いはあまり関係ないとも。心理学上）

・このような、集団アイデンティティを引き起こす 党派性バイアスは、政党の選挙戦術、メディアのビジネス戦術からも大きな影響を受けると。
※ 戦術で、相手方の欠点を誇張して言う、対立を煽って庶民の関心を集める 等。（SNSで外国からの影響もあり）

◇ 党派性バイアスのことで、著者は 政党の各政策にも、疑いを持つこと必要だと。支持政党の政策にも 自分に好ましくないものは あるはずと。
そして 党派性、つまり部族主義だけで 何かを判断するな、意見を言うな的ことを主張されています。
※ このことは他のことでもいえます。
 （国・地域・民族・宗教・組織・業種）

◇ 党派性（バイアス）による アイデンティティ政治は、特定の集団（マイノリティ等）に 特権を与えるものであると。（日本にもそういう人たちいる）
・これは、キング牧師の 公民権運動のような、全体的としての平等ではないと。

・そして、誰しもが 何かのアイデンティティ（帰属性、自己の存在証明）を持つ と言う、学者もいます。
※ そうでしょう。
政治的で 一方的アイデンティティからの立場を認めると、特権的立場（特別身分）を認めると 同じことになると。
なので、理性的な（※ 客観的・俯瞰的・未来的）議論がいると、スタノヴィッチ博士はおっしゃっています。

◇ この書では、マイサイドバイアス低減のことで、別の立場の者（例・親 目線）に成りきってもらい、質問に答えてもらう、また 体験してもらう、があるとの、他の学者の実験法が紹介されています。
・結果、将来のことを、真剣に思うようになる。礼儀を守ること、大事と思うようになると。（子供のために）

◇ スタノヴィッチ博士は、マイサイドバイアス 修正・低減には、脱分脈化、言葉の切り離しイメージがいると おっしゃっています。
・これには、訓練がいると。

※ つまり、ある言葉から 他視点への知識・論へ繋げ考える。または、文を分けて矛盾がないか考える。
これには、あるレベル以上の思考力と、教養がいります。

・それから この様なことは、脳にかなりの負荷がかかると。（著者）
（※ なので、人はファスト思考が多いとなる。自身の仕事以外とかは）

・前の 脱分脈化の訓練は、大学が率先してすべきと。そして、大学は中立的・客観的視点を学生に、持たせる ところで あるべきと、スタノヴィッチ博士。
※ 大学でなくとも、必要と考えますが。（小さな頃からの 物語の読み聞かせ とかで）

◇ スタノヴィッチ博士 談、大学は 多様性 多様性といって、特定の方向へ学生を全て向かわせるのは、危険であると おっしゃっています。
※ 確かに、多様性が大事だからといって、何でもかんでも認める訳にはいかない。
表現の自由があるから、なに言ってもいい、というように。

※ 以上が、私たちを分断するバイアス を 読んでの文です。

◎ 最後に、キース E スタノヴィッチ博士は、心理学の大家で、批判的思考と分析思考を重視されてきた、認知科学の巨人です。（書籍 多数）
勉強になるところも多くあります。
あと スタノヴィッチ博士の教え子たちが、さらに 認知科学（心理学 等）を発展させることが期待されます。

そして、スタノヴィッチ博士の さらなる ご健勝をお祈り申し上げます。

（終）