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「科学者のエッセイ」3選 FIKAのブックトーク#33

こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。

今回のテーマは「科学者のエッセイ」。
…えー?そんなの難しくてつまんなくない?

いえいえ、そんなことはありません!
ユーモラスな本や詩情溢れる本など、気軽に楽しく読める本を3冊紹介します。




「物理学者のすごい思考法」 橋本幸士

世の中には物理学者と呼ばれる人種がいるのですが、その生態はあまり知られていません。
あなたの友人に物理学者がいるでしょうか?おそらく答えは「ノー」でしょう。
したがって、物理学者が織り出す究極の思考法は、世間によく知られていません。

まえがきより

広大な宇宙から極小の素粒子までを研究対象とする物理学者が、日常で起こるあらゆる出来事を「物理学思考法」で解決しようとするとどうなるか?

「うわ〜難しそう。読みたくないわ〜」と思うでしょう?

ところがこれが笑えるんです!
「物理学的思考法」とはこんな感じ!

  • スーパーで買い物をする時に人にぶつからないための最適な歩き方は「一筆書き」だという結論に達して、スーパーの平面図を書き起こしてルートを考える。

  • たこ焼きをできるだけ大きく作ろうとして、自身の重さで潰れないようにするため、昆虫の外骨格を参考に形を変えてみたら「それは鯛焼きや」と妻にツッコまれる。

  • ぼーっと雲を見ているうちにいつの間にか「多重ループ」について思いを巡らせていた。

物理学者、賢いのかアホなのかわかりません…
でも、私のような素人にも物理学の本質を分かりやすく教えてくれる本なんです。やっぱり物理学者ってすごい…!



「銀河の片隅で宇宙夜話」 全卓樹

天空のこと、原子のこと、数理や生命や倫理について…
物理学者が易しい言葉で解き明かしてくれる科学エッセイです。

いえ、科学エッセイというよりは、不思議な「お話」を読み聞かせてもらっているような気持ちになります。

海辺に佇んで、寄せては返す波の響きを聴いていると、「永遠」という言葉が心に浮かぶ。死と静止はおそらく永遠の安らぎではない。死してのちも万物が色褪せ崩れゆき、世界が無慈悲に年老いていくことを、熱力学の第二法則は命ずるのだ。

第一夜 海辺の永遠より

こんな詩的な文章で始まる一編では、太陽の巡りや月の満ち欠け、潮の満ち引きのリズムなどは決して不変なものではなく、何億年という時間のスケールで見れば変わっていくこと、現に一日の長さは一年に0.000017秒ずつ伸びていることを教えてくれます。

他にも「流れ星はどこから来るの?」「忘れられた夢を見る技術があるの?」「じゃんけん必勝法と民主主義の数理とは?」など、宇宙、原子、人間社会、倫理、生命という五つの分野で、不思議さと美しさに満ちた「科学夜話」をきかせてくれます。

寝る前のひと時、日常の喧騒を忘れて科学の詩情に浸ってみませんか?



「寺田寅彦 科学者とあたま」     寺田寅彦

物理学者であると同時に随筆家であり、芸術や文化にも造詣の深い寺田寅彦が、科学的精神と芸術的センスを融合させて書いたエッセイ集です。

何より彼は夏目漱石の門人として有名で、「吾輩は猫である」に出てくる物理学者の寒月君のモデルと言われています。そのせいか彼の文章はまるで漱石のようで、漱石好きの私にはたまりません!
理知的でユーモラスな文体で線香花火や蓄音機について物理学的な考察を巡らすかと思えば、突然自画像を描きはじめ、習作一枚一枚の出来栄えを大真面目に語る有り様はまるで「苦沙弥先生」のようで笑えます。

日常生活の出来事を物理学的視点でとらえ漱石調の文体で書く。
まさに科学と芸術が融合した、理知的で典雅な大正時代の科学エッセイです。



以上、3冊の本を紹介しました。
物理学者のエッセイばかりになったので今度は生物学者のエッセイを紹介したいです。

読んでくださってありがとうございました。

(おまけ)普段は週1の投稿ですが、10月27日から11月9日の「読書週間」は2週間連続投稿にチャレンジ中です。よかったらお付き合い下さい。(読書週間第13日目)




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