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空の発見 渋谷区立松濤美術館

「空の発見」を見に渋谷区立松濤美術館に行って参りました。今回、松濤美術館へは初訪問です。

あいにくの雨模様の中、渋谷駅から向かったのですが、東急本店が解体中でその空虚感の凄いこと。曇り空の下、廃墟感すら漂ってました。

雨も降っていたので寒々しさが増す…

東急本店跡地から少し歩いて到着。途中にはガレット屋さんがあるかと思えば、昔ながらの蕎麦屋さんもあったりで、静かで落ち着いたところですね。 

今回はフォーローしている皆様が上げてるnoteを見て興味が湧き訪問。特にメインビジュアルにもなっている香月泰男の《青の太陽》のエピソードが強烈でリアルで見たくなりました。

この絵の構図は、地中から、地面にあいた穴を通して空を見上げたもの。以前、香月が耳にした、深い穴底から空を見ると昼間でも星が見える、という話がもとになっています。

太平洋戦争の最中、匍匐訓練の時に偶然目にしたアリの姿をヒントに、香月はこの絵を描きました。意思に反して戦争の訓練に駆り出されている自分。それとは対照的に、人間に比べれば小さな存在であるはずの蟻は、地面に穿たれた巣穴を自由に出入りし、生きることを謳歌しているように見えました。

いっそのこと蟻になって、地中深くにもぐっていたい。そうすれば、少なくとも、醜い人間同士の争いを見ずにすむではないか・・・。訓練の最中に抱いたやるせない思いが、一見、抽象画のように見えるこの作品のモティーフになっています。

山口県立美術館HPより

香月泰男はシベリア抑留も経験しているということで、作品から伝わるやるせない思いが強烈に伝わります。

その《青の太陽》の隣に展示されていたのが、中村研一の《北九州上空野辺軍曹機の体当りB29二機を撃墜す》。長い…

野辺軍曹が米軍に一矢報いるべく、体当たりでB29、2機を撃墜したシーンを戦争記録画として描いた作品。

同じ「空」のテーマとしてではあるものの、戦争の悲劇を描いた作品を並べての展示に深い悲しみを感じずにはいられませんでした…。最近、年をとったせいか、戦争ものの作品にめっきり弱いです…。

そのほかにも、高橋由一や五姓田義松、萬鉄五郎に岸田劉生などの作品もあり見応え満点。

中でも目を引いたのが亀井竹二郎の《懐古東海道五十三驛眞景》石版画の原画となった絵が数点展示。

第1会場入口の絵が亀井竹二郎

 東海道の宿場に残る江戸の風景を油絵で記録。油彩画53点を完成させた後、23歳の若さで亡くなってます。
サイズは大きくないのですが、どの作品も光と影の描き方が素晴らしく、特に夜の闇に浮かぶ光が秀逸でした。

2年前に郡山市立美術館で展覧会が開催されていたようです。

ついつい郡山市立美術館発行の「描かれた東海道五十三次 亀井竹二郎 懐古東海道五十三驛眞景」も購入してしまいました…

お値段800円とは思えない内容

帰りには雨もほぼ止んでまして、美術館近くの「CASH ONLY」の貼り紙ある蕎麦屋さんで、おかめそばを頂き、渋谷の曇り空を見上げながら帰路につきました。雨模様の日に美術館もたまにはいいですね。


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