庶務は「できて当たり前」の仕事?
私はこれまでの職業人生、どちらかというと裏方の仕事をすることが多かったです。
特に庶務関係の仕事を5年程度(経理なども含めると10年程度)経験しています。
その経験を通じて感じたことを書きたいと思います。
庶務の仕事はできて当たり前?
皆がそうとは言いませんが、庶務の仕事は、それをやったことのないその他の部署(ここでは、庶務の部署以外の人という意味で「事業部門」といいます)の職員から「できて当たり前」と思われることが多い気がします。
もちろん面と向かってそういうことを言う職員は少ないのですが、庶務の仕事に何らかの滞りがあった際の事業部門からのクレームで「なんでこんなこともできないんだ」と顔に書いてあることが圧倒的に多い印象です。
何なら雑用係のように思われている節も(誰もがみんなそうだとは言いません)。
庶務部門は自ら事業を行いません。
組織の成果を上げたり、目立った活躍をするのは事業部門の職員です。
ですので、事業部門の人たちからすると自分たちが組織を引っ張っているという自負があるのはよくわかります。
そしてそれを否定する気もありません。
私自身も事業部門にいたころは、そういった心境になったこともありますので。
組織が行うサービスの利用者に直接届き、利用者に喜んでもらえるかどうかは「事業部門がどれだけアイデアを出し、効果的な働きをしたか」にかかっています。
そういう意味では事業部門がどれだけ力を発揮できるかが組織にとって一番大切なことです。
だからと言って、庶務の仕事は重要ではないのか。
できて当たり前の簡単な仕事を私たちはしているのか?
それはちょっと違うと思うのです。
事業部局が全力を出せるのも庶務の人間が日々頑張っているからこそ。
そういう意味では庶務部門も十分大事な仕事だと私は思っています。
庶務の仕事いろいろ
ちなみに庶務と言ってもいろいろな仕事があります。
一言で言えないから庶務(総務ともいう)なのです。
たとえば・・・
○職場の安全衛生管理
・職員数にもよりますが、「安全衛生委員会」の設置が法令上義務付けられていて、職場内で危険な箇所がないかチェックする必要があります。具体的には棚の上に重い物が乗っていないか、コードで転倒の危険がないかなどチェック(事業部門はこういうことに無頓着で、高いキャビネットの上に重いものが乗っていたりコードがグチャグチャだったりすることがけっこう多い!)
・そのほか、長時間労働している職員がいないかを確認して産業医の意見を聞いて職場改善を促すことも。
・コロナ禍では窓口に飛沫防止パネルを置いたり、消毒液を用意したりと言った対応も。
○施設の管理
・定期清掃や法定点検対応。
・テナントを間借りしていれば他の入居者との関係調整。「そちらの組織のお客さんがうちの窓口に頻繁に来るので対応に苦慮している。案内役を玄関に配置してくれ」と言われて宥めることもあり、けっこう気を遣う。
・「通風孔から異臭がするのでなんとかしてくれ」と事業部門から言われて対応。最終的にはビル管理会社に任せますが、庶務部門も経過を把握する必要がある。
・その他、赤さびがでる、ドアが壊れた、案内サインを変えてくれ・・・などなど。
○自動車の管理
・職場で管理している自動車の鍵の払い出しと返却対応。
たまに車内の電灯をつけっぱなしで返却する奴がいてバッテリー上がりの対応に苦慮することも。
・職員が自動車事故を起こした時の保険会社とのやり取り対応など。
○文書の管理
・部署間のメール便の移送管理。
・郵便物の発送対応。到達した郵便物の各部署への振り分け。
宛先が明確でない郵便物について、関係しそうな各部署に問い合わせ。どこの部署からも「うちに来たものではない」と言われて苦慮することも。
○電話設備の管理
・各部署に何台の電話機を置くかを検討(新設の部署の場合)。
・業務の繁閑によって適切な「電話機」の台数、適切な「回線」の本数を検討し必要に応じて数の変更(※)。
※「回線」本数というのは「同時に外線がつながる上限の数」のことです。
つまり外部からかかってくる電話に応答できる本数は電話交換機の機能とNTTとの契約契約で設定されていて、上限本数を超えるとたとえ「電話機」が空いていても通話できません(外部の人からすると電話しても「話中」になり、受ける側の電話機が鳴らない状態)。
繁忙期は外部から膨大な数の電話がかかって来るので、外線がより多くつながるよう「回線数」を増設する必要があります(回線数に応じてNTTの利用料がかかるので、増設するのは繁忙期のみ)。
ですが回線数が増えるということは受電数が増えるということ。
受電が「電話を取ることができる職員数」を上回ってしまうと電話機が鳴り続けるのに誰も出れない状態になってしまいます。
それでは困るので、事業部門と相談しながら適切な回線数を検討、設定しています。
○その他
・上層部の予定管理、支出管理、備品管理、コピー用紙、トナーの管理、掲示物管理(掲示すべき時期を過ぎたものがないか)
・たまに、どこの事業部門にも当てはまらない仕事を「庶務がやったらええやん」という輩もいる。
・・・などなどです。
ほんとに誰でもできる仕事??
これらの仕事は高い専門性を必要としないものが多いのは確かです。
つまり「そんなん誰でもできるだろう。できて当たり前」と思う人も多くいるわけです。
しかし、誰がやっても同じ結果になるわけではありません。
どれだけ先を読んで起こりうるトラブルを未然に防げるか、事業部署の仕事が円滑に回るように配慮できるかは庶務担当の腕次第なところはあります。
(それができるために、全事業部門の仕事をある程度把握しておく必要もあるわけです!)
それと、上記庶務仕事の羅列を見ていただくとわかるかと思うのですが、わりと雑多な仕事がたくさんあるんですよね。
広く浅く、いろいろなことをしなければいけないのが庶務の仕事なのです(※)。
※庶務仕事はシステム化、簡略化、集約化が可能な分野であることも確かなので、仕事自体を効率化する工夫も必要だとは思います。
私の職場でもデジタルの力で庶務仕事の効率化は進んでいますが、それで仕事がゼロになるわけではないです。
同時進行的に事業部門からいろいろなことを言われることもあり、マルチタスク能力とフットワークの軽さも結構求められます。
それが出来ない人は優先順位を間違えてトラブルを放置してしまうことも。
そういう意味で、誰でもできる仕事ではあるかもしれませんが、誰がやっても同じ結果にはなるわけではありません。
偉そうに言うつもりはありませんが、事業部門が全力を出せるのも縁の下で頑張っている庶務という奴らがいるからなんだぜ、とは言いたいです。
「皆の当たり前」を作っている大事な仕事ではあるということを心の片隅に置いて、「できて当たり前だろ」ではなく「やってくれてありがとう」という気持ちで接してもらえると、お互いに気持ちよく仕事ができるので嬉しいな、と思う次第です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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