大切な娘のために嫁入り道具を作った将軍の想い #徳川美術館コラボ ③
尾張徳川家に伝わる姫君の婚礼調度「初音の調度」をリングにしました。
こんにちは、ミュージアム部の部長、内村です。突然ですがみなさまにとって大切にしたい相手は誰でしょうか。ご両親、親戚、友人、パートナー、ペットなどさまざまだと思います。
今回のグッズでテーマにしたのは「大切な人への想い」。みなさまの大切な人を想い描きながら読んでいただければ幸いです。
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わずか2歳半!? 家光公の愛娘千代姫の嫁入り
物語の主役となるのは徳川三代将軍・家光公と娘の千代姫。家康のひ孫にあたる千代姫は、家光が「天下にも替難き御大切の姫君」という言葉を残すほど溺愛されて育ちました。
そんな千代姫ですが、徳川将軍家と尾張徳川家との結びつきを強めるため、生まれてすぐに縁談が決まったのだそうです。お相手は尾張徳川家初代義直の長男、徳川光友。
千代姫は2歳6ヵ月(数え年で3歳)で尾張徳川家に嫁ぐこととなりました。今だとなかなか考えられないような縁談ですが、いかにも武家社会といった感じですね。
最高の技・素材でつくられた調度品の数々。
千代姫の誕生後まもなく、早くも婚礼調度の準備がはじまりました。それが「初音の調度」と呼ばれる道具類一式です。
「初音の調度」は当時最高峰の蒔絵技術をもって作られ、金銀、赤珊瑚など豪華な素材がふんだんに使われていました。
「初音の調度」と呼ばれる理由
この調度品がなぜ「初音の調度」と呼ばれているかというと、『源氏物語』第二十三帖「初音」の帖の情景がデザインモチーフになっているからです。
「初音」の物語の中で光源氏は正月元旦の夕方に六条院の明石の姫君を訪ねます。部屋には鶯のつくり物や、髭籠、破子などの正月の祝物がたくさん置かれていましたが、これらは母・明石の君からの贈り物で、次のような歌が添えられていました。
この歌には大切なわが子(明石の姫君)になかなか会えない母(明石の君)の想いが込められています。
その歌意を込めた「初音の調度」には、齢2歳半という幼さで娘を嫁がせることになる家光の想いが重ねられているかのようです。
大切な人を想う気持ちを形にしたリング
将軍も私たちも、大切な人を想う気持ちに違いはないはず。そこで、尾張徳川家に伝わる調度品に細工された「初」「音」「鶯」の意匠をもとに、3つの雅なデザインのオープンリングをつくりました。
流れるように書かれた「初」「音」のデザイン
「初」「音」の文字は「初音の調度」十二手箱の側面、紐金具のそばにデザインされている美しい文字をモチーフとして使わせていただきました。
この2つのリングはひとつずつ着けても美しいですが、重ね着けすることでまた違った印象を楽しむことができます。
梅の木にとまった鶯をモチーフにしたリング
3つめのデザインは、梅の木にとまっている鶯をモチーフにデザインしました。同じく「初音の調度」十二手箱の側面に描かれています。
職人の技術だから実現した立体化
今回のリングは日本の造形師の手によって立体化しました。平面的なデザインから立体化するのには、技術以上に想像力が必要です。「初」「音」のデザインは筆の動きを頭の中でイメージして線の緩急を表現。「鶯」のデザインは、梅の枝にとまる鶯とのバランスを小さいスペースでまとめる必要がありましたが、熟練の造形師だからこそ実現することができました。
徳川美術館の学芸員の方にも何度もチェックいただき、イメージに一番近い造形を実現することができました。
「初音の調度」をイメージしたパッケージでお届け
徳川美術館、造形師さん、ミュージアム部がそれぞれの想いを寄せ合って完成した「初音の調度オープンリング」は初音の調度をイメージしたパッケージでお届けします。プレゼントなどにもどうぞ。
「初音の調度」にまつわる家光公と千代姫のお話とリングができるまでのお話はいかがでしたでしょうか。
その後、尾張徳川家に嫁いだ千代姫は、嫁入り後も将軍家の姫君としてとても大切にされました。結婚した光友公とも子宝に恵まれ、2男2女を授かり、千代姫は亡くなる62歳まで「姫君さま」と呼ばれて、将軍家の姫君として一生を送ったのだそうです。
徳川美術館には、千代姫の物語を知ることができる「初音の調度」をはじめ武家文化にまつわる展示品もたくさん! ぜひ美術館に行ってご覧になってください。
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