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こんなはずじゃない自分を生きていました。 ふとしたしぐさを白い目で見られる気がして、わた…
あの青い星に、ひとりのかなしい子がいます。 その子は帰りたいのです。母なるひとの腕のなか…
夏は昼寝にかぎるわね。 縁側に籐の枕ころがしてさ。 寝そべった床板はひんやり冷たくて。 そ…
生きながら死んでいるのか、死にながら生きているのか、わたしはときどき、わからなくなる。 …
どこへゆくにも、ああちゃんとすうちゃんはいっしょでした。 ふたりとも杖をつき、ささえあっ…
神さま ぼくは不器用です なんにもできず ひとりぽっちで 時にながされ もだえて…
俺の父は教師だった。 春樹という、いくらか頭の弱かったらしいかつての教え子から、鉛筆書きの年賀状が毎年届く。 父は三年前、急に旅立ってしまったが―― おととしもきたし、去年もきた。 先生 あけましておめでとう はみだすほど大きな字で書いてある。 あとは、 にわの木にみかんをさしたら、めじろがきて食べました とか、 青いながれ星においのりしました とか。 先生ごきげんよう それがいつも決まった結びで―― ことしもまたくる。俺は疑いもしなかった。 自分あてでもな
なんにもない空の下で、むーやんはすっかり地球が好きになりました。 どちらを向いても花が笑…
キアヌの松葉杖――マサヤ語るびっくりしてるヒマなんかないよ。 銃声が聞えたら、反射的に伏…
鏡に黒いビニールをはりました。 荒れはてた部屋をうつす鏡に、これはお前の心の中さと、冷た…
うれしいとき、ちいちゃんはほっぺをふくらますくせがあります。 はじめて会った時もそうでし…
小枝が運命をわけました。 戦場だった南の島へ、待ちわびた引揚船が日本から到着した朝のこと…
夜ふけの台所はふしぎの国。 ひるまはむっつり屋の野菜や果物が、ひそひそ、ざわざわ。 心を…
空の鳥は、蒔かず刈らず倉に収めず、見えない力を信じきって生きています。 なんの心配もいりません。 春には、咲きこぼれる花の蜜。 夏には、銀色にひかる朝露のしずく。 秋には、なにもかも忘れてしまってうっとり熟れた赤い柿。 めぐみは天から惜しみなくもたらされます。 けれど冬はこまりもの。 そこらの南天の実をついばんだら、もう食べるものがありません。 だからわたしは、ささやかな庭にみかんを置いて待ちました。 ひーよひーよ 金切声もかまびすしく、やってきたの