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ことばの作品集

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みどりにひかる本になることばの倉庫
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記事一覧

花たばになる

こんなはずじゃない自分を生きていました。 ふとしたしぐさを白い目で見られる気がして、わた…

星よ、きてください

あの青い星に、ひとりのかなしい子がいます。 その子は帰りたいのです。母なるひとの腕のなか…

ささぶね ~田舎オネエの語る夏~

夏は昼寝にかぎるわね。 縁側に籐の枕ころがしてさ。 寝そべった床板はひんやり冷たくて。 そ…

花のふたご

生きながら死んでいるのか、死にながら生きているのか、わたしはときどき、わからなくなる。 …

杖のふたり

どこへゆくにも、ああちゃんとすうちゃんはいっしょでした。 ふたりとも杖をつき、ささえあっ…

砂のてがみ

 神さま  ぼくは不器用です  なんにもできず  ひとりぽっちで  時にながされ  もだえて…

俺はまばゆい庭を見た

俺の父は教師だった。 春樹という、いくらか頭の弱かったらしいかつての教え子から、鉛筆書きの年賀状が毎年届く。 父は三年前、急に旅立ってしまったが―― おととしもきたし、去年もきた。 先生 あけましておめでとう はみだすほど大きな字で書いてある。 あとは、 にわの木にみかんをさしたら、めじろがきて食べました とか、 青いながれ星においのりしました とか。 先生ごきげんよう それがいつも決まった結びで―― ことしもまたくる。俺は疑いもしなかった。 自分あてでもな

むーやんとたんぽぽの綿毛

なんにもない空の下で、むーやんはすっかり地球が好きになりました。 どちらを向いても花が笑…

でこぼこ道に光さすオネエ三人の自分語り

キアヌの松葉杖――マサヤ語るびっくりしてるヒマなんかないよ。 銃声が聞えたら、反射的に伏…

神さまのかくれんぼ

ぼくの人生がかわろうとしている。 高ぶるこの気持をどういったらいい? つぼみに向かって棒を…

星をひろう

鏡に黒いビニールをはりました。 荒れはてた部屋をうつす鏡に、これはお前の心の中さと、冷た…

あなたはわたしの愛に乗る

うれしいとき、ちいちゃんはほっぺをふくらますくせがあります。 はじめて会った時もそうでし…

いま、あなたがここにいる

小枝が運命をわけました。 戦場だった南の島へ、待ちわびた引揚船が日本から到着した朝のこと…

みかんのみんな

夜ふけの台所はふしぎの国。 ひるまはむっつり屋の野菜や果物が、ひそひそ、ざわざわ。 心を澄ますと、みかんが語りかけてくれました。   ぼくらはね、ごらんのとおり、ふぞろいなの。 大きいのや小さいのや、あちこち傷ついて泣いたのや、いろいろなの。 食べてみて! 中身も、あまかったりすっぱかったり、そうかと思えば種ばかりでぱさぱさだったり、みーんなちがうんだから。 でもね、ぼくらは、ひとつの木にみのった仲間なの。 だんだん畑のみかんの木。 見おろす海はガラスのか