![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/74143175/rectangle_large_type_2_660ddcf38c234687a37d8a65871d6e03.jpeg?width=1200)
【読書感想文】フリッツ・ライバー「円環の呪い」
ファファード&グレイマウザーというファンタジーが好きです。
どのようなお話か?というと、冒険活劇と幻想怪奇のマリアージュといった感じの小説です。
今回は前回の記事(↓)の続きみたいな感じです。
https://note.com/f_itoga/n/n188c43b8881b
『死神と二剣士』に所収の「円環の呪い」(原著1970年)の話をします。あらためてお話するのもなんですが、「円環の呪い」も「痛みどめの代価」も、1970年の単行本にあわせての書き下ろしです。対になっていると、言ってもいいでしょう。
フリッツ・ライバー著 浅倉久志訳『死神と二剣士』2004、東京創元社
感想文というより中途半端なサブカル批評みたいになってしまってるかもしれません(書きたいのは感想文、あるいは推薦文なんですけどね)。素直に楽しんだよ〜と、いう人には合わない内容かもです。
ここからネタバレ
分量は40字*17行*19頁で、短編という単語が似合ってます(2004年の定訳版の場合)。
改めて読みかえして、三部構成になっていると気づきました。シールバに会って第一部が、ニンゴブルに会って第二部が終わる、いう形です。
あくまでも私の感想ですが、中身は重いなあと思います。特定の地名と、つらい出来事が結びつく、というのは当然ありえる話で「円環の呪い」におけるファファードとグレイマウザーの行動はまさにそれです。
ちょっと話題を変えますけど、茶目っ気のある台詞がでてくるところが好きです。たとえばニンゴブル。
(前略)おまえたちは、この世界から学べるかぎりのものを学んだ。いわば、ネーウォンの大部分を卒業したのだ。あとは、この文明世界の最高学府ランクマーで、大学院生として勉学に励むのみ」
卒業とか大学院生とか、あえてきつい言い方をすると、場違いな単語だなって思いますが、そこがいい。そんな言葉に引きづられたかのようなやりとりを、主人公たちがはじめるのも好きです。
「しかし、彼が―ほかの代名詞も含めたことにして―いったことにも一理はあるぞ、マウザー。
(中略)
「代名詞など糞くらえだ!
(中略)
「こんどは副詞と接続詞か!(後略)
ボケツッコミ、といったらいいすぎですかね。
シールバの四行詩
ページが戻りますが、シールバの言葉がきになりました。
「決して」も「永久に」も
人間に縁のないもの。
くりかえし、くりかえし、
おまえたちはもどるであろう。
素直に読めば、予言です。ファファードとグレイマウザーは、繰り返しランクマーに戻るという。
私は無理やり深読みしました。
「永久に」と「決して」は、人の約束にも人の命にも縁がない。でも、ネガティブ思考のループ(円環)や悪習の繰り返しは、人間に呪いのようにつきまとう。
と、いう読み方です。
四行に分けてあって、ルバイヤートみたいとも思いました。ライバーは、オマル・ハイヤームのルバイヤートを知っていたらしいですから、わざと四行にわけたのでしょうか?
別の作品(↓)では、直にルバイヤートに言及されてます。
フリッツ・ライバー著 若島正訳「アルバート・モアランドの夢」(The Acolyte第10号-1945年春号-初出、『幻想と怪奇 6 夢境彷徨 種村季弘と夢想の文書館』新紀元社、2021所収。初出の情報は同書に拠る)
なんとかして話を締めくくるとすると、重いテーマを抱えた作品だけれども、軽みもあるし、味のある固有名詞と雅やかな単語でもって作中の世界を案内してくれる作品と、いった感じだと思います。