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なんにもないを怖がらない
餅は、焼いて砂糖醤油をつけて食べるのが一番好きです。
うちの冷蔵庫には、ニンニクをみじん切りにして油漬けにしたものがストックされている。
市販のやつではなく、自分でニンニクを買ってきて皮をむいて、ブンブンチョッパーにかけてみじん切りにしたやつだ。
市販のものはニンニクに下味がつけてあって、わたしはこの味があんまり好きじゃないのだ。
それで、自分で使い勝手がいいように、月に一回くらいの頻度で、ニンニクをブンブンするのである。
丸のままのニンニクを処理するのは骨が折れる。
調理用の手袋をつけないと指先に臭いがつくし、手袋をした手だと感触が鈍くなって、小さなニンニク粒をポロポロ落っことす羽目になる。
たいていの場合、手袋をつけるのはあきらめて、素手で作業をする。
保存用の瓶を煮沸消毒しておいて、みじん切りにしたニンニクをどんどん詰めていく。
作業をしている間は音楽をかけるか、映画をつけっぱなしにしている。
無心で手を動かしつつ、時々曲に合わせて歌ったり、諳んじたセリフを言ったりする。
ニンニクを瓶に詰め終わったら、台所を片付ける。
まな板に漂白剤をかける時もあるが、疲れていてもう御免だと思ったらやらない。
全部終わったら、甘いお茶を淹れて、スマホを片手にソファーに寝転がる。
それっきり、もうなにもしない。
なぜならくたびれたからだ。
そして手がニンニク臭いからだ。
(スマホは拭けば臭いがつかないから気にしない。わたししか触らないし)
丸ごとニンニクの皮をむいて、みじん切りにして、煮沸消毒した瓶に詰めて、この先1か月分の自炊の一番めんどくさいところを片付けた。
めっちゃ偉いな、自分。と、思う。
そう思って、気分が良くなる。
夜になって”くたびれ”がとれたら、さっそく瓶詰にしたニンニクを使ってパスタでも作ろう。チャーハンでもいい。
半年くらい前、まだ睡眠障害だか自律神経失調症だか、とにかく体調がイマイチで、寝るのも起きるのも思い通りにいかず、1日を思ったように使えなくて苦しかった。
自分の現状が不安だった。
なにも生み出さない、
誰の役にも立てない、
ひとの金で生きているだけ、
そんなふうに思い込んでいた。
そんな時も、日常のささやかな作業に没頭することが、逆に頭をスッキリさせてくれた。
自分の輪郭をはっきりさせてくれた。
ありがちな言葉だが、等身大の自分だ。
なにも成さないし、誰の役にも立たないが、台所に立ってニンニクを刻むということは立派にできる自分だ。
今のところ、生きることはやめられないから、自分が生きるために必要なことがひとつでもできれば、それでいいだろう。
1日の全部を、人生のすべてを、なにかを生み出したり誰かの役に立ったりすることに、使うことなんてできないから。
こんなところが、わたしのできるアドバイスです。
問い合わせメッセージをくださったKさん、作業所に通っているだけでもめちゃくちゃすごいと思います。
どうか無理なさらないようにしてください。
では、また。