三つの石原吉郎像:細見和之、野村喜和夫、三宅勇介(その1)
2015年後半、相次いでふたつの石原吉郎論が出された。まず8月に細見和之の『石原吉郎――シベリア抑留詩人の生と詩』、そして11月には野村喜和夫の『証言と抒情――詩人石原吉郎と私たち』だ。いずれも300ページを超える大作である。そしてどちらも実際に現代詩を書き続けている実作者の手による評論である。そこからはおのずと共通した姿勢が浮かび上がる。細見も野村も、冷静で客観的な研究者ではあり得ないのだ。むしろふたりは詩人として己れの全存在を賭けるかのようにして石原吉郎を論じている。石原