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足りない何かをデパートで探した日

前回は、節約家の夫について書いてみた。


今回は、
そんな夫が大奮発したある日について。


私の30歳の誕生日が近付いていた、とある休日。
夫が「プレゼントを一緒に探しにいこう!」と言ってくれた。

不妊治療も行き詰まりの雰囲気が出てきた頃で、励まそうとしてくれている節もあったのかも。

私の中で欲しいものは明確には決まっていなかったけれど、何かと小物が増えるので、ちょっと大きめのバッグかなぁ、なんて考えていた。

一緒にデパートの中をぶらぶらと見ていく途中、LOEWEを見つけた夫。

ちなみに夫はブランドに、疎い。
かなり、疎い。


当初、CHANELのマークを知らなかったことには本当に驚いた。これは、シャネルのマークだよ、と教えてあげると、シャネルって何?って聞かれたんだっけ。

しばらくして、Cartierのマークを見せてこれは何のマーク?と聞くと、「シャネル!」と嬉しそうに答え、予想通りに引っ掛かってくれた。


、、と、そんな夫が、何故まぁまぁ難易度高そうなLOEWEを知っているかといえば、新婚旅行で訪れたスペインのブランドだったから。

夫は旅行が好きだ。
そして旅行の思い出が好きだ。
だからLOEWEのことも好きだ。
(数学の証明問題みたい?)


とにかく。
LOEWEでハンモックバッグを買って貰うことになった。
30万円、、30歳だから1年で1万円かぁ、
とよく分からない換算をしてみる。

節約家の夫にしたら、バッグ一つに30万円は大金に違いない。

それでも夫は満足そうだった。
私もモチロン嬉しかった。

「大人だもんね、質の良いものを長く使うんだ」
なんて建前で、その頃よく雑誌に取り上げられていた“ご褒美バッグ”が手に入った高揚感があった。

るんるん気分でお店を出て、ちょっとお茶でもして帰ろうか、というところだった。

ベビーカーを押す奥さんと、小さな女の子の手をひく旦那さんが楽しそうに話しながら、すれ違った。


何故だろう。
一気にLOEWEの紙袋が軽くなる。

そうだった、
私が本当に欲しかったのは、
赤ちゃん、だった。

私は、どうしても手の届かないものを前に、
少しだけ手の届かないブランド品を買って貰って、心にあてがってたんだ。

赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん。
意識し出すと、目につく、赤ちゃん。
可愛い赤ちゃん。


そして、せっかく買って貰ったのに、こんな気持ちになっていることに罪悪感が湧いていく。


それでも、紅茶とケーキでお茶をしながら、
夫が、「ロエベのバッグが買えて嬉しい?よかった?」と嬉しそうに確かめてくる姿を見て、やっぱり嬉しくなってきた。

私を“嬉しく”出来たら、嬉しい、っていう気持ちがすごく伝わってきたから。そういう夫を見て、嬉しい。


来年の誕生日は、
赤ちゃん、居るかな?


居なかったら、、
夫に奮発してもらおう。

二人でささやかな高揚感を味わって、
心にどんどんあてがっていこう。

帰りの車中、
助手席で目論んだこと。

サポート頂けましたら、自分へのご褒美スイーツを買いたいです!そして次なるパワーに変えて、もっと良い文章を書きます(^-^)/