全学生の約1割弱が来店。副学長がシェーカーを振るうノンアルバー!
6月9日、東京学芸大学(東京都小金井市)において、ノンアルコールカクテルを嗜みながら、セレンディピティな会話を楽しむイベント「Explayground Bar 『濫觴(らんしょう)』」が開催。
この『濫觴』がオープンするのは今回で3回目。
前回、前々回はほぼ告知をせず、開催当日に直接声を掛けられたり、こっそり呟いたSNSをチェックした方のみが来店できたシークレットなイベントでしたが、今回は開催前日に東京学芸大学公式Twitter(@TokyoGakugei)で告知をして頂きました。
増え続けるRT数、いいね数&表示回数。 運営陣に走る緊張
開催前日の夜、ふとTwitterをチェックすると告知Tweetの表示回数などが、過去のTweetと比べ、結構な数になっていることが発覚。
それを運営メンバーに共有したら、マスターから「ギャー(スタンプ)」の反応があったそうです(笑)
そして翌朝、その数は前日の3倍以上に増えていました(ギャー)
用意したメニューは全5種類
小雨が降りしきるなか、開店の10分前に最初の学生たちが現れました。本日最初に入った注文はその学生がオーダーした「シンデレラ」(参照:アサヒビール)
オレンジ、レモン、パイナップルの果汁が程よくミックスされたノンアルコールカクテルです。
この日、用意したメニューは全部で5種類。前述のシンデレラのほか、ノンアルコールビールがベースのシャンディガフ、レッドアイ、バージンメアリーと、ジンジャーエールとグレナデンシロップを使ったシャーリーテンプル、そして トーク&エクスプレイをベースとした?の“ マスターの気分 ”。
マスターとは、この場(Bar)の発案者であり、楽しそうにシェーカーを振るチーフバーテンダーであり、そして東京学芸大学副学長でもあるマッチャン(松田恵示先生)です。
全学生のうち約1割弱が来店。30分待ちの状態に
ここからは人が途切れることなく、続々と来店。部屋の外まで続いた行列は、数分で建物の外まで伸びていき、一時は100名以上が列をなしました。
最終的には材料が足りず泣く泣く帰って頂いた方も含め、約300名ほど来店しました。
来店者は学生だけではありませんでしたが、300名というと東京学芸大学の全学生数が約3,500名になりますので、その1割弱の人数となります。
マッチャンが丁寧にシェーカーを振って作るカクテルの人気が高く、一杯一杯を提供するのに時間がかかるため、最後尾の方にドリンクを提供できたのは、並び始めてから30分以上経ったあと。
途中で運営スタッフから待たずに飲めるカクテルの提供もアナウンスされましたが、ほとんどの学生は時間が掛かっても、マッチャンから直接サーブされたいらしく、そのまま並び続けていました。
多くの学生が集い、並び続けていた理由は?
Twitterのみで、しかも前日の夕方に告知しただけなのに、何故、東京学芸大学の全学生数の約1割弱、300名以上が集い、一杯のカクテルを目当てに最長で30分以上並び続けていたのでしょうか。
この理由について、マッチャンは「大学構内で『Bar』という新奇性、(学生からすると)大人の雰囲気、『副学長×シェーカー』という異質な組み合わせ、などの非日常的な部分が受けたのではないか」と推察します。
また来場者は一年生が全体の約7割を占めていたので、「『大学というまだ未知の世界』への関心がまだ高い時期だからかも」とも話していました。
では運営側の狙いは?
筆者は並んでいた学生からは「何故、(副学長が構内で)Barを開いたのですか?」という質問を複数受けました。
マッチャン(副学長)も「なんでこんなことやってるの?」という圧力を学生の皆さんから感じたからでしょうか。遊びの大事さを説きつつも、今日の自分はただ遊んでいるのではないと必死に説明をしようとしている様子が見受けられました(笑)
(注:マッチャンは「遊び学」の研究者)
そこでマッチャンに改めて運営側の狙いを伺いました。
「言い出しっぺが『一緒にやりたい人、この指とまれ!』で仲間を遊びに誘い、その遊びに夢中になるなかから得られる『学び』を大切にし、未来に向けての新しい学びを創造していく取り組みが、我々が試みているExplayground事業です。このノンアルバーは、もともと僕がやりたかったことの一つで、まずは始めてみました」
そして前々回、前回と回を重ね、来店した一人ひとりと会話を続けてきて徐々に見えてきたのが以下の4つ。
A:一緒にきた仲間との会話
B:バーテンダーと自分、仲間との会話
C:(カクテルを飲みながら「美味しい」という体験を共有中の)仲間との会話
D:たまたまバーに来た知らない人との会話
このA〜Dをメビウスの輪のようにつなげるのが、「ノンアルカクテル」になるそうです。
「カクテル注文後に作る時間があるので、実はその時間が会話を自然に発生させる仕組みになっています」
「実際、カクテル作る短時間に思っていることや悩んでいることを吐露してくれた学生さんもいました」
「このコミュニケーションは、(サーブ時に会話する時間がほぼない)お茶やコーヒーだと、なかなか生まれにくいと思います」
「また場を共有しているひと同士で、(味を想像しにくいため)カクテルをネタにした会話も生まれやすい」
「これが土俵になって、カクテル以外の話にも広がり、詰まったり飽きてきたりするとまたカクテルの話に戻れる、というのがいいんだと思います」とマッチャン。
そして今後は?
「次回以降も多くの人に来てもらえるよう、まずは味の追求ですね(笑)」
「持続可能性は、『喋りの場』という文化的な本質が必要条件にはなるけど、『美味しい』という具体的な体験が十分条件として大きい気がしてます!」
と、バーテンダーに目覚めてしまった感が強いマッチャンですが、『遊び学』の研究者としても分析を進めており、企業などとの共同研究も視野に入れているとのこと。
現在、Z世代を中心に「sober(しらふ)」と「curious(好奇心)」を組み合わせた造語、「ソバーキュリアス(♯sober)」という言葉が広がりつつあるそうです。アルコールを飲むのを我慢するのではなく、ポジティブな気持ちであえて飲まないライフスタイルのことを指すとのこと。
ソバーキュリアス(♯sober)という新たなトレンド、教員養成大学である「東京学芸大学」、そして「企業」の組み合わせは、思いがけない化学反応を起こすかもしれません。
(了)
【過去の記事はこちら】
第一回:大学キャンパスでノンアルバー限定オープン
第二回:副学長がキャンパスに開く『ノンアルバー』での出会い