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『民主主義とは何か』読んだよ

宇野重規『民主主義とは何か』読みました。


何を隠そう江草は民主主義者っ子なのです。
できるだけ種々の問題について公平中立に考えようとしているつもりですが、節々に民主主義ラバーな志向が正直あるなあとは自分でも気づいております。
ただ、そのように民主主義っ子と自認しておきながら「お前は民主主義を理解してるのか」と問われるとかなり怪しいものがあります。
つまり、直観的に民主主義的な価値観を選好しがちではあるけれど、恥ずかしながら民主主義の理論的な学びは足りてないというわけです。

そういう我が身の浅学さをはかなんでた時に見かけたのが本書『民主主義とは何か』でした。これぞまさに"for me"な本ということで購入したわけです。


で、読み終えましたが、とても良い本でした。

著者は政治哲学者の宇野重規氏。本書はタイトル通り、民主主義の成立の歴史を初心者向けに丁寧に解説されたものです。
書き手の方からすると初心者向けの入門書というのは専門家向けの専門書よりもかえって書くのが難しいと聞きます。本書も「民主主義」という壮大かつ難しいテーマに挑むものなわけで、絶対大変な執筆だったと思うのですが、民主主義のエッセンスの学びをうまくまとめてらっしゃると思います。
ところどころ多少駆け足なところも感じないでもありませんでしたが、初心者でも読みやすい新書ボリュームに収めようとされてることを考えれば必要十分な内容であったと思います。

おかげで民主主義の概要について非常に勉強になりました。

たとえば、そもそも日本語では「民主主義」と呼ばれてますが、本来は"democracy"であって"-ism主義"ではなく"-cracy支配体制"のはず、という定番の邦訳問題の話はやはり興味深いですし、「民主主義vs共和政」や「民主主義vs自由主義」などのけっこう混同しがちな概念のニュアンスの違いについての解説があったのもとても学びになりました。
なにより、時間軸に沿った民主主義の発展史を概括できたことは、まさに『歴史思考』で、とても良い経験になりました。

著者ご自身は民主主義の「参加と責任」のスピリットを重視する立場のようです。本書を通じて、江草もそのスピリットが好きで民主主義ラバーなのだなと実感しました。
ただ、著者も示唆する通り、この「参加と責任」という肝心の民主主義スピリットがうまく成立してないというのが現代民主主義社会の大きな課題になってきています。

民主主義が好きな人も、民主主義が嫌いな人も、ともかくも私たちはこの民主主義社会で生活しているわけですから、この大きな社会課題をどう扱うか考えるためにも、みな一度「民主主義とは何か」をおさらいするのは悪い話ではないはずです。

誰もが無関係ではいられない重要なテーマを扱った本書は、全体に読みやすくうまくまとまっており、万人にオススメです。
江草自身、民主主義スピリットを見失いそうになった時に、今後何度も紐解くことになりそうです。

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