自然の力
息子の不登校をなんとかしたい、当時はそう思っていろいろなことをしました。
人の力、科学の力、医学の力・・・それでもダメなら、ぜひ自然に頼ってみてはどうでしょう。
学校に行かない平日の朝、海外のサーフィン選手権の映像が流れていました。それを見た息子が「やってみたい。」とぼそっとつぶやきました。
「よしやろう!」すぐにインターネットで検索し、その週末にサーフィンスクールに申し込みました。
せっかくだから一緒に始めることにしました。後々感じたことですが、一緒にやって本当によかった。だって、大人より息子の方が上達早いしうまい。
「親に勝てるもの」を手にした息子はとてもうれしそうでした。
自然の力には敵いません。
力任せでどうにかしようとしてもできない。思い通りにならないこともたくさんある日常と似ています。
例えば、サーフィンでいえば、2度として全く同じ波はこないし、同じ場所にもとどまることもできません。ガンガン波が来るときもあれば、ずーっと待っている時間もあります。次にきた良い波には無理やり体を預けようとします。無論、波に乗れるわけがありません。無理に力をいれようとも、自然には「勝てない」ということ。この「勝てない」という感覚もまたとても不思議でした。
実際、波の上に立てるまでに息子は何度も波に立ち向かっていました。
最初に、親に「勝てるもの」と表現しましたが、一方で「勝つ、勝てない」だけを考えていると、勝ち負けばかりこだわり、また気持ちが落ち着きません。そして、波に乗っている他の人と自分を比べたりします。いいなぁあの人。どうせ俺は、ってなります。
それから、サーフィン中は先に乗った人が乗る(1波1人ともいいます。)という暗黙の了解があります。「これはチャンスだ!」と思っても、先に乗っている人がいれば見送ります。皆が乗らないような波も、自分の目の前に来るときには「チャンス」になっていることがあるのです。それはただのラッキーかもしれませんが、力を入れずにそっと自然に身を任せていくと、後ろからグッと波が自分の背中を押してくれます。その瞬間に姿勢を変えれば、自分の視界が変わるのです。
ぶわっと目の前の視界が開ける。そして気持ちが無というか「フラットになる」そんな瞬間、日頃でもありませんか?
自分が「波」にのるときもあれば、周囲が波に乗っている姿を見守ったりすることもある。自分を後ろから後押ししてもらえるときもある。なんだか生きることと似ています。色々な状況を目の前にして、もしそれでも楽しめる気持ちを失わずにいられたとしたら波に乗れない時も乗れない時も自分を受け入れられたような気がします。
人でも科学でもない、自然の力に身をまかせてみるときがあってもいいのかもしれません。
P.S.
海の楽しさを息子に教えてくれたサーフィンスクールさんには本当に感謝しています。
ありがとうございました。