国際気候変動交渉とIEA
今年設立50周年を迎える国際エネルギー機関/IEA。2月上旬に閣僚理事会し、その流れで先日、COP28や今後の気候変動国際交渉を巡るハイレベルな対話・会議を開催、COP28議長や米国ケリー長官をはじめそうそうたるメンバーが参加、ファイナンスや野心的なNDCの重要性について議論。会議概要も含め、気候変動を巡るIEAの最近の動きを整理した。
記事要約
COP28にて、再エネ、省エネ、原子力発電などに関して国際的な合意(UAEコンセンサス)がなされたことが記憶に新しい。
IEAが最近開催したCOP28に関するIEAハイレベル対話によると、今年のフォーカスは特に途上国らを対象にしたファイナンスと、UNFCCC締約国による野心的なNDCの作りこみ。
その豊富なデータ分析もさながら、IEAの強みは、世界の重要国の大臣級の要人をパリに呼び出し、エネルギー・転換の話をさせるられるEngagement力。
1. COPとは?
国連組織UNFCCCの加盟国が毎年開催する締約国会議COP。その28回目会議が去年の暮れに開催され、再エネ普及(2030年までに3倍)や省エネ促進(2030年までに2倍)、原子力発電推進などに関する国際的な取り決めがなされたこと(UAEコンセンサス)は記憶に新しい。
※COPの歴史やCOP28の各種成果については下記にて整理済み
2. IEAの最近の動き
2.1 IEA閣僚会合
最近の動きの中で大きなものは、IEAが毎年開催している閣僚理事会/IEA Ministerial。IEA加盟国やパートナー国から大臣級の出席者を招き、数日間にわたりエネルギー問題について議論、合意したものをコミュニケとして発出するというハイレベル・ルーティーン。
今年の閣僚理事会は2月13-14日にかけてパリにて開催、アイルランド環境大臣とフランス産業・エネルギー副大臣/ Minister Delegateが共同議長を務め、他の数か国大臣が副議長を務めた形。ちなみに日本からは岩田経済産業副大臣が参加。今年はIEA設立50周年、設立当初からエネルギーを巡る国際情勢が大きく変化、IEAは今後も引き続きパリ合意達成を目指し邁進していくとのコミット(閣僚理事会の様子はオンラインで視聴可能)。
2024年閣僚理事会コミュニケを読むと、脱炭素&エネルギー転換のための資金の重要性が強調されているように読める。46にもわたるコミュニケの宣言の内、4番目に来るのが資金や投資の話。IEAの試算によれば2030年迄に毎年4.5 trillion USDの投資がなされないと、パリ合意達成は難しく、そのためには新興経済や開発途上経済におけるクリーンエネルギー投資誘因が必須とのこと。さらにコミュニケはエネルギー安全保障、ガス&石油・セキュリティーから重要鉱物資源、電力、各種クリーンテックに関する各論ステートメントに入っていく。
興味深いのはコミュニケ33項以降のIEA Familyコンセプトだ。ラトビアの加盟によりIEA加盟国は32か国に迄拡大。さらに非加盟国とも密な関係を構築しIEAパートナーと呼び、総合してIEAファミリーと呼んでいる。IEA Familyは世界のエネルギー需要の80%を占める。インド政府からの要請に応じ、インドのIEA加入の議論を開始したとのこと。これらからIEAの重要性がわかる。
2.2 IEAによるCO28会議
2024年2月20日「Beyond COP28: Time to Unite, Act, and Deliver on the UAE Consensus」と題するハイレベル会議を開催。参加者はそうそうたる顔ぶれ。CO28議長のSultan Ahmed Al Jaber、米国Special Presidential Envoy for ClimateのJohn Kerryほか、COP21議長の元フランス首相Laurent Fabiusなど大臣級参加者が多数。のちにコミュニケ発行。
COP28における各種成果を確認しながら、このPolitical Momentumを次のアクションにつなげることが大事、そのために各国はNDCをしっかり野心的なものに作りこむこと、そして何よりも大事なのはファイナンス(公的資金&プライベートファイナンス)であるとの内容。結論としては、NDC含め、各国政府による政策づくりが大事、IEAとしてはその裏付けとなる数字やデータ分析で各国の手助けをしていくとのこと。
3. コメント
COP28の成果を少し持ち上げすぎな気がしたが、UAEのCOP28議長が参加したので、当然と言えば当然。いずれにせよ、UAEコンセンサスという政治合意はなされたが、それだけでは不十分、その着実な実施が重要とのメッセージは至極妥当。
世界の重要国の大臣級の要人をパリに呼び出し、こういったフォーマットの会議に参加してもった上で、エネルギー・転換の話をさせること自体は非常に重要。その準備に各加盟国の官僚たちは巻き込まれ、色々と準備をする。その過程で、脱炭素に向き合うことになるからだ。こういったEngagement活動をIEAは非常に重視しており、そして実際たくさんの要人をパリに参集する力があるIEAはやはり他の国際機関に比べても一歩先を行っている。
さらにIEAの強みはその豊富なデータに基づく分析。世界各国からしっかりデータを収集し分析、見やすい絵で発信し続ける。私のお気に入りは特に以下のClean Energy Progress Tracker。各種エネルギーの転換度合いが一発でわかる。
そしてインドのIEA加入に向けた交渉が開始されたことも好材料。IEAの役割はますます大きくなる。
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