音楽家の旅行記 伊勢・奈良編 Part7 -昼食〜出発-
昼食
さて、昼食はアワビを食べたいと思っていたのだ。三重で海鮮といったらやはり伊勢海老、アワビ、サザエといった素潜り漁の獲物だろう。伊勢海老はこの時期禁漁期間だったのであまり期待していなかったのだがメニューを見ると各食事に1500円で伊勢海老が追加できると書いてあったので思わず注文。旅の気分でついつい財布の紐が緩んでしまう。メインの方はアワビのせの海宝飯だ。所謂海鮮丼に近いが少し違うのでのちに説明する。お茶と三種の出汁が飲み放題なので待っている間に伊勢海老出汁をすする。やや磯臭さが強いがエビ特有の濃い出汁を味わっていると運ばれてきた。
見るからに贅沢だなあと思う一品である。こちらは黄身醤油を溶いて最初に丼にかけていただいて、適当な頃合に先程の出汁をかけて海鮮茶漬けにして食べるというものだそうだ。
具はいか、まぐろ、いくらを中心にたっぷり盛られていたように記憶している。そして言わずもがなアワビだ。こちらは蒸しアワビで生のコリコリした食感のものとは全く別のかまぼこに近い弾力の食感だ。これらの様々な魚介が黄身醤油によって一体感が与えられまとまった一つの味に変化するが食感のコントラストははっきり残っていて味はまとまりつつも口の中の感覚がコリップルンップチッと変化のあるリズムで楽しい。
伊勢海老
そして別にやってきた焼き伊勢海老。やはりリーズナブルだけあって小ぶりだが正真正銘の伊勢海老だ。まずは尾の方のその身をほじくり出す。焼かれて身がかなり締まっている。口に入れるとその締まった身からエビ独特の香ばしさと芳醇な旨味が溢れ磯の香りと海老の殻が焼けた香りが鼻からふっと抜ける。次はエビ味噌をほじくり味わう。焼かれて水分が抜けさらにねっとりと濃縮された味噌の旨味が脳天に突き刺さる。あまり海鮮で芳醇という感覚は味わうことが少ないがこの海老味噌は芳醇と形容して差し支えない。やはり伊勢海老は美味しい。が欲を言えばもっと大きなものを食べたくなってしまう。それはまた次の機会にするとして、海産物をじっくり堪能する。
出汁茶漬け
そして丼の中半分ほどになったところで出汁を取りに行く。出汁は合わせ出汁、伊勢海老出汁、野菜出汁とあった。既に三種味見済だが、出汁単体だと野菜出汁がコンソメ出汁のようで一番美味しく感じたのだが海鮮丼ということで、しかし伊勢海老出汁だと臭みで味が喧嘩してしまいそうな気がしたので合わせ出汁をチョイスしよそった茶碗にかける。
この出汁茶漬けが絶品そのものだった。魚介の旨味、卵の旨味全てが出汁に溶け込み、さらにその出汁の旨味が複合的に交わり、まるで温泉に入っているかのような高揚感とリラックス感が湧き上がり思わずあーと声が出た。優しいのだがそれ以上に濃厚な旨味の温泉にすっかり満悦になり、時間さえ止まったような感覚になる。そんなで残りの海鮮丼もお茶漬けにしてゆっくり満足感を噛み締めながら平らげる。最後に冷えたほうじ茶で口の中を洗い流しさっぱりさせ、店を後にした。
出発
さて、お昼を済ませた後は次は奈良へ向かう。参道からバスに乗り五十鈴川駅から近鉄に乗り奈良へ向かう。まずは路線乗り換えのために桜井駅を目指す。元々の予定は奈良に直行するつもりだったのだが車内でスマホを弄っているうちに寄り道をする気分になり色々と情報を漁り出す。元々談山神社の十三重塔は興味があったのだが桜井駅から1時間にバス1本だけの経路であり、今回の旅に組み込むのにはかなり大変だった。他に何か案はないかと調べると桜井駅から一駅の三輪駅に日本最古の神社の一つと言われる大神神社があるということで、寄り道してそちらに向かうことにする。
次回に続く。