おいしいをたのしめる奇跡
1月某日、某番組で紹介されていた調味料「サテトム」を買った。
一時流行った食べるラー油の、ベトナム風のものらしい。
さっそくお昼に、昨日の残りのたこ焼きにのせて食べてみることにした。
昨日は私の誕生日祝いということで、たこ焼きパーティーをしてもらった。
パーティーと言っても、母と二人だけだけど。
子供の頃は、兄の誕生日によく家でたこパをした。
それをふと思い出して、うちのたこ焼きが食べたくなって、もういい歳だけど母にリクエストしてみた。
話を戻して、サテトム。
卵かけご飯やお好み焼きに合うらしい。
開封して、蓋についた赤い油を少し舐めてみたら、辛い。
思わずせき込んでしまうほど。
おっかなびっくりちょこっとずつたこ焼きにのせて、マヨネーズをかけて、食べてみたら、合う。
辛さはたこ焼きの生地によってマイルドになり、サテトム特有のエビの旨みとレモングラスの爽やかな香りが効いておいしい。
私の昼食は、母の作り置きか、残りものか、電子レンジで温めるだけで済むものや、お湯を注ぐだけで済むものが多い。
時々、包丁や火を使って味つけまでできたら、自分を褒めてあげたくなる。
これでも以前よりは自分で食事を用意するようになった。
大学時代に摂食障害から双極性障害を発症し、実家に戻ってきてからは、うつで寝てばかりで、料理なんてとてもできなかった。
母が朝早く仕事に行く前に昼食を作っておいてくれ、仕事から帰ってきてから夕食を作ってくれた。
うちのごはんはやさしい味がした。
過食嘔吐をすることは極端に減り、いつしかしなくなった。
2月某日、昨日の夕飯の水炊きの残りで、お昼におじやを作った。
包丁は使わないけど、火を使って味つけもするから、私からすると立派な料理。
玉子をふわふわに仕上げるコツは心得ている。
おじやはおいしくできあがった。
和風だしの味に口が慣れてきたところで、サテトムを少し足してみた。
一気にベトナム風になる。
ご飯と玉子のやさしさに、辛さと旨みとベトナムの香りが加わって、最後までおいしくたのしくいただけた。
過食していた時の食べものは、油っこくて味が濃くて、際限ない食欲を満たせそうなもの、かつ吐きやすいものが良かった。
それで満たされることなんて更々なく、吐きそびれたものだけで生きていた時期もあった。
その頃から思うと、エスニックな調味料「サテトム」をたのしめる今が、とても尊い。
おいしいをたのしめる、そんな当たり前のような奇跡を取り戻せて、私は幸せだなぁと思う。
何よりも母のおかげで、私は摂食障害を過去にできた。