独りよがりの騎士になりたかったわけじゃない_

独りよがりの騎士になりたかったわけじゃない。

パパは私を”物わかりのいい子”だと言う。

ママは私を”手のかからない子”だと言う。

違うの。私はそんな子じゃない。

パパにもママにも笑っていてほしいだけ。

大好きなんだもの、私のことで悩ませたくない。困らせたくない。

大好きなんだもの、本当の気持ちを出して、怒られたくもない。

(本当は感じたままに泣きたい。喚きたい。甘えたい。)

私はワガママも言わない。我慢だってする。

そうすれば、パパもママも笑っていてくれる。

それで、それだけでよかったんだ。


あなたは私を”強い人”だと言う。

あなたは私を”一人でも大丈夫でしょ”と言う。

違うの。私はそんな女じゃない。

あなたに笑っていてほしいだけ。

大好きなんだもの、私のことで悩ませたくない。困らせたくない。

大好きなんだもの、本当の気持ちを出して、嫌われたくない。

(本当は感じたままに甘えたい。寄り添いたい。傍にいたい。)

私はワガママも言わない。我慢だってする。

そうすれば、あなたは笑っていてくれる。

それで、それだけでよかったんだ。


気付けば私は誤解されてばかりになっていた。

甘え方なんて忘れた。本音は喉の奥に詰まったまま。

大切な人の笑顔を守りたい。

そう思う心は、いつしか鈍色の鎧に形を変えていた。

パパのため、ママのため、あなたのため。

そう思って私を押し殺していたけれど、今となっては独りよがり。

私は鎧を身に付けてしまったけれど、誰も守れていない。

何より、私自身を守れてはいないんだ。

役に立たない鎧をまとったまま、今日も私は独りよがり。