孤独のめかぶ
ふう、ようやく隠岐島に着いた。
と、商談までだいぶ時間もあるし、ちょっとここらで焼肉ランチでもするか。
メニューをチラリ。
ん?! めかぶ? めかぶって、あのめかぶだよな。
なんで焼肉屋にコイツが?
隠岐産、軽くあぶってお召し上がりください。
………。
ふむ、おもしろそうだ。試してみよう。
おっ来た来た。大きいぞ。こんなの見たことない。
リボンのような太さで、軽やかにヒラヒラと優雅に波打って、うーん何かを髣髴とさせる。
そうだ、こういう水着って、あるよなぁ。シンデレラバストをゴージャスに見せてくれるあの代物。個人的には、潔い水着を着てくれたほうが……。
話が逸れてしまった。気持ち悪かったな。
これは食いごたえがあるに違いない。
「あぶってお召し上がりください」とあるが、まずは素材の味を楽しむために、生でいただくことにしよう。
………!!!?????
ウーム、単刀直入に言ってまずい。臭い。
噛めば噛むほど、凝縮された磯臭さが強烈に口いっぱいに広がる。どんどん磯臭さが加速する。この加速は、まるで頭文字Dの中里毅のR32GT-Rだ!
しかも粘り気が手伝って振り払えない。クッソタレー手ごわい!
スッポンみたいに食いつきやがって。
もう、これ以上食べたくない。
たが、ここで残すのは大人として恥ずかしい。
お店の提案に従って、少しあぶってみることにしよう。
そういえば、納豆のネバネバは加熱で消えるよな。納豆炒飯なんかパラパラだし。
では、ちょちょいと。
よし、だいぶかさも減って焼き海苔の色になった。
これをご飯セットのスープに入れてと。
いない…磯臭さが消えた!!
うーん、うまい!
徐々にスープを吸って、後から程よいやわらかさもやって来る。
ヤァ!ヤァ!ヤァ! 完璧だ。