【読書感想文】思考の整理学
東大・京大で1番読まれた本ともいわれる思考の整理学を読みました.
短いけれど骨太で東大生は20歳前後でこんな小難しい本を読んでいるのか~と感心しました.私は10年ほど遅れての読書です…
グライダー人間にはなるな
本書では現代社会の勉強についていくつかの問題点を提示しています.わかりやすい例では暗記つめこみ型の受験勉強です.
わたしも大嫌いだった暗記科目とつめこみ勉強ですが,著者はこう言ったつめこみしかしていない学生をグライダー人間と呼んでいます.グライダーというのは翼はあって高いところから飛ぶと長距離滑空することはできるが動力がないため,自ら飛び上がることができない飛行機です.
まさに今の学校はグライダー人間養成所だというわけです.
有名大学に進学できるような(俗にいう高学歴な)人たちは素晴らしいグライダー人間とです.彼らは難しいペーパーテストを即座に解き,さまざまな知識を頭の中にストックしています.大学入学までは順風満帆な人生を送ることができるかもしれません.
そして,大学4年生の卒業論文を書くときに皆気づくというのです.自分たちが滑空することしかできないということに…
それじゃあどうすればいいというのでしょうか?
考えを発酵させる
そう簡単に素晴らしい考えを思いつく人はいません.まずは自分の頭の中で考えてゆっくりじっくり発酵させる必要があるといいます.
必ずしも1日で答えを出す必要もありません.何も出てこないときは一晩寝かせるのも手です.何日か熟成させなければならないときもあるかもしれません.
著者は気長に待つ必要があるといいます.確かに私も学生時代,煮詰まった研究の考察に対して答えが出たとき,それまでの数年間に蓄積された知識がバチバチと音を立てて頭の中でつながりました.これは一種の発酵だったのかもしれませんね.
他にもいくつか挙げられていますが,ここでは思考の編集(エディターシップ)について紹介しましょう.
エディターシップとは何でしょうか?
これは持っている知識を上手に組み合わせることで,新たな価値を出すというものです.自分自身から全く新しいものが生まれてこなくとも,組み合わせを変えるだけでいいんです.
これは美術館や博物館,ネットにおけるキュレーションなんかにも通ずるところがあるでしょう.これを自分の頭の中でやると,面白いものが生まれるかもしれません.
コツとしては,ありきたりなものを組み合わせるのではなく,一見混ざらないような知識を組み合わせることで奇想天外な考えに至るといいます.
忘れることが大事
学校教育ではしっかりと暗記し忘れないことが重要だと学びます.
しかし,それではいいものは生まれないといいます.
常に忘れて新しい知識を取り入れ自分の中で醸成した考えを外に出すこと.
それができなければ暗記など無意味なんです.ましてや,コンピューターが生まれた現代において100%記憶しておくことなど無価値です.
調べるためのキーワードさえ知っていれば,1秒以内に答えが返ってきますからね.この本自体は約40年前に書かれていますが,いまだに暗記が大事とされている学校教育はどうなんでしょうか…
頭の中にあふれる知識を正しく整理することが考えを深める第一歩です.整理するということは,ときに捨てることを意味します.忘れてしまってもいいのです.学校教育に反旗を翻すような表現ですが,忘れることが思考を整理するといっていいのかもしれません.
とにかく書いてみる
アウトプットは重要です.
いざ文章にしようとすると書けない…ということはままあります.そこではじめて自分の思考が整理されていないことに気が付きます.思考というのは要素同士が非常に複雑に絡み合っており,ときにその関係性が本人にも理解できていないということが良くあります.
それに対して文章は線上の表現技法になります.絡まりあった思考のままでは論理を正確に紡ぐことはできません.文章にすることで,この絡まった思考を解きほぐし,整理することができるようなるというのです.
これは,私個人とても納得感のある方法だと思います.現に私がnoteで記事を書く理由の一つでもあります.
最後に
そんなに時間をかけずに読めるので時間があるときにサクッとみてみるのがいいのかなと思います.
学生にしては面白くない内容かもしれませんが,このような事実を理解して学生生活を送るともっと価値のある人生が遅れたのかなと思ってしまいますね.私は堕落した生活を送っていました…
今回紹介した内容はごくごく一部の抜粋にすぎません.印象に残ったところを記事にしてみましたが,おそらく十人十色の意見があるはずなので,興味がある方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか.