【エンドトキシンの恐怖】細菌は死んでも毒を残す
ここ数年、人類はウイルスにだいぶ困っていますが、同様に病気や感染症といったところで注意しなければならないのは細菌です。
世の中には細菌を殺しても毒素が残るという何とも厄介なケースが存在します。これを内毒素とかエンドトキシンと呼びます。
今回はそんな細菌が死んだ後に残す毒、エンドトキシンについて紹介したいと思います。
エンドトキシンとは
グラム陰性細菌という種類の細菌の表面についたリポ多糖(LSP)によて引き起こされる内毒素です。
いきなり、なんのことかさっぱりですよね。私も調べ始めたときは意味不明だなと感じました。なので、もう少しわかりやすく書いてみたいと思います。
簡単に言ってしまうと、エンドトキシンとは毒素のある細菌の死骸といった感じです。細菌を殺したと思ってもその死骸自体が毒をもつので、誤ってその死骸を体内に取り込んでしまうと、体に異常が出てしまうわけです。
ちなみに、最初に出てきたグラム陰性細菌とは細菌の分類の1つであり、対になるのはグラム陽性細菌というものです。これらの違いは細菌の表面である細胞壁の構造の違いだそうです。
グラム陰性細菌には有名な大腸菌やサルモネラ菌などが該当します。
そして、グラム陰性細菌の表面にはリポ多糖と呼ばれる毛のようなものがうっすらくっついており、こいつが毒素の原因物質なんです。(細菌が動くための長い鞭毛とは異なります。)
Wikipediaより引用
上の図における一番上に生えている毛のようなものがリポ多糖と呼ばれるものです。
リポ多糖(LPS)とその構造
グラム陰性細菌が持つリポ多糖はこんな感じです。
Wikipediaより引用
これを見るだけでなんだか複雑な構造って感じがしますよね。
そして、毒素になるのはこの全体ではなくて一番下のリピドAという部分だそうです。このリピドAはリポ多糖全体を細菌につなぎ留めておく役割を果たしています。
これだけでも十分複雑ですね。生物って奥が深い~
ちなみにリピド(lipid)というのは英語で単に脂質という意味ですね。
エンドトキシンショック
注意しなければならないのは、この毒性のある細菌の死骸(エンドトキシン)が体内、特に血液中に入り込むことです。
血液中に毒素であるエンドトキシンが入り込むと、マクロファージと呼ばれる細胞が危険信号を発します。その結果、様々な反応が生じた後、血管拡張による低血圧や血管内血液凝固による多臓器不全が生じるそうです。
このエンドトキシンショックですが、敗血症性ショックといって最悪の事態では死に至る可能性もあります。
そのため、血管内に入れる必要がある医療機器などではこのエンドトキシンがついていないことをしっかりと試験して確かめる必要があります。万が一、エンドトキシンが残ったまま使用されたら、患者の病気を治すはずが殺してしまうことになりますからね。
最後に
今回はあまり聞きなれないエンドトキシンについて紹介してみました。私自身専門ではないので勉強しながらという形になりましたが、想像以上に細菌の構造は複雑だなと感じました。
この複雑性を一つ一つ解きほぐしていけばいずれエンドトキシンを防ぐ画期的な方法が見つかるかもしれませんね。
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